Lady
ランクが高い低いに関係なく割りに合わない任務っていうのはザラにある。
任務を采配する火影に非を向けたところでそれ自体が自分の仕事なのだから選ぶ権利なんてない。
今回はたまたまくノ一フェチの大名に護衛と話し相手と言う内容の依頼が木の葉に入り、それがたまたまスケジュールの空きとタイミングがあったカカシが指定された。本物だと見抜く事が出来ない変態の素人に本当のくノ一を送るはずがない。
カカシが適当に相手をしてこい。
綱手の一言で任務が決まったに過ぎないが。
にしてはあのエロ大名、話が長いんだよ。
愚痴を零しながら任務完了の式を送ると、カカシはその姿のまま適当な店に入った。里に帰る前に取り敢えずバーで一杯ひっかけたい。
仕事で女体化しているとはいえ、写輪眼だと振り返る事がない格好で気楽に外で飲めるのは有難い。
長い足で緩やかに店内を歩けば、銀色の長い髪が揺れる。そのまま真っ直ぐに空いているカウンターに座った。
然程混んでいないからか、マティーニを頼めば直ぐにテーブルに置かれ、それを一気に飲み干した。縦肘をつきながら赤く小さな口でオリーブを齧る。次はウイスキーにしようかと、壁に並べられた酒の瓶を眺めた。それぞれの地域によってウイスキーは味は違う。
そこまで酒は強くないけど、口を湿らせる程度なら。
バーテンダーに向かって軽く手を挙げる。
『すみません』
台詞が重なり顔を向ければ、一つ空いた隣の席で、相手もまた同じように軽く挙げた手をそのままにこっちを見ていた。
ショートボブの黒い髪に、顔にかかる髪は耳にかけている。その女が黒い目を丸くする。
そこから小さく笑ったのは同時だった。
どうぞ、とレディファーストとばかりに先に譲ればその大きな黒い目が緩む。首を振った。
「いいんですよ。貴方が」
一見気の強そうな女の物腰柔らかい対応は嫌味なものは感じられない。
「じゃあウイスキーを」
「あ、私も」
一緒ですね。
静かな音楽が流れる中、カカシは素直に頷き微笑みを黒い髪の女に返した。
時間が経ち客が増え、女性割合が多いテーブル席では話に盛が盛り上がっている。
「貴方は仕事で?」
脚を組んでウイスキーのグラスを傾けていると、黒い髪の女から声がかかる。カカシは頷いた。
「ええ、まあ」
貴方も?社交辞令で同じ質問返すと、グラスを両手で持ちながら黒い髪の女は同じように頷いた。
「しかも、割の合わない仕事。だから慣れない事ばかりだったから肩が凝っちゃって」
頬に落ちた黒い髪を耳にかけると、疲れたため息を零してグラスを傾けた。
「大変だった?」
聞くと、黒い髪の女は思考を巡らせるように視線を漂わせた。
縦肘をついたままのカカシに視線を戻す。
「正直、かなり。上がかなり人使い荒いんですよ。あ、私って根に持つ方なんで」
言い方にカカシは声を立てて笑った。
「嘘ばっかり。私から見たら貴方はお人よしにか見えないんだけど」
わずかに抗議を含んだ眼差しを、黒い髪の女は向ける。それに構わずカカシは自分の長い銀色の髪を怠そうに掻き上げた。
「今日は一人で飲みに?」
話題を変えてきた相手にカカシは青い目を向けた。
「そう、誰かいるように見える?」
「いや、でも友達くらいは、」
「いない」
黒髪の女の言いかけた言葉を遮るように口を開いた。
「女ってあんまり好きじゃないから。一瞬にいても面白くもなんともないし。だって、女は自分が一番だと思ってる。気に入らない相手は敵だともね」
少なくとも自分の周りにいる女はみなそうだった。付き合ってきた女に関しては、それなりに自分の感じた情を向けたけど。だからと言って一緒にいて楽しいなんて思わなかった。だから例外はない。
「……男には思わないんですか?」
カカシは肩を竦めた。
「男はまた違うでしょ。貴方は女友達はいる?」
グラスを持ったまま黒い髪の女は視線をカウンターに落とした。
「いえ。仕事仲間なら。男友達はいますけど」
「そうなんだ」
途切れた会話に、お互いグラスをまた傾ける。溶けた氷の音だけが響いた。
「私は違いますよ」
終わったと思っていた話題を振られてキョトンとした顔を向けていた。
「何が?」
「自分が面白い人間だって言ってるんです」
得意げに黒い髪の女は口の端を上げた。
「あと、セックスは上手いんですよ、私」
唐突の告白にカカシはグラスから唇を離していた。
