丸っとそのまま

秘密にしようと言い出したのは、どっちからだっただろうか。

イルカとは、ナルトの上忍師になって直ぐに知り合い。
挨拶程度だったはずが、顔を合わす度に会話をするようになり、一緒に酒を酌み交わす間柄になり。
そこから身体を繋ぐまで然程時間はかからなかった。
自分もイルカもノーマルだったが、お互いに惹かれ求め合う気持ちは同じだったらしい。
忍びの世界であり得る状況だとしても、表だって堂々と交際する事が常識的に認められているわけではない。
自分は上忍である程度上の地位におり、下忍を部下に持つ上忍師で。イルカもアカデミーの教師という、子供を預かる職業に就いている。
お互いの事を思って、と言ったらただののろけになるかもしれないが、真剣に交際しているからこそ、公言する事はお互いに控えていた。

太陽が眩しい。
閉じていた瞼の裏に感じた光りに、浅い睡眠の中にいるカカシは、眉を寄せ身じろぎした。
日がかなり登っていると分かるが、眠気が勝っている。
でも今日はそこまで早く起きなくていいはずだ、と、うつらうつらと思いながら、イルカの身体を自分の腕の内に引き寄せる。
暖かい。
温もりや肌の感触が心地良い。
つい数時間前まで身体を繋ぎ、じっとり汗をかいていたはずなのに。
1週間ぶりと言う事もあってか。貪るようにイルカを抱いた。抱いても足らなくて。でもイルカはそれを許し、遠慮なくそれに甘える形になり、結局2人寝たのが夜明け近く。
その腕の中にいたイルカが、もぞりと動いた。
ん、と声を漏らしながら腕を動かし、
「だっ」
と短い声を発したのが聞こえると同時にイルカが勢いよく起きあがった。やば、と言う台詞も聞こえる。
「....イルカ先生もう行くの?」
目を擦りながら薄っすら目を開くと、
「あ、カカシさんはいいです。寝ててくださいっ....つ...」
腰を押さえるイルカに苦笑し、ごめん、と言えば。イルカは恥ずかしそうに笑顔を見せた。
「いや、いいんです。今日は身体を使うような授業ないですし、大丈夫ですよ」
こうなるのは目に見えていたのに。分かっていたのに。昨夜はお互いに自制が効かなかったのは事実だった。それが日が昇ったこの状況では恥ずかしさが勝ってしまう。照れた笑顔を見せるイルカを愛おしそうにカカシは眺めた。
この甘い空気をまだ満喫していたいが。
フルタイムで時間に常に縛られているイルカはそうはいかない。
「俺は行くんでカカシさんは適当に、」
「うん、分かってる」
全裸だったイルカの身体が見る見る内に服に纏われていくのを、目を細めて見つめながら。
勿体ないなあ、とそんな事を思いながらカカシは再び重くなってきた瞼に逆らう事なく閉じる。
そこから直ぐにイルカがばたばたと部屋を走り、玄関を飛び出した音が聞こえたが、カカシの意識は既に夢の中だった。

再びカカシの意識が戻ってきたのは、大音量で鳴る目覚まし時計のせいだった。
イルカがカカシから聞いた任務の時間から計算して目覚ましをかけたのだろうが。
有り難いが音がでかい。
カカシは布団からその目覚ましを止めると、起きあがった。
あれから3時間寝ていたらしい。
それでもまだ眠い。カカシはあくびをして。どうしようか考える。
自分を思ってイルカが目覚ましをセットした事を考えると。二度寝は躊躇われた。
カカシはのそりと起きあがると、シャワーを浴びに浴室へ足を向けた。


梅雨が明け。夏の蒸し暑さにカカシは顔を顰めながら道を歩く。
もうそろそろ蝉がけたたましく鳴き始めるのだろう。
それがないだけまだましだと、そう思いながら真っ青な空の下集合場所に向かった。


