川の字

北風が吹き、時折木製の窓枠がかたかたと鳴った。窓から見える空は雲一つない晴天で、外に干してある洗濯物も直ぐに乾くだろう。
暖かい日差しが入り込むイルカの部屋で、カカシは押し倒したイルカの胸の突起を吸った。
鼻にかかった甘い声がイルカから漏れ、もどかしさからか、イルカの身体が捻るようにもぞもぞと動く。
尖った舌でぬるぬると固くなった乳首を刺激した。そこから強く吸うとカカシは指で押しつぶした。
「あっ・・・・・・っ」
さっきよりも大きい声。
昼間である事を再認識するかのように、イルカは自分の声を押し殺すために手の甲を口に当てた。
カカシは構わず胸への愛撫を続けた。ぬるりと舌で赤く尖った乳首をねぶる。
「ん、ん・・・・・・」
くぐもった甘い声がこぼれた。
駄目ですと笑いながらも微かに示した抵抗に、イルカの身体を押さえていたが、その抵抗も今はない。カカシはその手を離し、イルカのズボンへと手を伸ばした。そこは既に緩く勃ち上がっている。
恥ずかしさにイルカが息を呑んだのが耳に入ったが、それでも拒もうと手を伸ばす事はなかった。

今日はお互いに休みだった。
昼前にイルカの家に着き、一緒にイルカの作った昼ご飯を食べ、洗い物をあらかた済ませた後二人でテレビを観ていた。
土曜の天気のいい昼間。外からは誰かが犬の散歩をしているのか、犬の急かすような鳴き声と人が一緒に走る音。その後には子供たちの笑い声も風に乗って聞こえてきた。
日の当たる暖かい居間で、外で風で揺れる自分の洗濯物へ目を向けながら、
「のどかですね。ねえカカシさん」
イルカが穏やかな声で問いかける。緩んだ黒い目が同意を求めるようにカカシへ向けられ、そうだね、とカカシも微笑みながら返す。
隣に座っていたカカシはイルカへ身を寄せた。
「イルカ先生からはさっき食べた野菜炒めの匂いがする」
聞いてイルカはくすぐったそうに笑った。
「美味しそうって事ですか?」
「うん、そう」
イルカの冗談にカカシも乗って笑みを浮かべ、ーー視線がふっと交わった。
ほんの一瞬の間。
そこからカカシはゆっくりと顔を近づけ、イルカの唇に自分の唇を重ねた。
イルカもまたその流れに任せるように、恥じらいながらも目を閉じ受け入れる。
カカシは首の後ろに掌を当て、もう一度ちゅっと唇を唇で触れた。それだけで終わっても良かったのだが。柔らかいイルカの唇の感触にそれだけじゃ足らなくなり、カカシはイルカの耳たぶを弄ぐり、またキスを繰り返す。
「カカシさん・・・・・・?」
頬を赤く染め戸惑いながら、窺うように見つめられる。カカシはイルカを抱き寄せぎゅうと抱きしめた。イルカ温もりと共に、早く脈打つ鼓動を感じる。
それだけでじわじわと下腹部がイルカを求める。男なんて単純だ。
「・・・・・・カカシさん」
名前を呼ぶイルカに答えずに首筋へキスをする。イルカの匂いを吸い込み、そこからまた唇を塞ぎ今度は濃厚な口づけをした。舌を絡める。
イルカは拒まない。でもまだ戸惑っているのが分かった。
その行為に相応しくないとも言える時間。
外では相変わらず遠くで子供が遊ぶ聞こえるし、頭上まで上っている太陽が部屋を照らしている。
それでも、どうしてもカカシは止めたくなかった。
水っぽい音と共に、部屋が甘い空気がに変わっていく。
イルカの口内を堪能しゆっくり唇を離す。少し潤んだ目がカカシを見つめた。
「駄目?」
強請るように聞くと、イルカは眉を寄せて視線を下にずらした。顔は火照り赤い。
「すぐ終わるから」
嫌とも、どうしようかとも言わせたくなくて次の言葉を口にしたカカシは、またイルカの首もとへキスを落とす。
返事がない事が承諾と受け取ると、カカシはイルカの薄い皮膚を強く吸い、赤い痕を残した。

