幸福論

「よく撮れてるじゃないか」
机の上に乱雑に並べられた写真を見て、綱手が満足そうに言った。
それは明らかに褒めていると分かってはいるものの、それを素直に受け止めれず、はあ、と声を返すカカシに、綱手は片眉を上げた。
「なにぶすくれた声出してるんだい。ちゃんと褒めてるだろう」
何枚もある写真のうちの一枚を手に取ると、綱手はそれを眺めながら椅子の背もたれに体重を預ける。
「みんな老けたねえ」
そんな事を呟きながら満足そうな笑みを浮かべた。その手に映っているのは宴を開いている大名の姿だった。そこには砂隠れの里の上層部の顔も並んでいる。砂隠れと縁があり親交があるとは知っていたが。
今回大名の護衛として就いたのは上忍一人とシカマルだった。カカシもまたその中に含まれたのだが、主要メンバーとしてではない。
カメラマンとしてだった。
何を考えているのか分からないが、大名の行き先と目的が分かった途端、何故かカカシにカメラマンとして随行するようにと、白羽の矢が立った。
シカマルが中忍に昇格し、様々な任務に就くのは分かる。そこまでランクも高くない。
シカマルを陰でサポートすると言うのは名目ではないと分かっているが、釈然としない気持ちだった。
そんな事までして旧知の写真が欲しかったのか。歳を取るのはみな同じだと、それは口には出せないが。
深く聞きたくないし理解したくない、がカカシの正直な気持ちだった。
兎に角、任務は無事済んだのだからそれは良かった。
「じゃあ、これでいいですよね。行こうか」
カカシの横に立っていたシカマルを促して背を向ける。
「ああ、ご苦労だったな」
肩越しに見えた綱手は上機嫌そのもので、写真を見ながらにやにやと言ったら語弊があるかもしれないが、嬉しそうな笑みを浮かべていた。

廊下に出て歩きながら、さて、と一息をついたカカシはシカマルへ顔を向けた。任務を一緒に就いた中で、護衛と言う地味な任務にも関わらず冷静に淡々とこなしていた。ナルトやサクラと同じ歳だと言う事をつい忘れるくらい。その忍びとしての才能は確実に誰よりも秀でている。そこに面倒くさいと言った意欲こそ欠けてはいるが。
ふと昔の自分と似ているところがあるなあと思い、目を細めればその目線に気がついたのか、シカマルがカカシを見た。
「えーっと、じゃあ。解散って事でいいですか、スケアさん」
少し控えめな言い方と、呼ばれた名前に。それに馴染めないと言わんばかりの表情も含まれ、そこで、まだ自分が元の姿に戻っていないと思い出した。
今回のように任務の際に別の姿になり、別の人物として遂行するのだが。それはあまり内部にも知られていない。
「まあね。でも外までは一緒に行こうよ」
もしこれがナルトやサクラだったら。面白がって食いついてくるのが目に浮かぶが、シカマルの戸惑いながらも素っ気ない感じが、少し寂しくも思える。
カカシの科白に、シカマルは、はあ、とどっちとも言えない返事をした。めんどくせえ、と心で呟いたのが分かる。
それに笑いをこらえながら一緒に並んで歩き、建物の外に出たところで、
「シカマルじゃないか」
後ろからシカマルを呼び止める声。
あ、と思うのは。その声の主が分かったからで。それはシカマルも分かってるのだろう。
振り返ると、イルカが嬉しそうに手を振っていた。
「久しぶりだな」
歩み寄ったイルカの手には分厚い書類。懐かしそうに目を細めるイルカは、相手が元生徒とは言え、とても先生らしく見えた。
「任務だったのか?」
「ええ、まあ。先生も忙しそうっすね」
「ああ、俺は相変わらずだ」
そう言ってイルカは笑った。
「頑張ってるみたいだな」
普段見ることがないイルカの表情に、カカシの口元は自然と緩む。と、イルカが隣にいるカカシに目を向けた。さっきシカマルに向けていた視線とは違う、余所余所しい表情で、頭を下げられた。カカシも慌てて会釈を返す。
「えっと、あなたは、」
イルカとはナルトの上忍師になった頃からのつき合いだが、この姿を見せたのは初めてだった。勿論、正体がカカシだとは知らない。任務で限り、この姿をするのだから、イルカに説明のしようもなかった。