「貴方を気持ちよくしてあげれる自信はあります」
口を微かに開けたまま瞬きもせず見つめる。
「ーー本気で言ってるの?」
カカシの計る眼差しを受けながら、黒い髪の女は微笑み、持っていたグラスのウイスキーを飲み干す。
酒で濡れた唇が微笑んだ。
部屋に入り扉を閉めて直ぐに女が腕をカカシの首に回す。自らカカシの唇を奪うように塞いだ。
噛みつくようなキスをしながら、自分の服を脱ぎ捨てる。スイッチが入ったようにお互いに濃厚なキスを繰り返す。息つく暇もないくらいに。
頭の奥がじんとした。
相手もきっとそう。黒い瞳は目の奥が熱をもっているように潤んでいる。
細い腕を掴みベットに押し倒すと、そこまで大きくはない形の整ったお椀型の柔らかい胸が揺れ、跨ったカカシがそこに唇を添える。先端を舐めると、気持ちよさそうに嬌声が女の口から漏れた。その声に、単純にも下半身に血が巡った。元々性欲が薄い方だけど、最近忙しくてご無沙汰だった。だから、身体にもっと触れて、感じさせて、突き入れ、喘がせて、悦がらせたい。女の身体でジレンマに襲われる。
舌で這わせていた薄い肌から顔を離し、女を見下ろした。
「解いてよ」
呟いたカカシに女は目を丸くさせた後、肩を揺らして可笑しそうに笑い出した。
長い銀色の髪の間から、面白くなさそうに青い目で見つめている先でひとしきり笑った後、カカシを見上げる。
「解かなきゃ駄目ですか」
「そりゃあね。女の身体は嫌いじゃないけど」
「さっきは嫌いだって言ったじゃないですか」
「それとこれは別」
「じゃあこのままで」
カカシが女性の綺麗な顔立ちのまま眉を寄せた。黒い髪の女がうっとりとした。
「色っぽい。それにすごく綺麗。勿体ないと思いませんか?」
あんたほどじゃないから、そう答えるとカカシは覆いかぶさり耳朶を甘く噛む。女がぶるりと震えた。
「あんたも限界なくせに」
耳元で囁やくカカシも余裕がない。印を指で組んだ。
男の姿に戻った反動で、その重に安いベットが軋む。
元のカカシに戻った姿を目にしたイルカの満足そうな微笑みに、カカシは思わず目を眇める。
イルカは腕を伸ばしてカカシを強く抱き締める。唇を奪うと夢中で舌を絡めた。銀髪をまさぐるように触るイルカの手が、やがてカカシの背中に回り、やがてその背中に爪痕を残した。
「カカシさんまだ寝るつもりですか?」
イルカ先生の通る声は清々しい。
お互いに精魂尽きるまでセックスしてたんだから、まだ眠くて当たり前なのに。なのにイルカ先生のあまりにも元気はつらつな声に、布団の中から顔だけを出せば、やっぱりその通りで艶々とした顔をしていた。
「……おはよ」
「おはようございます」
眠そうな顔のままのカカシにキスをする。
昨日あれだけお互いに腰を使ったのに。シャワーを浴びたイルカ先生は使うことがなかったもう一組の布団をテキパキとたたんでいる。
「先生は下、痛くないの?」
「え、俺?ああ、普段から鍛錬を怠ってませんから。平気ですよ」
「初めてだったのに?」
「ええ、初めてだったんですけどね」
胡乱な眼差しを向けるカカシにイルカはあっけらかんと答えた。
今の姿から微塵も感じさせないが、口でしてくれ、優しくそして根気強く解すのを任せてくれた。そこから二人で求めあって。こんなにセックスが気持ちいいなんて初めて知った。満たされて満たし合って、またしたいって思えた。してる最中より、終わった後の方が幸福感を感じる。
そんな事を考えてる間にもイルカ先生は布団をたたみ終えて、自分の身支度に取り掛かっている。動きに無駄がない。
「ねえ先生」
「何ですか?」
鏡に向かって髪を手で結っているイルカは、鏡ごしにカカシの方を見た。
「里に帰ったらあんたどうするの?」
「え?」
「だから、この後」
その先は言わない。ずるく黙ったカカシを鏡ごしに見ながらイルカ先生は髪紐で、きっちりといつもの髪型を作る。
振り返った。
「カカシさんがよければ、また」
「ホント?」
「もちろん、本当です」
ふいと顔を背けるイルカ先生の耳は、赤い。
「じゃあさ、これはどっからが先生の思惑?」
「さあ、どこからでしょう」
後ろを向いたまま、イルカ先生は迷いなく答える。
そして、布団から起き上がり不満気にするカカシに振り返ったイルカは、悪戯な笑みを浮かべた。
<終>
