無邪気なあなた

「じゃあな、先生!」
ナルトが満腹で幸せそうな笑顔を浮かべながら片手を上げこっちに降り、イルカがそれに応えるように手を振り返した。カカシはその後ろでイルカと一緒に、ナルトの背中を見送る。
今日は前々から約束をしてあったみたいだが、あまりイルカにそう何度もラーメンを強請らなくなったのは成長しているからだと内心微笑むカカシに、イルカが振り返った。
「じゃあ、帰りましょうか」
にっこり微笑むイルカに、それだけで胸が高鳴るが、カカシはそれを見せずにうん、と頷く。並んで歩き出した。
恋人同士だが、その距離は程よく誰かが見たら、教え子繋がりの二人がただ話しながら歩いているだけでにしか見えないのは、付き合う前からこんな風に歩いていかたら。何もおかしいところはない。
付き合って欲しいと言ったのは自分からだ。
積極的だった訳ではなく、しばらく内に秘めていた気持ちで、前振りなく告白をし、受け入れられるとは思ってなかったから、ひどく驚いた。
だから、いいの?と確認する意味で聞けば、そんな感じがしていたので、とさらりと返された。顔や態度に出ていたのかと頬を赤く染めたカカシにイルカは笑顔を浮かべる。
実直でおおらかな人柄は第一印象の通りで、今もそうで、その人柄に惹かれたのだが、今まで見なかったイルカのそんなところに拍子抜けした。何と言うか、そこは想像とは違った。
すんなり同性である自分の告白を受け入れた割には男とは勿論、異性もそこまで経験がないと言うところとか。
惚れた弱みでそんなところがいいな、とか思っちゃう辺り、既に自分の方が分が悪い。
なんて思いながら並んで歩きながら、そっとイルカの顔を見た。
イルカは今日はアカデミー勤務だったからか、生徒の話を楽しそうにしている。そんなイルカに目を細めながら、思うのは。
なんというか、先に進みたいなあ、ということ。
自分から言ってもいいのだが、まだイルカから部屋に誘われる事はない。
イルカのペースに合わせたいのもあるし、明日は早朝から任務が入っているからそれ以前の問題だが。
ただ、付き合い始めてまだ二週間、身体から始まる関係しか持ったことがない自分にはどう進めたらいいのか分からない。
勿論、イルカを大事にしたいのは念頭にある。
ただ、この二週間、一緒に帰れたのは片手で数えるくらいしかないが、最初は、やっぱり手ぐらい繋ぎたい。
「ね、センセ」
カカシは周囲に人がいないのを見計らい、名前を呼びながらイルカの上着の袖を引っ張った。話をしていたイルカが言葉を止め、こっちを向く。イルカの黒い目かカカシを映した。
少しだけ、慣れない緊張が走る。えっと、とカカシは口にして、言い淀むのは、拒否をされるかもしれないという不安もあったから。カカシはイルカを見つめ返した。
「……あのさ、」
言いかけたカカシにイルカが手を伸びた。分かってくれたのかと思ったカカシの手に向かわず、顔に伸びる。両手で頬を包む様に触れ、え?と思った時にはイルカの顔が近づいていた。
口布越しの唇に柔らかいものが触れる。一瞬だったがはっきりと伝わり、でも不意過ぎて、イルカが顔から手を離した後も目が離せずにいた。
少しだけぽかんとしながら瞬きをするカカシに、
「明日の任務、ご武運を祈ってますね」
ふわりとイルカは微笑む。
まだ明るいし、ここは外で。ただ、手を繋いで欲しかっただけだったのに。
あまりにも不意打ち過ぎて、上手くリアクションさえとれない。それが自分らしくなくて。
ホントにこの人は、
ーー参ったな。
カカシは耳まで赤くさせながら無邪気な笑みを見せるイルカを見つめるしかなかった。


<終>

ここにイラストはありませんが、ありむらさんが描かれた口布越しのキスを拝見して浮かんだ話を書きました。イルカ先生からするのって、あまりないから、ドキドキする、、
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