「何してんのかな、お前らは」
集合場所の手前にある道にあった茶屋で。
カカシを見たナルトとサクラが、驚きに目をまん丸くさせながらベンチから勢いよく立ち上がった。2人の手には食べかけのかき氷。
ベンチの横の木に背を預けて立っていたサスケは、ため息をこぼした。
その数秒後、ナルトが口に掻き込んでいたかき氷がそのまま喉に流れ、気管に入ったのか。ごほごほと蒸せ始める。
「だっ....こ、...カカ...ごほっ」
何か言おうとするも、蒸せて言葉になっていない。
その姿を呆れた顔で腕を組んだままじっと見つめて、カカシは頭を掻いた。
「....ま、俺がどうせ時間通りに来ないから?今日は暑いし。ここでちょっとかき氷食べてもバレないだろ。って...そんな感じ?」
見たまんまの見解を言えば、ナルトもサクラもばつが悪そうな表情に変わり、カカシから視線を外す。
サクラは何か言おうとして。そこで再び口を結んだ。眉を寄せ、うつむく。
「....すみません」
素直に謝る横で、ようやく咳が治まったナルトもは、
「こんなに早く来るなんて知らなか、いっ...っ」
サクラに構わず言い訳を口にしたナルトにサクラの足蹴りが飛び、さらに睨まれ。ナルトも口を尖らせたまま、
「悪かったってばよ....」
渋々そう口にした。
その部下の姿を眺めながら。カカシが組んでいた腕を解いた時、少し先の林で蝉が鳴き始めた。
とうとう夏がきたか。
カカシは内心ため息を吐き出しながら、神妙な顔をしている部下を見つめる。
自分が毎回遅刻しているのは事実で。よって部下を待たせているのも事実。
「こんだけ暑くちゃ、仕方ないって言えば仕方ないんだけどね」
そう口にしたカカシに、2人の顔が明るくなるも、
「でも気の緩みは忍びには厳禁だから。寄って今日は任務時間延長。あ、ちなみに今日の任務は畑仕事だから」
にっこり笑みを浮かべると、当たり前の様にナルトから怒号が飛んだ。


