起点
最初見た時は随分と印象が違うと思った。
あのナルトを助けた教員である中忍。古巣の暗部にさえその噂が広がっていて、身を挺して守ったその事実に、内心感心さえした。
そこまで興味を持ったわけでもなかったが、自分の部下になったナルトがことあるごとに口にするのは火影になる事か、ほとんどが自分の担任だった先生の話題で。その内容も子供じみた事ばかりだから、関心さえ薄れていたのは事実だった。
そんな時、たまたま任務帰りに、疲れたと言って怠そうに歩いていたナルトが突然駆け出した。その先にいたのが、ナルトが大きな声で名前を呼んだ通り、中忍のうみのイルカだった。
前述の通り、どんな忍なのか多少の興味を持っていたが想像すらしていなかったものの、目の前で自分に頭を下げる男は、鼻に横一線の傷がある意外は特に特徴がない。言わば普通の男。そして次に感じたのは、ナルトから聞いていた通り、随分と子供っぽいということ。
アカデミーの教員で、子供目線だからなのかは分からないが、たった四つ下には見えなかった。それは、同じ忍でも畑が違うからなのか、身を置いていた世界が違うからか。言い意味でも悪い意味でも擦れてない。
分かったのは、自分とは違う、と言う事。
そんな事を思っているとは知らないイルカは、目の前で、自分を憧れの忍だと、嬉しそうに、尊敬を含めた眼差しで照れたように笑う。そんなイルカを温度差のある目でカカシはじっと見つめた。
声をかけられたのは単独任務を終えて夕飯をどうしようかと思っていた時で。最初、声をかけられたものの、職場でも何でもない、商店街や飲み屋街へ抜ける途中の道で、何で声をかけられたのた分からず、カカシは振り返った。
今お帰りですか、と言われ、その通りだったから、そうだよ、と短く答える。答えながらも、そう聞かれた事が不思議で、七班の任務だろうが単独任務だろうが、そんな事は関係ないだろう、とそう思っていれば、俺もです、と嬉しそうに返してくる。何で嬉しそうなのか分からず、そうなの、と返すしかなかった。
並んで歩く理由も分からなくて、行き先をまだ決めていなかったけど、俺こっちだから、と別の道を選びイルカと別れる。
普段から自分に対して男でも女でも媚びる相手はいたが、こんな風に声をかけて来ることはそうなく。かと言ってイルカは自分に媚びている感じもない。変わった人だな、と思った。
ただ、何回かそんな風に外で声をかけられる事が増え、イルカが隣を歩く事にも慣れ、そこから、外で食べるなら一緒にどうですか。そう誘われた時は、まあ、いいかなあ、とイルカに関しては内心呆れも含んだ気持ちで頷いた。
一緒にいて感じるのは、自分に対する尊敬やただ単に楽しい、そんな単純な感情。他に見返りを求める訳でもない、純粋な眼差しは、部下のナルトとそう変わりなく。逆にこの子供っぽさが教員に向いているものなのかもしれない。それか自分が子供の頃から大人に囲まれて育ったてきたから、幼く感じるのか。楽しそうに酒を飲むイルカを縦肘をつきながら見つめていれば、どうしたんですか?と素直に聞かれる。何でもないよ、と微笑んで答えれば、イルカは酒で赤くなった顔のまま、少し驚いたように少し目を丸くして自分を見つめた。
自分の方が稼いでいるから。それだけの理由で勘定を払おうとすれば、イルカは何故か不機嫌になる。そのくせ、突然給料日だったからと、意気揚々と奢ろうと声をかけてくる。そのペースが掴めないけど嫌いではない。
後輩はそれなりに何人も面倒を見てきたが、それのどれにも当てはまらないものの、こんな後輩が出来るもんだなあ、とそれぐらいにしか思っていなかったから。
だから。
一緒に飯を食いにいくようになって、気が付けば夏は過ぎ去り季節はすっかり秋に変わろうとしていた。
いつものように店を後にして歩き出し、人影が少なくなった暗い夜道で不意に足を止めたのはイルカだった。
店に忘れ物でもしたのか、それか、そこまでではなかったが、飲み過ぎて気持ち悪くなったのか。
「どうしたの?」
聞いたカカシに、イルカがこっちへ顔を向ける。いつもの黒く透き通った目が、揺れていると思った時、
「好きなんです」
イルカがそう口にした。
一瞬、何を言われたのか分からなかった。いや、言葉の意味は理解出来たが、それがイルカから自分に向けられているという事に、理解が出来なかった。
好き。
その言葉を頭の中を巡り。ようやく、自分の中に入る。そっか、と呟く。
「ありがとう」
そう言えば、イルカが眉根を不快そうに寄せた。違うんです、強い口調で否定して、一歩カカシに近づく。
「カカシさんの恋人になりたいって、そういう意味なんです」
