カカイルワンライ「クリスマスまであと×日、アナタの気持ちが知りたい
居酒屋でイルカは生ビールを美味しそうに飲み干す。その姿をカカシが目の前で立て肘をついて眺めている先で、イルカは空になったジョッキを渡しながら追加の注文を店員に頼む。
「で、何の話でしたっけ?」
顔を戻しながら問われ、クラスの子が商店街の人に怒られたって話、と言えば、イルカは、思い出したのか、そうそう、と頷きながら呆れ顔をした。
「何度も何度も、買い物行く度に言われるこっちの身にもなってもらいたいですよ」
「先生は関係ないのにね」
苦笑いを浮かべれば、複雑な表情をイルカは浮かべる。
「そんな事も言ってられないんですよね。やっぱり」
なんだかんだで簡単に線引き出来ないと肩を竦めるイルカは教師の顔になっていて、自分もまた上忍師としての立場なのに、そこは素直に温度差を感じざるを得ない。カカシは黙って自分のジョッキを傾けた。
つい合い始めて一ヶ月。こうして一緒に酒を飲むのは久しぶりで、嬉しいのに、それが不意に顔に出てしまいそうで。
いや、出していいんだろうけど。まだ手探りな状態なのは正直なところだった。
惹かれたのは自分からだった。
最初、一目見た時には好みのタイプじゃないなあ、と感じた。それなのに、気が付けば目で追っている自分がいて。知らないところばかりなのに、その知らない一面を見ただけで嬉しかった。
鯛焼きは一度に二つ買って食べるくらい好きなところとか。
意外に料理が苦手だけど、頑張って弁当を作って節約しているところとか。ーー笑うと笑い皺が目の下に出来て可愛いところとか。
今まで自分の周りにいた女とは明らかに違う何かに惹かれているだと気が付くのに時間はかからなかった。
だから。
自分とつき合う事をイルカが頷いただけで嬉しくて。真面目な性格のイルカがそれなりに考えてくれているんだと思うと。今までの女のように中々簡単に手を出せない。
今こうして二人で飲んでいる事はデートに違いないんだろうけど、普段通りのイルカに、得意だったはずなのにその気にさせるムードに持っていけない。
多少酔いがまわり、顔を赤くしながら楽しそうに子供達の事を話すイルカの表情は魅力的だ。髪も高く括っただけで、気取る事もない、香水の嫌な匂いもない。メイクもしていないがその肌は健康的そのものだ。
最初の頃とはずいぶん縮まった距離は嬉しくないはずがない。
でも、せっかく今日はクリスマスなのに。当たり前だがクリスマスのクの字もイルカの口から出てこない。今日もクリスマスだからと意識した訳ではなく、たまたま互いに空いた時間がこの日で、自分が早く仕事が上がれたから。仕事柄仕方ないからそこは割り切っているが、少しくらい、それらしい事出来たらいいのに、と思うが、そこはどうやらイルカは違うらしい。
クリスマスと言うこともあって込み合いだした店の状況を目で見て、自分達は十分飲み食いしたんだと、そろそろ店をでましょうか、とイルカに促される。仕方ないとカカシはそれに素直に従った。
店を出ればそのまま分かれ道まで一緒に歩いてそこで別れる。それがいつものパターンだ。
暖簾をくぐって先に歩き出したイルカに続いてカカシも歩き出す。
つきあい始めた頃、手を繋ごうとしたら、イルカはすごく驚いた。そして、生徒やその保護者の目もありますから。そう口したイルカは本当にお困った顔をしていて、そう言われたら頷かないわけにはいかない。
並んで歩く距離は近くとも、ご機嫌にアカデミーの話をしているイルカをそっと覗き見れば、当たり前だがそんな自分の気持ちは知る由もなく楽しそうで。
こんな日ぐらいいいじゃなない。
なんて思うが、クリスマスに興味を持ったのはイルカに出会ってからで、それ以前はどうでも良かったのも事実だった。
ふと、話しているイルカがこっちへ目を向け、目が合った時、その黒い目が訝しむ。
「ちゃんと話聞いてます?」
不満そうな目を向けられ、カカシは慌てて笑って誤魔化した。
「聞いてるよ」
もうすぐ学期末で成績表を作らなきゃいけないんでしょ?