挿入する指を二本から三本に増やす。湿った指で内壁を押し広げると、イルカがそれを協力するように脚をゆったりと広げ、カカシはその内股を軽く吸い、舐めた。
自分の息が荒くなっている。
この明るさにそぐわない行為だと、自分でも認識し、それに興奮を覚えているからだ。
内壁を押し広げるように指を抜き差しした。緩い刺激にイルカの腰がまた揺れる。カカシによって慣らされたそこは、後ろだけの刺激で感じるようになっていた。
そろそろいいかな。
もどかしいのはカカシも一緒だ。
カカシはずるりと指を抜いた。
熱に浮かされた表情を浮かべ、強請るような目を向けるイルカを見つめながら、自分のズボンをくつろげようと手に掛けた時。
玄関のドアがドンドンドンと、強く叩かれた。
イルカの身体がビクリと揺れる。まさかのタイミングにイルカは勿論カカシも驚き、動きを止め首だけを玄関に向ける。
誰だと思う暇もなく。
「イルカ先生ー!」
ナルトの大きな声が聞こえた。
嘘でしょ。
疑う余地もないその元気な声を耳にしてイルカへ顔を戻すと、赤い顔をしながら、イルカもまた困惑の表情を浮かべてカカシを見ていた。
そこからむくりと起きあがり、カカシはぎょっとした。
「ちょ、先生。出るの?」
小声で、しかし強めに聞くと、
「出て話を聞くだけですから」
そう即答されカカシは不満そうに眉を寄せた。
せっかくここまで持ち込めたってのに。それにイルカだって辛いはずだ。
目を向けると、その通り。イルカは固く先が濡れそぼった自身を下着に無理矢理押し込めている。そしてズボンを履き始めた。
その姿を諦めきれない気持ちで見つめた。
この状況で、しかも元教え子がいきなり訪ねてきたからって、恋人との甘い時間を絶つ理由にはならない。
居留守を使ったってバチは当たらないはずだ。
しかし、イルカの決意は固かった。
「イルカ先生、いないのかよ?」
そんな事をしている間にまたナルトの声がかかる。
「ああ、いるいる。ちょっと待ってろ」
イルカは上着を着ながら玄関の向こうにいるナルトに声をかけた。慌てているのもあるが、さっきまでの行為で身体も顔もほのかに赤い。
それを名残惜しそうに目で追うしかなかった。
イルカは服を着終えると背を向け急いで玄関へ向かう。
もどかしい自分の股間に手をやり、カカシは気を静めるようにゆっくり息を吐き出した。
イルカが玄関を開ける。ナルトの元気な笑顔と声が飛び込んでくるのを、カカシは胡座を掻きながら見つめ、やれやれ、とゆっくり立ち上がった。
商店街のくじ引きが当たったと、どうでもいい内容を目を輝かせてイルカに話している。
正直、苛立ちを覚えた。
自分とナルト。イルカが天秤にかけられない事は分かっている。
もし、例えば。どちらかが同時に命の危険に迫られたら。イルカは確実にナルトを助けに行く事を選ぶだろう。
恋人という立場を手に入れたはずなのに、空虚な気持ちに包まれる。
だってそれは確実に覆らない、変わることのない事実だ。
自分でくだらない事を考えたくせに、寂しいくなったカカシは同時に独占欲に押しつぶされそうになる。
馬鹿らしい。
カカシは小さく笑いを零した。
それとも、あのまま無理矢理押さえつけて最後までしてしまえば良かったのか。