自分のそっか、がどんな意味なのかイルカは分かっていた。ナルトがイルカを好きなように、それと同じ感情の好きなんだと。勝手に解釈した事にイルカははっきりと否定した。
勝手に着地点を決め納得したのに、イルカが続けた言葉は更にカカシを混乱させる。
カカシはじっとイルカを見つめ返した。
目の前にいる、この純真の固まりのようなイルカが。恋愛感情で自分を好き?ラーメンが大好きで、一緒にいても基本ナルト達やアカデミーの生徒の話ばかりで浮いた話はせいぜい中忍仲間から仕入れてきたどっかのアイドルとか、その程度で。そりゃ相手がいない事は知っていたから一人で抜いたりはするんだろうが。どうしても自分の中にあるイルカが持っている感情とは思えない。思わずカカシは、あのさ、と口を開いていた。
「先生、分かってる?俺とつき合いたいって事はデートとかだけとかそんなんじゃなく、セックスもするって事だよ?」
気持ちは嬉しいが、言っている意味をはき違えている。そう思ってカカシがそう口にすれば、イルカはまた眉根を寄せた。さっきまで美味しそうにデザートにバニラアイスを食べていた、その口をぐっと結んだイルカは、ゆっくりと開く。
「分かってます。俺はカカシさんとエッチがしたいです」
その言葉は、カカシを驚かせるに十分だった。
イルカの口から出た言葉と思えない。でもはっきりと、口にした。
ナルトに毛が生えた程度の青二才の青年、そのイメージだったのに。自分の四つ下だと言ったイルカはたぶん二十四、五。
ふと年齢を改めて意識しただけで、その年齢が、自分の感覚より遙かに上で、その年齢は十分範囲内だと分かった途端、何故か胸がドクンと鳴った。
(……何、言って、そんな覚悟決めたような顔で、)
そう言葉が頭に浮かぶのに、真剣なイルカを前にしたら、口に出せない。
それなのに、見ようともしていなかった、イルカの濡れ場が、あどけなく笑うイルカの笑顔や、美味そうに飯を食べ楽しそうに笑うの合間に馬鹿みたいに浮かんでくる。身体の奥が熱くなる。それに動揺した。
今まで寄ってくる女は相手にしていても、身体だけで特定の女とか持つ事すらなかった。せいぜいとっかえひっかえするのが面倒な時だけ、つき合った。
どんなに泣きつかれても、いつも答えはノー、それだけだったのに。
なのに。
イルカを前にして。告白されて。
ーーどうしよう。
悩む自分が、そこにいた。
<終>
あのナルトを助けた教員である中忍。古巣の暗部にさえその噂が広がっていて、身を挺して守ったその事実に、内心感心さえした。
そこまで興味を持ったわけでもなかったが、自分の部下になったナルトがことあるごとに口にするのは火影になる事か、ほとんどが自分の担任だった先生の話題で。その内容も子供じみた事ばかりだから、関心さえ薄れていたのは事実だった。
そんな時、たまたま任務帰りに、疲れたと言って怠そうに歩いていたナルトが突然駆け出した。その先にいたのが、ナルトが大きな声で名前を呼んだ通り、中忍のうみのイルカだった。
前述の通り、どんな忍なのか多少の興味を持っていたが想像すらしていなかったものの、目の前で自分に頭を下げる男は、鼻に横一線の傷がある意外は特に特徴がない。言わば普通の男。そして次に感じたのは、ナルトから聞いていた通り、随分と子供っぽいということ。
アカデミーの教員で、子供目線だからなのかは分からないが、たった四つ下には見えなかった。それは、同じ忍でも畑が違うからなのか、身を置いていた世界が違うからか。言い意味でも悪い意味でも擦れてない。
分かったのは、自分とは違う、と言う事。
そんな事を思っているとは知らないイルカは、目の前で、自分を憧れの忍だと、嬉しそうに、尊敬を含めた眼差しで照れたように笑う。そんなイルカを温度差のある目でカカシはじっと見つめた。
声をかけられたのは単独任務を終えて夕飯をどうしようかと思っていた時で。最初、声をかけられたものの、職場でも何でもない、商店街や飲み屋街へ抜ける途中の道で、何で声をかけられたのた分からず、カカシは振り返った。
今お帰りですか、と言われ、その通りだったから、そうだよ、と短く答える。答えながらも、そう聞かれた事が不思議で、七班の任務だろうが単独任務だろうが、そんな事は関係ないだろう、とそう思っていれば、俺もです、と嬉しそうに返してくる。何で嬉しそうなのか分からず、そうなの、と返すしかなかった。
並んで歩く理由も分からなくて、行き先をまだ決めていなかったけど、俺こっちだから、と別の道を選びイルカと別れる。
普段から自分に対して男でも女でも媚びる相手はいたが、こんな風に声をかけて来ることはそうなく。かと言ってイルカは自分に媚びている感じもない。変わった人だな、と思った。