「スケアです。木の葉の専属カメラマンをしてまして。今回はシマカル君に同行させてもらいました」
恋人相手に変な挨拶だと、寂しさが募るが仕方がない。にこやかな笑顔を見せ挨拶をすると、少し警戒心を解いたイルカは、合わせるようにカカシに笑顔を見せた。
「そうですか」
ぎこちないイルカの笑顔は、この自分の顔のペイントのせいだろうか。そうさせているのが自分だと思えば、何故か悲しくなる。
さっさと元の姿に戻ってイルカを抱きしめていちゃいちゃしたい。
シカマルを前に勝手に卑猥な事を思いながら、ふと視線をシカマルに向けると。
今まで見たこともない顔をしていた。
必死に隠そうとしているからイルカはそこまで気がついていないが、困惑しているのは明白で。
自分とイルカが恋仲であると、それを知っている。それを知ってのこの展開は、シカマルにしたらそうなるんだろうなあ。とカカシは内心苦笑いを浮かべた。
「すごいカメラですね」
イルカはそんなカカシやシカマルの思いを知らず、カカシが肩にかけているカメラに興味を示した。
手をカメラに伸ばし、触れる直前にその手を止める。カカシへ視線を上げた。
「高いんですか?」
「ええ、まあ。それなりに」
「へえ。やっぱ綺麗に撮れるものなんですよね」
カメラに興味があるらしい。その目は少し輝いている。でも、イルカがカメラに興味があるとは知らなかった。今までそんな話題すら出たことない。
不思議に思っていると、肩にかけているポーチにも目を向けた。
「この中にもカメラが入っているんですか?」
「ええ、望遠レンズとか、色々入ってますよ」
「望遠かあ。聞いたことあります。いいですね。こんなカメラだったら子供たちを綺麗に撮れるのかなあ」
顎に手を当てるイルカに、理由を聞いて内心納得しながら会話を広げるべきなのか、悩んだ。
今のところ気がついている様子もないが、イルカは妙なところで勘がいい。相手が恋人であれば尚更だ。早く切り上げたいが、イルカはそんな様子を見せない。
「えっと、先生なんですね」
仕方がなく、そう聞くとイルカが嬉しそうに頷いた。
「ええ、行事なんかに撮ってやりたいなって思うんですけど。動きが素早くって。あと、嫌だって逃げ回ったりしてまともな写真を残せなくって」
「じゃあ俺、用事あるんで帰ります」
「え!?」
不意に発言したシカマルの声にカカシが反応した。一秒でもいたくないとそんな顔をしていたが。
「そうか、足止めしちゃって悪かったな」
申し訳なさそうなイルカの言葉に、シカマルはばつが悪そうな顔を見せた。
「いや、そんな事ないっす」
じゃあ、と頭を下げるとそそくさと走り去っていく。カカシが困っているのを分かっていた上でのつれない態度に、
(・・・・・・ひどーい)
カカシはシカマルの背中を見送りながら心で嘆いた。確かに恋人同士であり、片方は元恩師で、もう片方は自分の存在を隠して三文芝居をしているのだ。そうなっても仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。
肩を落とすが、嘆いている場合じゃない。カカシは思い直す。
自分もさっさとこの場から離れて、ーー。
「カメラってこの大きいのだけなんですか?」
イルカの純真な眼差しを共に投げかけられる言葉に、カカシは眉を下げて微笑むしかなかった。
「あー、いや。色々ありますよ」
ありません、じゃあこれで。でもいいのだが。それはやはりイルカ相手に良心が咎めた。
でもやはりさっさと切り上げたいには変わらない。
カカシは説明して終わらせようとポーチを開けた。
「機密もあるんで全部は見せられないんですけど、」
そう言って中をごそごそと探る。そんな自分に向けられているイルカの眼差しは、期待がしっかりこもっている。
カカシは適当に、手に掴んだカメラをポーチから取り出した。
手のひらの中にすっぽりと収まるサイズの小さな小型カメラだった。
「これなんか便利ですよ。画質もまあまあいいし、カメラ嫌う子供なんかも、これだったら気がつかないんじゃないかな」
シャッター音も鳴らないし。
適当に理由をつけて見せるカカシに、イルカはじっとそのカメラを見つめた。