任務を采配する火影に非を向けたところでそれ自体が自分の仕事なのだから選ぶ権利なんてない。
今回はたまたまくノ一フェチの大名に護衛と話し相手と言う内容の依頼が木の葉に入り、それがたまたまスケジュールの空きとタイミングがあったカカシが指定された。本物だと見抜く事が出来ない変態の素人に本当のくノ一を送るはずがない。
カカシが適当に相手をしてこい。
綱手の一言で任務が決まったに過ぎないが。
にしてはあのエロ大名、話が長いんだよ。
愚痴を零しながら任務完了の式を送ると、カカシはその姿のまま適当な店に入った。里に帰る前に取り敢えずバーで一杯ひっかけたい。
仕事で女体化しているとはいえ、写輪眼だと振り返る事がない格好で気楽に外で飲めるのは有難い。
長い足で緩やかに店内を歩けば、銀色の長い髪が揺れる。そのまま真っ直ぐに空いているカウンターに座った。
然程混んでいないからか、マティーニを頼めば直ぐにテーブルに置かれ、それを一気に飲み干した。縦肘をつきながら赤く小さな口でオリーブを齧る。次はウイスキーにしようかと、壁に並べられた酒の瓶を眺めた。それぞれの地域によってウイスキーは味は違う。
そこまで酒は強くないけど、口を湿らせる程度なら。
バーテンダーに向かって軽く手を挙げる。
『すみません』
台詞が重なり顔を向ければ、一つ空いた隣の席で、相手もまた同じように軽く挙げた手をそのままにこっちを見ていた。
ショートボブの黒い髪に、顔にかかる髪は耳にかけている。その女が黒い目を丸くする。
そこから小さく笑ったのは同時だった。
どうぞ、とレディファーストとばかりに先に譲ればその大きな黒い目が緩む。首を振った。
「いいんですよ。貴方が」
一見気の強そうな女の物腰柔らかい対応は嫌味なものは感じられない。
「じゃあウイスキーを」
「あ、私も」
一緒ですね。
静かな音楽が流れる中、カカシは素直に頷き微笑みを黒い髪の女に返した。
時間が経ち客が増え、女性割合が多いテーブル席では話に盛が盛り上がっている。
「貴方は仕事で?」
脚を組んでウイスキーのグラスを傾けていると、黒い髪の女から声がかかる。カカシは頷いた。
「ええ、まあ」
貴方も?社交辞令で同じ質問返すと、グラスを両手で持ちながら黒い髪の女は同じように頷いた。
「しかも、割の合わない仕事。だから慣れない事ばかりだったから肩が凝っちゃって」
頬に落ちた黒い髪を耳にかけると、疲れたため息を零してグラスを傾けた。
「大変だった?」
聞くと、黒い髪の女は思考を巡らせるように視線を漂わせた。
縦肘をついたままのカカシに視線を戻す。
「正直、かなり。上がかなり人使い荒いんですよ。あ、私って根に持つ方なんで」
言い方にカカシは声を立てて笑った。
「嘘ばっかり。私から見たら貴方はお人よしにか見えないんだけど」
わずかに抗議を含んだ眼差しを、黒い髪の女は向ける。それに構わずカカシは自分の長い銀色の髪を怠そうに掻き上げた。
「今日は一人で飲みに?」
話題を変えてきた相手にカカシは青い目を向けた。
「そう、誰かいるように見える?」
「いや、でも友達くらいは、」
「いない」
黒髪の女の言いかけた言葉を遮るように口を開いた。
「女ってあんまり好きじゃないから。一瞬にいても面白くもなんともないし。だって、女は自分が一番だと思ってる。気に入らない相手は敵だともね」
少なくとも自分の周りにいる女はみなそうだった。付き合ってきた女に関しては、それなりに自分の感じた情を向けたけど。だからと言って一緒にいて楽しいなんて思わなかった。だから例外はない。
「……男には思わないんですか?」
カカシは肩を竦めた。
「男はまた違うでしょ。貴方は女友達はいる?」
グラスを持ったまま黒い髪の女は視線をカウンターに落とした。
「いえ。仕事仲間なら。男友達はいますけど」
「そうなんだ」
途切れた会話に、お互いグラスをまた傾ける。溶けた氷の音だけが響いた。
「私は違いますよ」
終わったと思っていた話題を振られてキョトンとした顔を向けていた。
「何が?」
「自分が面白い人間だって言ってるんです」
得意げに黒い髪の女は口の端を上げた。
「あと、セックスは上手いんですよ、私」
唐突の告白にカカシはグラスから唇を離していた。
「貴方を気持ちよくしてあげれる自信はあります」
口を微かに開けたまま瞬きもせず見つめる。
