帰り道

アカデミーで来年卒業試験を控えている生徒達の一ヶ月間の強制合宿。
もちろん、担任する教師も強制参加で過酷な特訓の日々でイルカも疲れ切っていた。
人一倍張り切りすぎたのかもしれない。

それでも子供達が成長するのは嬉しい事で、イルカは遅い足を引きずりながらもアカデミーに辿り着いた。
子度達は開放感に満たされた顔で家路へと姿を消していく。

「お疲れさまでした」

帰っていく同僚にも声を掛けて、アカデミーの入り口で腰掛けて、荷物を置いた。
冬も近いせいか、日も暮れて月が昇りはじめている。

「イルカセーンセ」

背中から自分を呼ぶ声がする。
顔を見るまでもない久しぶりの恋人の声に振り向こうとしたのに、のそりと背中に重たい塊が覆い被さり、グググと腰から前に降り曲がった。頭まで覆い被さられて首を曲げる事も出来ない。
苦しそうにイルカは呻いた。

「・・・重いから離れてください」

「イルカセンセーv」

人の話を聞いてないのか、尚も体重を掛けてくる。座ってるとはいえ、くの字になって苦しい。

「重いって言ってるだろうがっ」

力を振り絞って片腕を振り上げる。ドシンと音がして、背中から重たい塊が離れた。
自由になった首をくるりと後ろに向けると、案の定カカシがしりもちをついて地面に転がっている。

「なにすんですかぁ」

情けない姿でイルカを恨めしそうに見た。

「重いんです。疲れてるんですから、やめてください」

ただでさえこの合宿で体があちこち痛いのに、冗談じゃない。迎えに来てくれたんだろうが、もっと別のやり方があるだろう。
一ヶ月ぶりに会ったというのに、イルカは疲れて不機嫌になっていた。
痛そうに腰を押さえて、立ち上がる。荷物を背負って、暗くなりかけたアカデミーへ足を進めた。カカシも起きあがって、後ろからついてくる。

「何でアカデミーに行くんですか?もう家に帰りましょうよ」

「まだやる事があるんです。カカシ先生は先に帰っててもいいですから」

すたすた歩くイルカに追いついて、カカシは隣まで来るとヒョイとイルカの荷物を手に取った。軽くなった肩に驚いてカカシを見る。取り返そうと伸ばした腕にカカシの腕が絡みついた。

「イルカセンセーの邪魔しないですから、一緒にいます」

ニコを笑ったその顔は、強制じみた笑顔。何が何でも一緒にいるだろう。イルカは引きつった顔でアカデミーに入った。

閑散とした部屋で荷物を片づける。合宿で使った荷物だが、明日にでも下級生が使う忍具が揃っている。自主練する子供達の為にその日のうちに戻して置きたかった。

「え~、そんなの明日でも良かったんじゃないんですか~?」

じろじろ眺めながら後ろでカカシが言う。邪魔は確かにしてないが、手伝う事もしない。イルカの周りでちょろちょろとしてはイルカに声を掛ける。

「あ~、もう。大人しく待ってててください」

片づける手は止めずにカカシにうなる。

「は~い」

とぼけた返事と同時に背中から胸にスルリと腕がまわされる。しゃがみ込んでいるイルカに後ろでぴたりとくっついて離れない。

「ぎゃっ!カカシ先生、離れてください!」

思わず両腕で抵抗するが、今度はビクともしない。覆うように抱き込まれて、しゃがんでいるせいで足もそれ以上動けない。身動きがとれなくなっていた。

「イヤですよ。イルカ先生、一ヶ月ぶりの再会なのに冷たいんだもん」

子供のようにすねた事を言いながら、胸にまわっていた指がベストのジッパーを下ろしていく。

「なっ、何するんですか!?」

振り返るとカカシは謎めいた微笑みを浮かべた。

「楽しいことです」

やばい。
ギクリと身を一瞬固めてカカシの顔を横目で窺った。その言葉には楽しい事なんて事があるはずがない。カカシは楽しげにフンフンと鼻歌交じりにベストを脱がしにかかっている。