思考が逸れながらも、耳に入っていた言葉を繰り返すと、胡乱な眼差しを向けながらも、そうですけど、とイルカは認める。
イルカが思った以上に鋭いを思ったのは最近だ。見ていないようでちゃんと見ている。
その子供っぽい表情を見せる顔にあるのは黒く輝く目とふっくらとした唇。それらに簡単に目を奪われるが。
大事にしたい。
自分の心がそれにセーブをかける。
悶々とこんな事を考えてるなんて知られたら、嫌われるかもしれない。
いつものように、にっこりと笑みを作るカカシに、イルカが足を止めた。
分かれ道まではまだ少し先だ。
どうしたの?と聞けば、俯いていた顔をこっちへ向ける。
「少しだけなら、・・・・・・触ってもいいですよ?」
不意に、呟くように口にしたイルカ台詞に、カカシは目を丸くした。同時に簡単に理性が飛びそうになる。
でもそれってどういう意味なのか。
勘違いしたらぶん殴られる事間違いがない。
(・・・・・・って言うか反則でしょ)
顔を熱くしながら、カカシは真意が分からないもどかしさにぐっと眉根を寄せた。
クリスマスまであと0日。
<終>
「で、何の話でしたっけ?」
顔を戻しながら問われ、クラスの子が商店街の人に怒られたって話、と言えば、イルカは、思い出したのか、そうそう、と頷きながら呆れ顔をした。
「何度も何度も、買い物行く度に言われるこっちの身にもなってもらいたいですよ」
「先生は関係ないのにね」
苦笑いを浮かべれば、複雑な表情をイルカは浮かべる。
「そんな事も言ってられないんですよね。やっぱり」
なんだかんだで簡単に線引き出来ないと肩を竦めるイルカは教師の顔になっていて、自分もまた上忍師としての立場なのに、そこは素直に温度差を感じざるを得ない。カカシは黙って自分のジョッキを傾けた。
つい合い始めて一ヶ月。こうして一緒に酒を飲むのは久しぶりで、嬉しいのに、それが不意に顔に出てしまいそうで。
いや、出していいんだろうけど。まだ手探りな状態なのは正直なところだった。
惹かれたのは自分からだった。
最初、一目見た時には好みのタイプじゃないなあ、と感じた。それなのに、気が付けば目で追っている自分がいて。知らないところばかりなのに、その知らない一面を見ただけで嬉しかった。
鯛焼きは一度に二つ買って食べるくらい好きなところとか。
意外に料理が苦手だけど、頑張って弁当を作って節約しているところとか。ーー笑うと笑い皺が目の下に出来て可愛いところとか。
今まで自分の周りにいた女とは明らかに違う何かに惹かれているだと気が付くのに時間はかからなかった。
だから。
自分とつき合う事をイルカが頷いただけで嬉しくて。真面目な性格のイルカがそれなりに考えてくれているんだと思うと。今までの女のように中々簡単に手を出せない。
今こうして二人で飲んでいる事はデートに違いないんだろうけど、普段通りのイルカに、得意だったはずなのにその気にさせるムードに持っていけない。
多少酔いがまわり、顔を赤くしながら楽しそうに子供達の事を話すイルカの表情は魅力的だ。髪も高く括っただけで、気取る事もない、香水の嫌な匂いもない。メイクもしていないがその肌は健康的そのものだ。
最初の頃とはずいぶん縮まった距離は嬉しくないはずがない。
でも、せっかく今日はクリスマスなのに。当たり前だがクリスマスのクの字もイルカの口から出てこない。今日もクリスマスだからと意識した訳ではなく、たまたま互いに空いた時間がこの日で、自分が早く仕事が上がれたから。仕事柄仕方ないからそこは割り切っているが、少しくらい、それらしい事出来たらいいのに、と思うが、そこはどうやらイルカは違うらしい。
クリスマスと言うこともあって込み合いだした店の状況を目で見て、自分達は十分飲み食いしたんだと、そろそろ店をでましょうか、とイルカに促される。仕方ないとカカシはそれに素直に従った。
店を出ればそのまま分かれ道まで一緒に歩いてそこで別れる。それがいつものパターンだ。
暖簾をくぐって先に歩き出したイルカに続いてカカシも歩き出す。
つきあい始めた頃、手を繋ごうとしたら、イルカはすごく驚いた。そして、生徒やその保護者の目もありますから。そう口したイルカは本当にお困った顔をしていて、そう言われたら頷かないわけにはいかない。
並んで歩く距離は近くとも、ご機嫌にアカデミーの話をしているイルカをそっと覗き見れば、当たり前だがそんな自分の気持ちは知る由もなく楽しそうで。
こんな日ぐらいいいじゃなない。
なんて思うが、クリスマスに興味を持ったのはイルカに出会ってからで、それ以前はどうでも良かったのも事実だった。
ふと、話しているイルカがこっちへ目を向け、目が合った時、その黒い目が訝しむ。
「ちゃんと話聞いてます?」
不満そうな目を向けられ、カカシは慌てて笑って誤魔化した。
「聞いてるよ」
もうすぐ学期末で成績表を作らなきゃいけないんでしょ?
思考が逸れながらも、耳に入っていた言葉を繰り返すと、胡乱な眼差しを向けながらも、そうですけど、とイルカは認める。
イルカが思った以上に鋭いを思ったのは最近だ。見ていないようでちゃんと見ている。
その子供っぽい表情を見せる顔にあるのは黒く輝く目とふっくらとした唇。それらに簡単に目を奪われるが。
大事にしたい。
自分の心がそれにセーブをかける。
悶々とこんな事を考えてるなんて知られたら、嫌われるかもしれない。
いつものように、にっこりと笑みを作るカカシに、イルカが足を止めた。
分かれ道まではまだ少し先だ。
どうしたの?と聞けば、俯いていた顔をこっちへ向ける。
「少しだけなら、・・・・・・触ってもいいですよ?」
不意に、呟くように口にしたイルカ台詞に、カカシは目を丸くした。同時に簡単に理性が飛びそうになる。
でもそれってどういう意味なのか。
勘違いしたらぶん殴られる事間違いがない。
(・・・・・・って言うか反則でしょ)
顔を熱くしながら、カカシは真意が分からないもどかしさにぐっと眉根を寄せた。
クリスマスまであと0日。
<終>
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