ただ、何回かそんな風に外で声をかけられる事が増え、イルカが隣を歩く事にも慣れ、そこから、外で食べるなら一緒にどうですか。そう誘われた時は、まあ、いいかなあ、とイルカに関しては内心呆れも含んだ気持ちで頷いた。
一緒にいて感じるのは、自分に対する尊敬やただ単に楽しい、そんな単純な感情。他に見返りを求める訳でもない、純粋な眼差しは、部下のナルトとそう変わりなく。逆にこの子供っぽさが教員に向いているものなのかもしれない。それか自分が子供の頃から大人に囲まれて育ったてきたから、幼く感じるのか。楽しそうに酒を飲むイルカを縦肘をつきながら見つめていれば、どうしたんですか?と素直に聞かれる。何でもないよ、と微笑んで答えれば、イルカは酒で赤くなった顔のまま、少し驚いたように少し目を丸くして自分を見つめた。
自分の方が稼いでいるから。それだけの理由で勘定を払おうとすれば、イルカは何故か不機嫌になる。そのくせ、突然給料日だったからと、意気揚々と奢ろうと声をかけてくる。そのペースが掴めないけど嫌いではない。
後輩はそれなりに何人も面倒を見てきたが、それのどれにも当てはまらないものの、こんな後輩が出来るもんだなあ、とそれぐらいにしか思っていなかったから。
だから。
一緒に飯を食いにいくようになって、気が付けば夏は過ぎ去り季節はすっかり秋に変わろうとしていた。
いつものように店を後にして歩き出し、人影が少なくなった暗い夜道で不意に足を止めたのはイルカだった。
店に忘れ物でもしたのか、それか、そこまでではなかったが、飲み過ぎて気持ち悪くなったのか。
「どうしたの?」
聞いたカカシに、イルカがこっちへ顔を向ける。いつもの黒く透き通った目が、揺れていると思った時、
「好きなんです」
イルカがそう口にした。
一瞬、何を言われたのか分からなかった。いや、言葉の意味は理解出来たが、それがイルカから自分に向けられているという事に、理解が出来なかった。
好き。
その言葉を頭の中を巡り。ようやく、自分の中に入る。そっか、と呟く。
「ありがとう」
そう言えば、イルカが眉根を不快そうに寄せた。違うんです、強い口調で否定して、一歩カカシに近づく。
「カカシさんの恋人になりたいって、そういう意味なんです」
自分のそっか、がどんな意味なのかイルカは分かっていた。ナルトがイルカを好きなように、それと同じ感情の好きなんだと。勝手に解釈した事にイルカははっきりと否定した。
勝手に着地点を決め納得したのに、イルカが続けた言葉は更にカカシを混乱させる。
カカシはじっとイルカを見つめ返した。
目の前にいる、この純真の固まりのようなイルカが。恋愛感情で自分を好き?ラーメンが大好きで、一緒にいても基本ナルト達やアカデミーの生徒の話ばかりで浮いた話はせいぜい中忍仲間から仕入れてきたどっかのアイドルとか、その程度で。そりゃ相手がいない事は知っていたから一人で抜いたりはするんだろうが。どうしても自分の中にあるイルカが持っている感情とは思えない。思わずカカシは、あのさ、と口を開いていた。
「先生、分かってる?俺とつき合いたいって事はデートとかだけとかそんなんじゃなく、セックスもするって事だよ?」
気持ちは嬉しいが、言っている意味をはき違えている。そう思ってカカシがそう口にすれば、イルカはまた眉根を寄せた。さっきまで美味しそうにデザートにバニラアイスを食べていた、その口をぐっと結んだイルカは、ゆっくりと開く。
「分かってます。俺はカカシさんとエッチがしたいです」
その言葉は、カカシを驚かせるに十分だった。
イルカの口から出た言葉と思えない。でもはっきりと、口にした。
ナルトに毛が生えた程度の青二才の青年、そのイメージだったのに。自分の四つ下だと言ったイルカはたぶん二十四、五。
ふと年齢を改めて意識しただけで、その年齢が、自分の感覚より遙かに上で、その年齢は十分範囲内だと分かった途端、何故か胸がドクンと鳴った。
(……何、言って、そんな覚悟決めたような顔で、)
そう言葉が頭に浮かぶのに、真剣なイルカを前にしたら、口に出せない。
それなのに、見ようともしていなかった、イルカの濡れ場が、あどけなく笑うイルカの笑顔や、美味そうに飯を食べ楽しそうに笑うの合間に馬鹿みたいに浮かんでくる。身体の奥が熱くなる。それに動揺した。
今まで寄ってくる女は相手にしていても、身体だけで特定の女とか持つ事すらなかった。せいぜいとっかえひっかえするのが面倒な時だけ、つき合った。
どんなに泣きつかれても、いつも答えはノー、それだけだったのに。
なのに。
イルカを前にして。告白されて。
ーーどうしよう。
悩む自分が、そこにいた。
<終>
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