「・・・・・・あの、これ。手に取っても?」
「ええ、いいですよ。どうぞ」
差し出すと、イルカがそのカメラを手に取る。物珍しげにカメラを回しながらじっと見つめた。
「軽い」
「ええ、そうなんです。そのカメラはそれも売りの一つですから」
カメラに興味があるのなら、もっと性能がいいカメラに興味を示すとばかり思っていたが。そのカメラも元々管理部から借りたものだ。細かく聞かれたら困るなあ、と思っていると、イルカがふとカカシを見た。
自分だと分かっていないはずなのに、それだけでドキリとした。
「これ・・・・・・貸してもらったりは出来ないでしょうか?」
思わぬ発言だった。カカシは何回か瞬きする。
「これ?」
「ええ、これだったら子供たちに分からないんで、良い笑顔が撮れるんじゃないかなあって。あ、無理だったらいいんです」
「ああ・・・・・・なるほど。そうですね」
自分が管理しているものではないから、悩むが。既に今回の任務で使ったフィルムも抜いてあるから、特にイルカが使う事には問題もない。ただ、これを貸せばこのまま会話を終わらせれる。カカシは頷いた。
「ええ、いいですよ。もともとそれはここの管理部からお借りした物ですし」
「え、そうなんですか」
「管理部には俺から伝えておきますので良かったらどうぞ」
「ありがとうございます」
イルカが嬉しそうに微笑んだ。その笑顔にほっとしてカカシも笑顔を見せる。
「そのまま管理部に返してもらって大丈夫ですから。今後も学校で使えるようになるといいですね」
人の良い笑みを浮かべるカカシに、イルカは頭を下げた。
カカシも頭を下げて別れを告げるとその場から立ち去った。


自分の家でメイクを落とし、一息着いたカカシはその足でイルカの家に向かった。
帰還日を伝えてあったからか、イルカは料理はカカシの分を含めて2人分作ってくれていた。風呂から出たカカシは、タオルで髪を拭きながら居間に戻る。ちらりと台所を覗くと大きめ土鍋があり、蓋をしたその土鍋からは暖かく優しい匂いが立ち上っていた。
「今日は鍋ですね」
「ええ、あときんぴら人参もありますよ」
箸休め程度に、と答えるイルカは台所から姿を見せる。ちゃぶ台に箸と小皿を持っていた。手際よくそれを並べるとまた台所に向かう。
「何か手伝うことある?」
台所にいるイルカに向かって聞けば、少し間があった後、
「もう出来るので大丈夫ですよ。ビール、持って行きますから」
そんな声が返ってきた。
そこまで広くないアパートは鍋の暖かく美味しそうな空気が充満している。それだけでカカシは幸せな気持ちになった。
「今日人参たくさんもらったんですよ」
きんぴら人参を持ってイルカが現れる。こんもりと皿に盛られていた。
「そうなの?」
「ええ、生徒が今日たくさん人参持って来てくれたんです。おじいちゃんの家でたくさん採れたからって」
見かけは悪くても、味は八百屋に並べられているのとなんら変わらないですもんね。
嬉しそうにその皿をちゃぶ台に置いた。
「そうなんだ。他には何かあった?」
そんな事を聞いたのは、今日イルカに会っている他なかったからだが。イルカは、少し考えるように視線を上に向ける。
「そうだな、後はいつもと変わらず授業したくらいだな。まあ、怒鳴ってばかりだったんですけどね」
はは、と笑うイルカにカカシも微笑む。
「ビール、持ってきます」
イルカは冷蔵庫に向かった。その背中を目で追いながら。
今日あの姿で自分に会った事はそこまで大したことではなかったのか、と思い直す。元生徒であるシカマルに久しぶり会った事はイルカに取っては嬉しい出来事だったはずなのだが。
まあでも変なメイクした人にも会いましたよ、何て言われたらショックだから、話題にならなくて良かったのかもしれない。
そう思っているうちに、イルカはビールとグラスを持って現れた。
「どうかしましたか?」
視線が合ったイルカに聞かれ、カカシはううん、首を振った。
「お腹空いたなあって」
「そっか、酒より鍋でしたね。直ぐ持ってきますね」
優しく微笑むイルカは嬉しそうで、それだけでまた幸せな気持ちになる。