「大体今日は何だってこんな早く来たんだってばよ」
任務を終え、時間延長もしたおかげで日もとっぷり暮れた中。ナルトがカカシに聞いてきた。朝のかき氷の件は既に時効だと思っているところがナルトらしい。
それに呆れもするが。それに見合った仕事をした事はナルトの顔や格好を見れば一目瞭然だった。
土や汗で汚れたナルトを横目で見つめる。
昨日は。短期任務を終え、久しぶりにイルカの顔を見ることが出来た。
恋人らしい濃密な時間を過ごして、寝坊した。なんて口が裂けても言えるわけがない。
しかも相手はイルカの元生徒。
「んー、ま、色々あるわけよ、俺にも」
いつもの適当な答えに、するどいつっこみは来ず、へー、と相づちを返しされる。そこからナルトは背伸びをした。持っていたビニール袋ががさがさと音を立てる。
その中には茄子やピーマン。胡瓜。夏野菜が詰め込まれていた。
形が悪く商品にならない野菜。味は全く変わらない為、こうしておみやげとして貰う事は、少なくはなかった。
カカシももちろん、今回の依頼主の農家から野菜をもらっている。イルカのおみやげになるのだから、嬉しいと言えば嬉しい。
イルカの喜ぶ顔が目に浮かび、軽く持ち上げ袋の中を覗いた時、あれ、とナルトの呟く声が聞こえた。
顔を向ければ、ナルトはカカシに目を向けながら一歩こっちに近づく。
不思議そうな目でカカシ手元を見つめていた。
手には勿論、ナルト達と同じ野菜が入っている袋しか持っていない。
それなのに。ナルトはじっと、青い目を向け続けている。
「なに、野菜欲しいならあげるけど?」
言えばナルトは、瞬時に嫌そうな顔を作った。うげ、と声も漏らす。
「これ以上いるわけねえってば」
追加して言われ、カカシは内心首を傾げた。
「あ、そう」
と言った後もナルトの様子を見れば。さっきの様なガン見ではないものの、時折カカシに視線を向ける。それはやはり野菜を持つ自分の手元だ。
何か変なものでもついているのか。
カカシは視線を向けられている手を見つめるが、何もない。
気がつけば、ナルトの視線が手元から足元に移行していた。思わずナルトに向けられた自分の足を見る。が、何もない。
「ナルト、お前さ。さっきから何を見てるわけ?」
いい加減、と口を開いたカカシに。ナルトはんー、と言って返事はしたものの。
「いや、別に」
そんな言葉を返される。
「なに、ナルト。どうしたのよ」
サクラにも問われるも、同じように曖昧な言葉しかナルトは発しなかった。
受付に入って目に入った後ろ姿に、あ、とカカシは反応を示した。
イルカが立ったまま書類を見せながら話をしている。
受付の仕事はなかったはずだから、引継か何かの用でここに来ていたのか。
カカシが反応を示すと同時に動いたのは、勿論ナルトだった。わかりやすい嬉しそうな表情を浮かべるとぴょこんと一つ跳ね、
「イルカ先生!」
名前を呼んだ。
当たり前のようにイルカは反応し、いつものように、ナルトのように。元生徒に会える嬉しさに目を細め笑顔をーー。
想像した表情を、イルカはしなかった。
カカシは内心首を傾げる。
タイミング的に何か問題でもあったのだろうか。深刻な内容の話でもしていたのだろうか。
そう考えてみるも、イルカと話していた相手はそこまで驚いた顔をするわけでもなく。どちらかと言えば嬉しそうなナルトに微笑みを浮かべてさえいる。
勿論、飛びつくナルトは、その事に気がついていない。
漫画のように顔が真っ青になっている訳でもないから。イルカの動揺はカカシ以外は気がついていない。
自分としては、アカデミー勤務だったイルカにここで会えるのは嬉しい限りなのだが。同じ気持ちをイルカの表情からは感じることは出来ない。
どうしたんだろうか。
冷静にイルカの様子を眺めながら不思議思いながらも、カカシはイルカと距離を縮めた。
ナルトを身体で受け止め、腰の痛み耐えながら眉を下げたイルカは、苦笑いを浮かべながら、
「お疲れさまです」
とカカシに頭を下げた。
「ほら、お前ら。あそこに水があるから。飲んでいけ」
夏になると受付所に設置される給水器を、イルカは指さした。
サクラとサスケは素直にそちらに向かう。夕方で多少は涼しいが、暑いには変わらない。
イルカはカカシに向き直った。未だイルカの側から離れず、今日の任務を口にし始めたナルトの頭を撫でながら、
「ぎりぎりの時間まで任務だったんですね」
そう言われ、確かにイルカに伝えた時間よりも遅くなっている事を思い出す。
「ええ、今日は色々ありまして」
いつものように。ナルト繋がりのアカデミー教師と上忍師と言う間柄をアピールするかのように、他人行儀を混ぜながら、にこやかな笑顔を作る。
イルカもそこでいつものような笑顔をカカシに見せた。が、やはり少しぎこちない気がする。
どうしたの?と聞きたい気持ちを抑えながら、依頼主からもらった野菜話題に移り、イルカ先生ならどんな料理します?とか。ナルトは野菜食べないんで、カカシさんから言ってやってくださいよ、と。
当たり障りのない会話を続けていた。
そんな中、イルカの腰わまりにくっついていたナルトが、ふと離れた。
またあの表情だ。
カカシはナルトのその目にすぐに気がついた。
さっきまでひっついていた先のイルカの腰辺りをじっと見つめている。
そこから、カカシに視線は移った。
交互に見る、理由は一体なんなのだろうか。
訝しむカカシがふとイルカを見て、驚いた。
イルカのぎょっとした表情。
明らかに、動揺していた。ナルトのその動作に対して。
それは余計にカカシを混乱させる。
さすがに、どうしたの、と声をかけようと口を開こうとした時、
「俺...ちょっと用を思い出したので」
イルカは書類を持って頭を下げると急に背を向けた。
「あ、うん」
カカシはそう答える。
引き留めるつもりはなかった。
イルカなりに何か理由があってがと分かっていたから。その理由は思いもつかないが。後で聞けばいい。
そう思っていた。
「イルカ先生」
ナルトが呼び止める。
イルカは。
びくっとして、足を止め。何秒か躊躇った後、ゆっくりこっちに振り返る。
ぎこちない。不自然な動き。
「ナルト、悪いけど急いでるから、」
イルカが言い掛けた時、ナルトが腕を上げた。その腕を真っ直ぐカカシへ向け、指をさす。