「は・・・離してください!」

暴れて、しゃがみ込んでいたお尻が床についた。自由になった足をばたつかせて抵抗する。

「ほらほら、イルカ先生暴れないでよ」

「いやだ!!」

「イルカセンセー、・・・・これ以上暴れると手加減しませんよ?」

優しく言われた言葉の中には、イルカにしか分からない真実味が感じられてピタと動きを止めた。

「だっだって・・・・」

「そんな可愛い顔しても駄目です」

泣きそうな顔になったイルカの頬にキスをする。

「うう・・・・・」

赤くなっている耳朶を甘く噛むと、イルカは息を呑む様にその刺激に耐えた。カカシは首筋にきつく吸って赤いキスを残す。恥ずかしそうに伏せた顔。首筋に残る赤い痕が目の前に露わになる。カカシは思わず喉を鳴らした。

「一ヶ月もおあずけだったんだから、やっぱあんま手加減できないですけど、いいですよね?」

結局イルカを落胆させる言葉を耳元で低く囁くと、ベストが床に落とされて、アンダーウエアーの上からイルカの突起を撫でしごく。

「・・・・ん・・・ふっ」

感じたくないイルカとは裏腹に体は敏感にも体が跳ねる。後ろからまさぐられて、グイとアンダーウエアーをあげられた。露わになった肌が赤く染まっている。裸になることなんてなんともないはずなのに、カカシに見られていると思うと逃げ出してしまいたい衝動に駆られた。ぐいと正面に向かされて、突起を口に含まれる。舌で転がすように吸われて、抱かれてる背中を仰け反った。

「あっ・・・・・くぅ・・・・んっ」

鼻にかかった甲高い声が部屋に響いてイルカの理性を引き戻す。その度に唇を噛んで声を必死に押さえた。

「カカシせんせ・・・いや・・・・・」

イルカの吐息が熱くなる。
一ヶ月。一ヶ月も離れていれば、イルカも多少なりともカカシが恋しかった。こうやってきつく抱きしめられて、こうされる事も心の奥では望んでいたのかもしれない。そう思うと、心臓が締め付けられたように苦しくなり、拒んでいるはずなのにカカシが愛しくなった。カカシに体を触られる度に、体が小さく跳ねる。


「あ-------、」

不意にカカシが苦しそうに呟いた。

「・・・・もうアンタ可愛すぎ。入れたいんですけど、いいですか?」

「・・・え?」

聞き返したら両足を持たれて、床に押し倒された。

「うわっ!」

そのまま勢いよくズボンを下着ごと脱がされて、イルカは押し倒された衝撃で目を回した。カカシは自分のモノを出すと、グイとイルカの最奥へ押し付ける。すぐに入るわけがなく、先を無理やり入れようと何回か試みて、カカシは顔をしかめた。

「そんなすぐは無理です!」

「ん-----」

口に手を当ててカカシは何かを考える。仰向けにされたイルカは、カカシを頼りなさ気に見上げた。

「じゃ、イルカ先生1回先にイッてくださいね」

手甲を外すと、まだ柔らかいイルカ自身をしごき上げる。わき腹が引きつるような感覚にイルカは思わず声を上げた。

「あっ・・・ちょっ、嫌です!」

「だって濡らさないと入らないでしょ。それもと俺のをイルカ先生にかけてもいいんですけど」

「かっ・・!?」

その言葉にイルカの顔は真っ赤になった。何でそんな言葉を露骨に言うんだ。聞いてるこっちが恥ずかしい。そんなイルカの顔を見て、カカシは口の端を上げて笑みを浮かべた。
濡れてきたイルカ自身の先を指の腹で押されて、ぐちゅと小さな音を立てると手で包まれる。上下に軽くしごかれて、カカシは口に含んだ。

「んっん、ん・・・」

潤んだ目を閉じると涙がこぼれてこめかみをつたう。激しく攻め立てられて、先に歯を立てられて体をこわばらせた。

「だっ・・・め・・・・」

カカシの髪を掴んで抵抗するのもむなしく、カカシの口の中でイルカは達した。

「はぁ、はっ・・・はぁ」

肩で荒く息をしながらゆっくりを目を開ける。カカシはゆっくりと口から自分の指に白い液体を出して、満足そうに微笑んだ。そしてそのまま、イルカの最奥へと指を滑らせる。
ズブとカカシの長い指が入り、ゆっくりと掻き回す。背中を弓なりに仰け反ってイルカは跳ねた。
背筋から頭へとゾクッとする快感が突き抜ける。