イルカは再び台所に戻り、今度は土鍋を持ってくるとちゃぶ台に置いた。火から下ろした土鍋は、まだぐつぐつと煮えている音を立てている。
蓋を開けると、湯気が天井へ上がっていく。イルカは手際よくカカシと自分へ順番に小皿に鍋を装うと、注いだビールを持ってカカシに見せた。
「じゃあ乾杯」
「うん、お疲れさま」
冷たいビールを喉に流し込んだ。
イルカの話は心地良い。盛り上がりやオチがあるわけでもない、ただ日常であった話をするだけなのだが、カカシはイルカの口にする話題が好きだった。子供の話しに始まり、自分の仲間の近況やよく足を運ぶ商店街の話題。愚痴っぽく話していても顔は嬉しそうでだし、人の悪口は決して言わない。色々な話を聞いているだけで、イルカが皆に愛されているのだと実感する。それはきっとイルカ自身気がついていないのは勿論で、それをただ、嬉しそうに幸せそうに話す。カカシはこの時間が好きだった。
イルカと知り合って飲みに誘うようになって直ぐ、イルカと話すだけで幸せを感じ、もっと一緒にいたいと初めて他人に感じた。
自分もイルカも同じ忍びであり、里を守るのが使命でも。イルカの存在で平和を感じる。なんて言ったらきっとイルカは複雑な顔を浮かべるだろうけど。
カカシにとってはこれが自分の幸福なのだと実感する。
そしてイルカが自分に見せる笑顔も、幸せそのものだ。それは正に自分に向けたイルカの恋情そのもので、素直に嬉しくなる。

不意に訪れた沈黙にカカシは手を伸ばして、テーブルに置かれたイルカの指に触れた。
ゆっくりとイルカの肌を指で撫でると、最初普通に反応したイルカは、その動きに、ぴくりと手を動かす。
「ね、イルカ先生」
甘く名前を呼べば、カカシの意図を察したイルカは頬に朱を走らせた。恥ずかしそうに、赤くなった顔を隠すかのように俯く。
「だって俺はまだ風呂に」
「後でいい」
「片づけがまだ、」
「後で手伝います」
いつもならお互いが風呂に入り、電気を消し布団に入った後にイルカを求めていた。
でも、今日は早くイルカの肌に触れたい。その気持ちは一緒にいるだけで高まっていた。イルカの拒む様子もそこまで頑なでないと分かり、カカシはイルカの手を掴んだ。
切羽詰まってるなあ、と自分でも思った。
身を捩らせるのは恥ずかしさからだと頭で分かっていても、拒まれている気持ちと錯覚する。早くその気にさせたくて、カカシは布団に押し倒したイルカの身体をまさぐった。
既にイルカの体温が上昇している。でも、もっと確実な反応が見たくて上着の上から固くなりつつある突起をつまんだ。
「あっ、」
イルカから声が上がる。
その突起を執拗に押しつぶずしながらイルカの首元をきつく吸う。鼻からイルカの匂いを吸い込んだ。
身体を起こすと、カカシは上着を脱ぐ。普段は制服で見えない白い肌が露わになる。
「先生も脱いで」
布団に押し倒されたまま、カカシを見上げていたイルカにそう促すと、少しの間の後、イルカが身体を起こした。顔を赤らめたまま、カカシに言われた通り、ゆっくりと自分の服を脱いでいく。ズボンにかかった手をカカシは止めた。
「いい、後は俺がやるから」
微かに微笑みを見せるカカシに、イルカはぐっと唇を結んだ。そしてそこからゆっくりと開く唇に誘われるように、カカシは口を塞いだ。

カカシは陰茎を一番奥まで入れると、イルカに身を寄せた。揺すり上げると、イルカはカカシの背中に手を伸ばした。お互い、息が既に上がっている。いつも以上にイルカの声が大きく感じ、反応もまた大きい。いつもはこのアパートの薄い壁を気にして声を出すのを耐えるのに。
「気持ちいい?」
聞けば、イルカは嬌声を上げながら、快楽の波に耐えるように眉を寄せ頷く。その目は閉じられ、黒い瞳は見えない。
思い合っていると分かっていても、イルカは決して好きだとか、愛してるとか、だからセックスしたいとか、そんな言葉もない。一方通行な気分になるのは、不満だった。
気持ちいいなら、耐える事なんてしないで欲しい。でも、余裕がないのは自分も一緒だ。
セックスなんてただの性欲処理に過ぎないと、誰かが言っていたのを思い出す。金を出して囲っていた遊女しかいなかったあの時は、それが正しいと思っていた。