和室の開けたままの襖に体重を半分預けるようにもたれかけながら、ぼんやり二人を見つめる。そのカカシにナルトが気が付いた。
「あれ、カカシ先生もいるじゃん」
驚きながらもとぼけた声に、カカシは苦笑いを浮かべた。
「何で?何でカカシ先生がいるんだってばよ」
「いいでしょ別に。で、ナルト。何の用なの?」
少し不機嫌であろうとナルトは気が付かない。
「えーだからさ、さっき商店街でくじ引きしてさ、」
口にしながら、ナルトが身体を斜めに動かす。ぴょこんと顔を出した。
「何だよ先生。布団敷きっぱなしじゃん。だらしねーの」
カカシが立っている奥の和室を玄関から覗きながら言うナルトの言葉に、イルカが分かりやすいくらいに反応した。
「あ、あれは昼寝を、」
「昼寝?カカシ先生と昼寝してたって事?」
「え?いや、そうじゃなくって、」
しどろもどろになる。あっさりと墓穴を掘るイルカに、カカシはどうフォローすべきなのかとため息を吐き出し頭を掻いた。
「まあそんな事はどうでもいいじゃない」
そう、サスケやサクラではなくナルトだから、誤魔化しがきくのが救いだ。
適当に流そうとすると、少し面白くなさそうな顔をしたナルトが、閃いたと、口を開ける。
「じゃあ俺も一緒に昼寝するってば!」
嬉しそうに一言そう言うと、部屋に入ってきた。
布団の上に寝ころぶナルトに、
「イルカ先生こっちこっち!」
誘いの言葉を投げられ、イルカは戸惑いながら合わせるようにナルトの横に身体を横たえた。
その光景を目にして。
何にも考えていないし知りもしないのは重々承知だが。正直面白くないのには変わらない。
さっきまでは自分とイルカがそこでいちゃいちゃしていたのに。
それに、図々しくイルカの隣に居座られる事も、気に入らない。が、まあ流れに任せるしかないのは分かる。
仕方がないと、カカシもナルトの横にごろりと身体を横たえた。
「俺カカシ先生の横では寝たくないってば」
真ん中に挟まれたナルトが素直に嫌そうな顔をする。カカシは眉を寄せた。
「あのねえ。俺の隣で寝たい女がどれだけいるか知ってる?」
言い返して、視線を感じふと顔を向けると、その先にイルカがいた。
鋭い目つきをカカシに向けている。
急にどうしたのかと首を傾げると、
「どれだけいるのか、後で教えてくださいね」
にこやかにそう言った。
笑顔だが目が笑っていない。
言葉の綾ですよ、と目で返してもそれを全く受け付けない。なにをそんなに怒る事があるんだと不思議思いながらーー。
(・・・・・・嫉妬?)
あまり自分に見せないイルカの感情。
それが焼きもちだと気が付き、カカシは目を丸くしていた。そこから思わず笑みが零れる。
さっきまでナルトに嫉妬していた事さえ忘れそうになった。
あんな一言で、見せられたイルカの反応はあまりにも予想していなくて。
うっかりイルカを抱き締めたくなった。
何も分かっていないナルトは、嬉しそうに丸く青い目を天井に向けながらくじ引きの話の続きを始めた。
飽きずにまだ話し続けるナルトと、カカシの表情に訝しむ眼差しを向けるイルカと。
川の字になりながら、カカシは幸せそうに目を細めた。

<終>


素敵なイラストを描いてくれるえみるさんヾ(´▽`*;)ゝ" 少しでもそのお返しがしたくて書きました。
カカイル+ナルトの話が思い浮かんだ時、これはえみるさんにあげたい!とカキカキしたのですが。冒頭からえっちぃ感じですみません。。
最初書いた時はもっとどろどろしてました。。これは差し上げられない!とそこから軌道修正をして、なんとか。。
でもえっちぃのには変わらないですね^^;
それか三人で話すシーンをもっと増やせばよかったかな。色々未熟ですみませんー><
それでも喜んでくれて良かったです!
これからも素敵なカカイル楽しみにしています!
with love!

なないろ
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