すき 追記
日も暮れた夜道、カカシは歩きながら視線を前へ向ける。視界に入るのは、少し距離を置いて先を歩くイルカの後ろ姿。何も口に出さずとも、はっきりと怒っているのが空気からも伝わり、きっとそれはイルカは分かってそうしている。
要は、怒っているからで。怒り任せにずんずんと歩くイルカの背中を見つめながら、カカシはポケットから手を出し自分の後頭部を掻く。参ったね、とため息を吐き出せば、先行くイルカの足がぴたりと止まった。
それに反応してカカシも足を止め、イルカへ目を向ければ、その背中がくるりとこっちを向く。
背中で語っていた如く、憤りを含んだ表情で、
「何でついてくるんですか」
そう言われ、カカシは困った。
イルカが怒っているかと思い、報告を済ませてからイルカの帰りを待っていた。機嫌を直して欲しくて。
しかしイルカは待っていた自分を無視して通り過ぎ、歩き出すから、仕方なく自分はそれを放っておくことも出来ず、その後をついて行った。
なのに、そんな言葉。
「何でって、そりゃあ、先生が怒ってるからじゃない」
素直に言えば、イルカはむっとする。
「怒らせたのはカカシさんです」
そうれはそうだけども、とカカシは口を閉じた。確かに怒らせたのは自分だが、そんなに怒るとは思っていなかったし。そもそも怒らせるつもりなんて微塵もなかった。ナルトたちの近くでする事に、多少意地悪な気持ちがあったのは事実だ。
でも。ただ、自分はイルカとキスをしたかった。それだけだ。
その純情可憐なイルカも好きだが、いい加減許してくれないものかと、また内心ため息をつきながら、怒りを露わにしているイルカの顔を見つめ、どうしたもんかねえ、と心で呟いた時、それを表情に出したつもりもないが、イルカの目つきが鋭くなった。
「そんなに俺が面倒くさいなら、放っておいてください！」
突っぱねる強い口調に、普段沸点が高いのに、苛立ちを感じる。日頃から感情を表に出さない分、不機嫌な表情を見せる事もない。イルカが相手ならば当然で。
だが、苛立ちから思わず表情を消したカカシに、イルカがそれに気がき、一瞬怯んだ。
怯むくらいなら最初っから喧嘩を売るような言動をしなければいいのにと思うが、そこが自分とイルカの感情の起伏の違いだ。元々感情豊かなイルカに惹かれているのだから、そこをどうこうは思わない。
カカシは微かに首を傾げ、怖気づくイルカを静かに見つめながら、こんな喧嘩は不毛だとつくづく感じる。カカシは短く息を吐き出した。また銀色の頭をがしがしと掻き、イルカへもう一度視線を向ける。
「じゃあ、したいって言ったらさせてくれる？」
え？と聞き返され、だから、とカカシはまた口を開く。
「俺だって男だし、あんたが好きなの。先生とキスしたいって思うのは当然でしょ？」
少しでもイルカの緊張を解きたくて、出来るだけ優しく投げかければ、イルカはそんなカカシの台詞に、少し驚きながらも、素直に頬を赤く染めた。困ったように眉を寄せる。
「･･････今日みたいな場所じゃないなら」
小さく呟くイルカに、もう自分に対する怒りは感じない。歩み寄ろうとしているものの、思っていたより随分と子供っぽいイルカに自然と頬が緩んだ。カカシはイルカに歩み寄る。
「じゃあ、今してもいい？」
昼間のように、ナルト達がいるわけでもなく、こんな時間で辺りも暗く他の往来する人影もない。
優しく聞けば、予想してなかったのか、え、と言葉を詰まらせた。戸惑う顔が可愛い。
カカシは手を伸ばしそんなイルカの朱に染まった頬を指で撫で上を向かせる。
「ちょっとだけ。ね？」
囁きながら、カカシは顔を傾け、ゆっくりと唇を重ねた。
<終>
要は、怒っているからで。怒り任せにずんずんと歩くイルカの背中を見つめながら、カカシはポケットから手を出し自分の後頭部を掻く。参ったね、とため息を吐き出せば、先行くイルカの足がぴたりと止まった。
それに反応してカカシも足を止め、イルカへ目を向ければ、その背中がくるりとこっちを向く。
背中で語っていた如く、憤りを含んだ表情で、
「何でついてくるんですか」
そう言われ、カカシは困った。
イルカが怒っているかと思い、報告を済ませてからイルカの帰りを待っていた。機嫌を直して欲しくて。
しかしイルカは待っていた自分を無視して通り過ぎ、歩き出すから、仕方なく自分はそれを放っておくことも出来ず、その後をついて行った。
なのに、そんな言葉。
「何でって、そりゃあ、先生が怒ってるからじゃない」
素直に言えば、イルカはむっとする。
「怒らせたのはカカシさんです」
そうれはそうだけども、とカカシは口を閉じた。確かに怒らせたのは自分だが、そんなに怒るとは思っていなかったし。そもそも怒らせるつもりなんて微塵もなかった。ナルトたちの近くでする事に、多少意地悪な気持ちがあったのは事実だ。
でも。ただ、自分はイルカとキスをしたかった。それだけだ。
その純情可憐なイルカも好きだが、いい加減許してくれないものかと、また内心ため息をつきながら、怒りを露わにしているイルカの顔を見つめ、どうしたもんかねえ、と心で呟いた時、それを表情に出したつもりもないが、イルカの目つきが鋭くなった。
「そんなに俺が面倒くさいなら、放っておいてください！」
突っぱねる強い口調に、普段沸点が高いのに、苛立ちを感じる。日頃から感情を表に出さない分、不機嫌な表情を見せる事もない。イルカが相手ならば当然で。
だが、苛立ちから思わず表情を消したカカシに、イルカがそれに気がき、一瞬怯んだ。
怯むくらいなら最初っから喧嘩を売るような言動をしなければいいのにと思うが、そこが自分とイルカの感情の起伏の違いだ。元々感情豊かなイルカに惹かれているのだから、そこをどうこうは思わない。
カカシは微かに首を傾げ、怖気づくイルカを静かに見つめながら、こんな喧嘩は不毛だとつくづく感じる。カカシは短く息を吐き出した。また銀色の頭をがしがしと掻き、イルカへもう一度視線を向ける。
「じゃあ、したいって言ったらさせてくれる？」
え？と聞き返され、だから、とカカシはまた口を開く。
「俺だって男だし、あんたが好きなの。先生とキスしたいって思うのは当然でしょ？」
少しでもイルカの緊張を解きたくて、出来るだけ優しく投げかければ、イルカはそんなカカシの台詞に、少し驚きながらも、素直に頬を赤く染めた。困ったように眉を寄せる。
「･･････今日みたいな場所じゃないなら」
小さく呟くイルカに、もう自分に対する怒りは感じない。歩み寄ろうとしているものの、思っていたより随分と子供っぽいイルカに自然と頬が緩んだ。カカシはイルカに歩み寄る。
「じゃあ、今してもいい？」
昼間のように、ナルト達がいるわけでもなく、こんな時間で辺りも暗く他の往来する人影もない。
優しく聞けば、予想してなかったのか、え、と言葉を詰まらせた。戸惑う顔が可愛い。
カカシは手を伸ばしそんなイルカの朱に染まった頬を指で撫で上を向かせる。
「ちょっとだけ。ね？」
囁きながら、カカシは顔を傾け、ゆっくりと唇を重ねた。
<終>
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