「なあ、先生。あれイルカ先生のズボンだろ」

ひゅ、っとイルカが短く息を吸い込んだのが聞こえた。
顔色が一気に青ざめる。
カカシは、ナルトが真っ直ぐ指さしている、自分が履いているズボンに目を向けた。
イルカ先生の?
イルカの?
え?
確かに今日のズボンは履き心地がいつもと違うと思っていた。
でも。イルカのズボンだと一度も疑う事はなかった。
朝イルカの目覚ましに起こされ、シャワーを浴びた後も半分寝ぼけていた事は覚えていた。
イルカが出かけた後だから、床にあったズボンは間違いなく自分のだと、そう思いこんでいたから。
そこからイルカが寝坊して起きて、慌ただしく出て行った事も思い出す。
その時、イルカが自分のと俺のを間違えたーー?
カカシが思考を巡らす中、
「ば、馬鹿言うなよナルト。俺のをカカシさんが履いているわけがないだろう」
そう言ったイルカの声にカカシは顔を上げた。
明らかに狼狽している事を必死に抑えながら。イルカはひきつった笑顔を浮かべている。
どうやら、ナルトの言っている事は事実だと。判断する。
それを証拠に、ナルトは不満そうな顔をした。
「何言ってんだよ。俺が間違えるわけねーじゃん。これ、イルカ先生が破れたからって、自分で縫った所だろ」
新しいの買うの勿体ないって。俺にそう言ったの。覚えてねえの?
ナルトが真っ直ぐな目でカカシに近づき指さしたのは、ズボンのポケットだった。
言われてみれば。黒のズボンだと言うのに。紺色の糸で雑に縫いつけてある。
カカシは、戦忍と言うのもあり。古くなる前に、破れやダメージを負う為に新しくなるのが常で。どこかがほつれるまで履いた事一度もない。
でも、アカデミーで働くイルカは支給服を色あせても、多少古くなろうとも新調する事はなかった。
それを、ナルトは見ていて、覚えていたのだ。
カカシでさえ気がつかなかったナルトの鑑識力に内心感心する。
きっとそれはイルカに限定される事だと分かっていても。
「そう、だったか...俺は全然覚えてないし...」
動揺したままのイルカは、力なくそう言い訳を口にする。
そう、イルカはどの時点でかは分からないが。自分が履き間違えた事に気が付いていた。
背格好もそこまで変わらない為、しかも支給服である為。本人でなければ気が付かない。そう判断したから、着替える事なくこの時間まで過ごしていたのだ。
それで、これだ。
カカシは推測する。
七班率いる自分がまさかこの時間、たまたまイルカが受付に顔を出した時に来るとは思っても見なかったのだろう。
あの驚きっぷりを思い出すだけでもよく分かる。
バレるはずがない。
そう思っていたのに。
ナルトはいとも簡単にそれを見抜いた。
自分がイルカのズボンを履いていた事が、既にナルトに疑心を持たせる事にもなっていた。
しかし。
状況を理解しても。ここをどう自分が出ればいいのか。
イルカまでとはいかないが、困った事になっていると、そう思った。
ナルトの曇りない眼にさらされたイルカは、完全に困り果てている。
イルカの困る理由を知るわけがないナルトは、誤魔化すイルカが気に入らない、カカシがイルカのズボンを履いているのが気に入らない。そんな顔を向け続けている。純粋に。
その顔をナルトはカカシに向けた。
「なあ、先生。それイルカ先生のだろ。おかしいじゃん」
(で、こっちには抗議の目を向けるわけね)
澄んだ青い目を見下ろしながら、表情を変えることなくカカシはどうしたものかと考える。
「あー、うん。ま、そういう状況に迫られたって言うか」