でも、自分を受け入れ身体を、心を許したイルカと身体を繋げる度、愛と言う目に見えないものが確かに存在すると感じた。
愛おしくて、堪らない。その気持ちは快楽を乗算させる。
(・・・・・・やば、・・・・・・気持ちいい)
追い上げながら、カカシは眉根を寄せた。肉がぶつかる音と、イルカの声が大きくなる。
イルカが先にカカシの腹の間で達した。
そこから自分も、と絶頂に向かって動きを早める。
「・・・・・・っ」
下腹部に響く甘い感覚にカカシは目を閉じ、腰を震わせながらイルカの最奥に欲望を放った。
精液をイルカの奥に注ぎながら、ふと、微かな音をカカシの耳が捉えた。違和感が感じ目を薄っすら開けて視界に入ったものを見た瞬間、理解するよりも早く身体が動いたのは、忍びにある危険察知に対する反射神経に似たものだった。素早く手を伸ばしてイルカの手首を掴んだ。
枕元に上げられたイルカの右手。
カカシは、荒い息を繰り返しながら、掴んだイルカの手をゆっくりと上げた。
イルカの手に見えるのは、見覚えのある小型カメラ。
だと分かっても、そこからこの状況で繋がるものがない。
何これ、どっから。なんて言葉は出てくるものの、口に出せるはずがない。だってこれは、自分がイルカに渡したカメラだ。
「・・・・・・何で?」
だから、出てきたのはそんな言葉だった。
「先生、何を撮ったの?」
動揺したままイルカの顔をまじまじを見る。非難している目に、イルカは泣きそうな目をしたまま、視線を泳がせ目を伏せた。
このカメラは。
イルカが、昼間。子供たちの写真を撮る為だって。
そう言った。
意味が分からない。
答えを待つカカシに、イルカはその視線に耐えきれないのか、ぐっと口を結んだ。
「先生?」
イルカはゆっくりと黒い目をカカシに向けた。
「・・・・・・欲しかったんです。カカシさんの・・・・・写真が欲しくて・・・・・・」
「・・・・・・は?」
「カカシさんの・・・・・・いった時の顔が・・・・・・好きで。・・・・・・本当は、子供たちの為に借りたんですけど、でも、もしかしたら撮れるかな、って思ったらどうしても撮りたくなって、・・・・・・すみません」
ぽかんと口を少し開けたまま。イルカの言葉を聞きながら。こみ上げてくるものは、絶対的な安堵感と、くすぐったい気持ち。
どこまでも不器用だけど、これは。
あの時、スケアだった自分の前で小型カメラを手に取った時のあのイルカの顔の真意が、ようやく今分かってしまった。
喉に詰まったそれを吐き出すように、カカシの口から笑いがこぼれた。
「カカシさん・・・・・・?」
「態度も大事だけど、口に出して伝える事が大事だって・・・・・・知ってた?」
カカシはイルカからカメラを取り上げる。取り上げられたイルカは、あ、と残念そうな声を出した。
「これは没収」
床に投げ捨てる。カシャン、と固い音が部屋に響く。
「あっ、・・・・・・なに?」
イルカの両足を手で掴む。
カカシは繋がったままのそこをゆっくりと動かす。水っぽい音が漏れ、固さを取り戻すカカシの陰茎に、イルカが困惑気味に反応をした。
「そりゃそうでしょ」
「ーーーーぁっ」
笑いを漏らしながらイルカの足を掴み上に上げると、ぐぐぐ、と一番深いところまで入れる。再び訪れる刺激に、イルカは切なげに眉を寄せた。
「全部、見せてあげるから。覚悟してね」
耳元で囁くと、イルカの赤い顔がさらに赤くなり、耳たぶを甘く噛むと刺激でイルカの顎が上がる。
カカシはそこから欲望を満たす為に、激しく突き上げた。
自分が向けている欲望と同じ欲望をイルカが持っている。その事実はカカシを素直に驚喜させる。
喘ぐ顔を見ながら腰を動かすと、イルカもまた快楽に翻弄されながらもカカシを見つめ返す。視線が溶けるように交わった。
「先生、愛してる」
イルカの上げる嬌声の隙間にカカシがそう呟くと、イルカは身体を震わせ恥ずかしそうに俺もです、と幸せそうに呟いた。


<終>
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