「あっ・・・あ・・んっ・・・」

「すごい・・・イルカ先生今日感じやすくなってる・・・」

イルカの表情をうっとりと見つめながらカカシは呟いた。

「そんな・・・ちが・・・」

涙を目尻からこぼしながら首をいやいやと左右に振った。
その光る瞳がたまらなく可愛い。指を抜くと、誘われるままにカカシはイルカの中へと挿入した。

「ああっ・・・ふ・・・ぅ」

「ほら・・・すごい。これだけでもう濡れてるよ」

イルカの腰を持って突き上げる。グチュと淫らな音を立ててカカシを更に深くくわえ込んだ。
こんな場所で自分はカカシと行為をしている。視界に入る忍具置き場は妙に現実らしく、イルカは興奮した。

「すご・・・気持ちい・・・・」

いつもより締め付けられる感覚に、カカシは眉をひそめて苦しそうに呟いた。焦点が合わなくなった視界の中でイルカは何も考えられなくなっていた。カカシが作り出す動きに合わせて自分の腰を動かす。

「カカシさ・・・、も・・・だ・・めっ」

カカシの背中に爪を立ててしがみつく。

「俺も、イキそ・・・」

ぎりぎりまで引き抜いて、ズンと奥まで突き入れられる。その瞬間イルカはカカシとの腹の間で果てた。きつく締め付けられて、カカシもイルカの中で欲望を吐き出す。
二人の荒い息づかいだけが、忍具室で響いていた。







「さってと、イルカ先生。そろそろ帰りません?」

あの後さらに2回も挑まれて、カカシの腕にくるまれてぐったりと横になっていた。ひかない汗を拭うようにイルカは額に手を当てる。小さい窓から見えるのは真っ暗な闇と、瞬く星。すっかり夜になった事を知り、イルカは小さくため息をついた。

「・・・アンタって人はっ、どうして家まで待てないんですか?」

ようやく呼吸が整い、カカシを睨み付けた。カカシはそんな顔も愛おしそうに見つめて、真っ黒い髪を撫で上げる。

「だって、浮気もしないで一ヶ月いい子にしてたんですよ?イルカ先生の顔見たら我慢の限界がぷっつり切れちゃって」

「浮気なんて、しないのが当たり前です」

腰に伸びた手を払いのけると、ゆっくりとイルカは起きあがった。情事の名残を残すかのように虚ろ気な顔が艶っぽい。

「すんごいいい眺め。鼻血出そ・・・うっ」

言い終わるのと同時にひじ鉄をくらってカカシは呻いた。

「帰ります」

呻いてるカカシを余所に服を着る。外に出たら思ったより空気が冷たい。火照った体には気持ちがよかった。
いつのまにか追いついたカカシが隣に来て、イルカの手を取る。驚いてカカシの手をふりほどこうとした。

「ちょっ、止めてください。人が来ます!」

「久しぶりじゃないですか、アカデミーからこうやって一緒に帰るの」

そう言われてふと考えた。確かに最近はお互いの仕事のせいで、一緒に帰ることは無かった。ちょっと前まではこうやって、一緒に帰ってたのに。だけど、手をつないで外を歩く事は一度もなかった。

手甲をしてたけど、カカシの手はしっかりとイルカの手を握っている。妙に恥ずかしい気持ちがいっぱいだった。どこにでも見る恋人のように歩いている。それがすごく嬉しかった。
いつもこうやって手をつなげたらいいのに。カカシの横顔を眺めてぼんやりと思った。月の光だけが、二人を映し出している。

「ねえ、イルカ先生。ここでキスしたらもっとカップルらしいですよ?」

その言葉に、真っ赤になってカカシを見る。言い返そうと思ったのに、握られた手に力を入れられて、そのまま向かい合うように引っ張られた。

「あ・・・・・」

口布を下ろしてカカシの顔がゆっくりと近づいた。少し上を向いて唇を重ねる。
ただ、唇を重ねただけなのに頭の奥がジンとした。再び気持ちがくすぶってきたのか、腰に腕をまわされてイルカの体が跳ねる。

情けない顔をしてカカシは笑った。

「あ~、またシタくなっちゃいました」

「だっ駄目です!駄目です!!」

イルカの声が近所中に響き渡った。


次の日、イルカが重い腰をさすりながらアカデミーに向かったのは言うまでもない。


<終>
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