「え?そういう状況ってなんだよ。俺そんな状況に一度もなった事ねーのに。どうやったらなるんだってばよ」
想像以上の台詞への食いつきに、カカシは眉を下げナルトを見た。
「いや、お前の場合そんな状況ならないと思うよ」
「なんでだよ。って事はさ。イルカ先生が履いてるの。あれはカカシ先生のだろ」
名探偵の如く。ナルトの推理が炸裂する。
(違うって言っていいんだよね...?)
そのカカシの間を、肯定と受け取ったナルトの眉がぐっと寄り、
「ズルいってば」
子供じみた台詞を吐いた。
「いや...ズルくないでしょ。イルカ先生が間違えただけなんだから...あ、」
言って、しまったと思う。
ナルトは口を尖らせた。
「間違えるってなんだよ。ずりー!」
「だからね、ナルト...」
嫌なループにはまりそうで。どうしたものかとイルカを見ても、自分以上に困惑しているのが手に取るように分かる。
そんな中、またナルトがずりーと連呼した。
「おかしいってば。なんでそんなイルカ先生と仲良くなってんだよ!」
「えぇ、そこ?」
「おい、ウスラトンカチ...そんな事はどーでもいいだろうが」
口を開いたのはサスケだった。
ひどく苦々しい表情をナルトに向けている。
カカシでさえ、この状況を打破するのはちょっと面倒くさいと感じていたのに。何故サスケが口を出してきたのか。
疑問に感じつつカカシが見つめても、苛立った表情にしか見えない。
「あぁ?何でだよ?」
不意に水を差すような台詞に、ナルトは反応した。
その反応は予想できたはずなのに。
サスケは、困った表情を見せた。
「え、な、何でって...それは...。...イルカとカカシが...どうだってとかは、だから、」
言葉を選びきれないサスケは更に困ったように、口ごもる。
「は?だから、どうでもよくねーって。サスケ、お前何が言いたいんだよ」
「.....っ」
困り果てた末、サスケはナルトを睨んだ。
「うっせー!てめえは鈍すぎるんだよっ」
うぜえ!
そう言い捨てて、サスケは受付所から飛び出していく。
サスケの隣にいたサクラが、眉を寄せた。
「もーーー!馬鹿ナルト!!そんなのそのまんまなんだから、丸っとそのまま理解してスルーしとけばいいのに!ナルトもナルトだけど先生達も先生達よ!」
怒った顔で紙コップを勢いよくゴミ箱に投げ入れる。
え、とイルカとナルトが同時に反応する。カカシも一緒にそう口にしていた。
「空気読めなさすぎ!」
ぷりぷり怒ったサクラはそう言うと、サスケの後を追うように部屋を出ていく。
酷い怒られように訳が分からないナルトは沈み。
それでも。
「そのまんまって...何だよ」
全く意味が分かってないナルトは。ぼんやりサクラが出て行った扉を見つめる。
(あーあ...)
息を吐き出しながらイルカを見れば。自分の失態でこうなったのだから、どうにもならないと、少し涙目になっているようにも見える。
しかし。
この部屋で意味が分かっていないのはナルトだけ。
だから尚更言えるのは。
誰も悪くない。
(...仕方ないよねぇ)
「ま、そう言う事だから」
受付業務の途中から固まったままの周りの人間に、にっこりとカカシは微笑んだ。
サクラの言った通り、丸っとそのまま理解してスルーしといて、と。否応ない空気を作ったカカシに。
イルカが遅れて気が付き。
「....すみません」
と、力なく誰に言うわけでもなく。俺の可愛い恋人は、赤らめた顔で小さく呟いた。

<終>
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