「ーー本気で言ってるの?」
カカシの計る眼差しを受けながら、黒い髪の女は微笑み、持っていたグラスのウイスキーを飲み干す。
酒で濡れた唇が微笑んだ。
部屋に入り扉を閉めて直ぐに女が腕をカカシの首に回す。自らカカシの唇を奪うように塞いだ。
噛みつくようなキスをしながら、自分の服を脱ぎ捨てる。スイッチが入ったようにお互いに濃厚なキスを繰り返す。息つく暇もないくらいに。
頭の奥がじんとした。
相手もきっとそう。黒い瞳は目の奥が熱をもっているように潤んでいる。
細い腕を掴みベットに押し倒すと、そこまで大きくはない形の整ったお椀型の柔らかい胸が揺れ、跨ったカカシがそこに唇を添える。先端を舐めると、気持ちよさそうに嬌声が女の口から漏れた。その声に、単純にも下半身に血が巡った。元々性欲が薄い方だけど、最近忙しくてご無沙汰だった。だから、身体にもっと触れて、感じさせて、突き入れ、喘がせて、悦がらせたい。女の身体でジレンマに襲われる。
舌で這わせていた薄い肌から顔を離し、女を見下ろした。
「解いてよ」
呟いたカカシに女は目を丸くさせた後、肩を揺らして可笑しそうに笑い出した。
長い銀色の髪の間から、面白くなさそうに青い目で見つめている先でひとしきり笑った後、カカシを見上げる。
「解かなきゃ駄目ですか」
「そりゃあね。女の身体は嫌いじゃないけど」
「さっきは嫌いだって言ったじゃないですか」
「それとこれは別」
「じゃあこのままで」
カカシが女性の綺麗な顔立ちのまま眉を寄せた。黒い髪の女がうっとりとした。
「色っぽい。それにすごく綺麗。勿体ないと思いませんか?」
あんたほどじゃないから、そう答えるとカカシは覆いかぶさり耳朶を甘く噛む。女がぶるりと震えた。
「あんたも限界なくせに」
耳元で囁やくカカシも余裕がない。印を指で組んだ。
男の姿に戻った反動で、その重に安いベットが軋む。
元のカカシに戻った姿を目にしたイルカの満足そうな微笑みに、カカシは思わず目を眇める。
イルカは腕を伸ばしてカカシを強く抱き締める。唇を奪うと夢中で舌を絡めた。銀髪をまさぐるように触るイルカの手が、やがてカカシの背中に回り、やがてその背中に爪痕を残した。
「カカシさんまだ寝るつもりですか?」
イルカ先生の通る声は清々しい。
お互いに精魂尽きるまでセックスしてたんだから、まだ眠くて当たり前なのに。なのにイルカ先生のあまりにも元気はつらつな声に、布団の中から顔だけを出せば、やっぱりその通りで艶々とした顔をしていた。
「……おはよ」
「おはようございます」
眠そうな顔のままのカカシにキスをする。
昨日あれだけお互いに腰を使ったのに。シャワーを浴びたイルカ先生は使うことがなかったもう一組の布団をテキパキとたたんでいる。
「先生は下、痛くないの?」
「え、俺?ああ、普段から鍛錬を怠ってませんから。平気ですよ」
「初めてだったのに?」
「ええ、初めてだったんですけどね」
胡乱な眼差しを向けるカカシにイルカはあっけらかんと答えた。
今の姿から微塵も感じさせないが、口でしてくれ、優しくそして根気強く解すのを任せてくれた。そこから二人で求めあって。こんなにセックスが気持ちいいなんて初めて知った。満たされて満たし合って、またしたいって思えた。してる最中より、終わった後の方が幸福感を感じる。
そんな事を考えてる間にもイルカ先生は布団をたたみ終えて、自分の身支度に取り掛かっている。動きに無駄がない。
「ねえ先生」
「何ですか?」
鏡に向かって髪を手で結っているイルカは、鏡ごしにカカシの方を見た。
「里に帰ったらあんたどうするの?」
「え?」
「だから、この後」
その先は言わない。ずるく黙ったカカシを鏡ごしに見ながらイルカ先生は髪紐で、きっちりといつもの髪型を作る。
振り返った。
「カカシさんがよければ、また」
「ホント?」
「もちろん、本当です」
ふいと顔を背けるイルカ先生の耳は、赤い。
「じゃあさ、これはどっからが先生の思惑?」
「さあ、どこからでしょう」
後ろを向いたまま、イルカ先生は迷いなく答える。
そして、布団から起き上がり不満気にするカカシに振り返ったイルカは、悪戯な笑みを浮かべた。
<終>
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