はじまりとは 追記
執務室で報告を済ませて待機所に向かう途中で上忍仲間に呼び止められた。次に控えている任務の話に耳を傾けていれば、遠くから聞こえたのはイルカの声だった。
道の真ん中を走るな、とイルカの通る声がここまではっきりと聞こえる。アカデミーに近い場所で良くある風景だからなのか、誰も、話している上忍仲間も大して気にも止めていない様子で。カカシもまた特に反応は示さないが、イルカがいる方へ視線を向けた。
大きな声なのはイルカが生徒を引率しているからで。この暑い中演習場で授業だったんだろう。子供もそうだが、イルカもまたしっかりと汗をかいているのが遠目からでも見て取れた。
日焼けした肌に、子供達と一緒に朗らかに笑えばそのイルカの口から白い歯がこぼれ、カカシは僅かに目を細めた。
二日前、イルカはカカシの家に泊まった。ただ単に友人として誘ったわけでもなく、宣言通りイルカを持ち帰りした、に近い。
自分が望んでいた通りにイルカもまた望んでいてくれたのだから、話は早い。
経験がないからか、イルカはキスでさえ受け入れようと必死で。そこから舌を絡ませれば、直ぐに身体から力が抜けた。自分もまた夢中だったけど、趣味悪くそのイルカの顔を見れば、一生懸命に舌を差し出し、黒い目は潤み、熱に浮かされたような、見たことのないとろっとした顔に、身体の奥が熱くなった。思わず眉根が寄る。
(なんて顔してんの)
なんて思うも自分も余裕がなくなったのはそこからで。気がつけば、誰かと身体を繋げようともそこまでかいたことのなかった汗を、背中や額にかいていた。
梅雨が明け気温が上がった中、こうして外にいても暑いとは思うが汗をかくとこもない。任務中でも息が上がる事はあってもそこはたぶん同じで。だから、自分がイルカにどれだけ陶酔しているかが分かる。
子供達に浮かべる爽やかな笑顔からはこの前のような顔は微塵も感じさせない。独占欲に気持ちが満たされた時、ふと目に入った見覚えのある顔に、カカシは顔を向けた。
任務の内容を話している上忍へ、ちょっと待ってて、と声をかけると、そのままカカシはイルカへ足を向ける。
子供達に囲まれたイルカに声をかけたのは、自分ではなく、イルカの友人だった。戦忍である中忍のくノ一で、近々上忍に昇進すると耳にしたが、それはどうでも良かった。
自分が今まで目にしてきたように、イルカへ声をかけ、夕飯を一緒に食べようと誘うそのくノ一の肩に、カカシは手を置いた。
額に汗をかき太陽の匂いがしそうなイルカが少しだけ目を丸くして、振り返ったくノ一もカカシの存在に少しだけ驚いた顔を見せる。カカシはくノ一ににこりと微笑んだ。
「ごめんね。先生は先約済みなの」
優しく言えば、一瞬何を言われたのかと瞬きするも、そうなんですか、と少しだけ戸惑ったような顔を見せるから、カカシは、うん、と答える。
イルカの為に。そう思ってこの前は手を引いたが。もうこのくノ一に自分の為にだと思わせるつもりもさらさらないし、譲るつもりもない。
そう、イルカに関しては今まで自分にはないと思っていた独占欲も抑えるつもりもない。
だから。
「恋人の特権」
カカシはそうはっきりと口にすると、涼しい目元を僅かに緩ませた。
<終>
道の真ん中を走るな、とイルカの通る声がここまではっきりと聞こえる。アカデミーに近い場所で良くある風景だからなのか、誰も、話している上忍仲間も大して気にも止めていない様子で。カカシもまた特に反応は示さないが、イルカがいる方へ視線を向けた。
大きな声なのはイルカが生徒を引率しているからで。この暑い中演習場で授業だったんだろう。子供もそうだが、イルカもまたしっかりと汗をかいているのが遠目からでも見て取れた。
日焼けした肌に、子供達と一緒に朗らかに笑えばそのイルカの口から白い歯がこぼれ、カカシは僅かに目を細めた。
二日前、イルカはカカシの家に泊まった。ただ単に友人として誘ったわけでもなく、宣言通りイルカを持ち帰りした、に近い。
自分が望んでいた通りにイルカもまた望んでいてくれたのだから、話は早い。
経験がないからか、イルカはキスでさえ受け入れようと必死で。そこから舌を絡ませれば、直ぐに身体から力が抜けた。自分もまた夢中だったけど、趣味悪くそのイルカの顔を見れば、一生懸命に舌を差し出し、黒い目は潤み、熱に浮かされたような、見たことのないとろっとした顔に、身体の奥が熱くなった。思わず眉根が寄る。
(なんて顔してんの)
なんて思うも自分も余裕がなくなったのはそこからで。気がつけば、誰かと身体を繋げようともそこまでかいたことのなかった汗を、背中や額にかいていた。
梅雨が明け気温が上がった中、こうして外にいても暑いとは思うが汗をかくとこもない。任務中でも息が上がる事はあってもそこはたぶん同じで。だから、自分がイルカにどれだけ陶酔しているかが分かる。
子供達に浮かべる爽やかな笑顔からはこの前のような顔は微塵も感じさせない。独占欲に気持ちが満たされた時、ふと目に入った見覚えのある顔に、カカシは顔を向けた。
任務の内容を話している上忍へ、ちょっと待ってて、と声をかけると、そのままカカシはイルカへ足を向ける。
子供達に囲まれたイルカに声をかけたのは、自分ではなく、イルカの友人だった。戦忍である中忍のくノ一で、近々上忍に昇進すると耳にしたが、それはどうでも良かった。
自分が今まで目にしてきたように、イルカへ声をかけ、夕飯を一緒に食べようと誘うそのくノ一の肩に、カカシは手を置いた。
額に汗をかき太陽の匂いがしそうなイルカが少しだけ目を丸くして、振り返ったくノ一もカカシの存在に少しだけ驚いた顔を見せる。カカシはくノ一ににこりと微笑んだ。
「ごめんね。先生は先約済みなの」
優しく言えば、一瞬何を言われたのかと瞬きするも、そうなんですか、と少しだけ戸惑ったような顔を見せるから、カカシは、うん、と答える。
イルカの為に。そう思ってこの前は手を引いたが。もうこのくノ一に自分の為にだと思わせるつもりもさらさらないし、譲るつもりもない。
そう、イルカに関しては今まで自分にはないと思っていた独占欲も抑えるつもりもない。
だから。
「恋人の特権」
カカシはそうはっきりと口にすると、涼しい目元を僅かに緩ませた。
<終>
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