必然
はたけカカシが女に不自由しないと言う噂は前からよく耳にしていた。
他国にも名前が知れ渡っていて実力もある忍びだったらそんな噂があってもおかしくないとは思っていたが。実際ナルト達の上忍師として顔を合わせるようになってからは、自分の中ではピンときてなかった。背丈はある方だが顔はほぼ隠されていて素顔なんて分かったものじゃないし何より受け答えが悪い。適当に返事しているような感じだったり、は?とぶしつけに返事をしたり。ただ、悪気がないのは分かっている。元々そんな性格なんだろう。
アカデミーでたくさんの子供たちや受付で様々な人間と話す機会があるから理解は出来るが、自分の中では噂ほどではないと感じたのが正直な感想だった。
自分には縁がない色気のあるくノ一と歩いているのを何度か見かけていたから、実際噂通りなんだろうが、どこがいいんだろうと内心疑問さえ感じていた。自分がもし女だったら。間違いなくアスマを選ぶだろう。面倒見も良く頼り甲斐がありそして強い。受付で話す時も明確な返答で話だって面白い。
あんな胡散臭い上忍を選ぶ理由が分からないから。もしかしてすごいセックスが上手いとかだろうか、なんて思ったりしたがそれもまた自分には縁がない事だ。仮にもしセックスが上手かろうがナルト達から聞く遅刻があり如何わしい本を人前で読んでいる相手なんかごめんだ。
そう思っていたかのに。
日が落ちてきた頃、報告所にアスマとカカシが入ってきた。
アスマが先にイルカの前に立った。いつも通り不備もなく何も問題もない報告書を受け取ると、ありがとな、と笑顔と共に声がイルカにかかる。いつものようにこちらからも労いの声を返し頭を下げて。次に順番に待っていたカカシが報告書を差し出した。
いつもながら感情が希薄なカカシは、露わな右目は眠そうに見えるだけで何を考えているのか分からない。
アスマと比べたら雲泥の差だ。
ただ文字は綺麗で、その綺麗な字で書き込まれた報告書に目を通していた時、ふとカカシの手がこっちに伸びた。
「なんか白いのがついてる」
ベストに付着した白い汚れを指差し不思議そうに口にするカカシにイルカは理解して、ああ、と相槌を打った。
「チョークです。今日はアカデミーで授業してたんで」
なんのことはないと説明したイルカの目の前で、カカシの表情がふと変わる。
「ああ、そっか。だからよく付いてるんだ」
カカシが笑った。
子供のような笑みだった。
明らかに目が緩み、右目しか見えていないのに。笑っているのがはっきりと分かる。
破顔したのを見たのが初めてだからじゃない。
ただ、笑顔を見た途端、今まで経験したことがないくらいに心臓がドクンと高鳴った。その高鳴りに、視界が一瞬ブレたような感覚に、引き攣るような声が出そうになり、思わず小さく息を呑んでいた。
そう。
驚くことに。
絶対にありえないと思っていた相手に。
見事に恋に落ちた瞬間だった。
他国にも名前が知れ渡っていて実力もある忍びだったらそんな噂があってもおかしくないとは思っていたが。実際ナルト達の上忍師として顔を合わせるようになってからは、自分の中ではピンときてなかった。背丈はある方だが顔はほぼ隠されていて素顔なんて分かったものじゃないし何より受け答えが悪い。適当に返事しているような感じだったり、は?とぶしつけに返事をしたり。ただ、悪気がないのは分かっている。元々そんな性格なんだろう。
アカデミーでたくさんの子供たちや受付で様々な人間と話す機会があるから理解は出来るが、自分の中では噂ほどではないと感じたのが正直な感想だった。
自分には縁がない色気のあるくノ一と歩いているのを何度か見かけていたから、実際噂通りなんだろうが、どこがいいんだろうと内心疑問さえ感じていた。自分がもし女だったら。間違いなくアスマを選ぶだろう。面倒見も良く頼り甲斐がありそして強い。受付で話す時も明確な返答で話だって面白い。
あんな胡散臭い上忍を選ぶ理由が分からないから。もしかしてすごいセックスが上手いとかだろうか、なんて思ったりしたがそれもまた自分には縁がない事だ。仮にもしセックスが上手かろうがナルト達から聞く遅刻があり如何わしい本を人前で読んでいる相手なんかごめんだ。
そう思っていたかのに。
日が落ちてきた頃、報告所にアスマとカカシが入ってきた。
アスマが先にイルカの前に立った。いつも通り不備もなく何も問題もない報告書を受け取ると、ありがとな、と笑顔と共に声がイルカにかかる。いつものようにこちらからも労いの声を返し頭を下げて。次に順番に待っていたカカシが報告書を差し出した。
いつもながら感情が希薄なカカシは、露わな右目は眠そうに見えるだけで何を考えているのか分からない。
アスマと比べたら雲泥の差だ。
ただ文字は綺麗で、その綺麗な字で書き込まれた報告書に目を通していた時、ふとカカシの手がこっちに伸びた。
「なんか白いのがついてる」
ベストに付着した白い汚れを指差し不思議そうに口にするカカシにイルカは理解して、ああ、と相槌を打った。
「チョークです。今日はアカデミーで授業してたんで」
なんのことはないと説明したイルカの目の前で、カカシの表情がふと変わる。
「ああ、そっか。だからよく付いてるんだ」
カカシが笑った。
子供のような笑みだった。
明らかに目が緩み、右目しか見えていないのに。笑っているのがはっきりと分かる。
破顔したのを見たのが初めてだからじゃない。
ただ、笑顔を見た途端、今まで経験したことがないくらいに心臓がドクンと高鳴った。その高鳴りに、視界が一瞬ブレたような感覚に、引き攣るような声が出そうになり、思わず小さく息を呑んでいた。
そう。
驚くことに。
絶対にありえないと思っていた相手に。
見事に恋に落ちた瞬間だった。
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