意外
ある日、先生の家で飲んでいたら、あれ、と不思議そうな顔をしてこっちを指さした。
「そこ、汚れてますよ」
何のことだと言われるままに指さされた自分のアンダーシャツへ視線を向けた俺は、ああ、と納得した。
「涎ですよ」
何のことはないと缶ビールを飲みながら返したら先生は、え?とますます不可解な顔をした。確かにその会話だけだったら上忍である自分の服に、しかもベストの下になるアンダーウェアの胸元あたりに涎の跡がついているのは不可解なのかもしれないが。話には続きがあった。
「子守の任務です。ほら里の外れ近くの農家の赤ん坊の」
そこまで言ったところで先生は理解したんだろう。ぽんと自分の手のひらを叩いた。
「ああ、初孫が生まれたって言う米農家の笹中さん」
「そう、そこ」
相槌を打つ俺に納得してビールを飲んでいた先生は缶ビールを不意に口から離す。
「でもそれってナルト達の仕事でしょう」
先生の台詞に俺は肩を軽く竦める。
「そりゃもちろん最初はアイツらにやらせたよ。でもさ、全然泣き止まなくて。仕方なしに俺が抱っこしたのよ」
はあ、と聞き入っているように頷く先生に俺はため息混じりに続けた。
「野犬や野猫相手だったらいくらでも挑戦させるけど人間の赤ん坊相手じゃあねえ」
顔を真っ赤にして全力で泣き続けている赤子を任務だからと部下だけに任せて見て見ぬふりは流石に出来なかった。
自分でも無理だろうと思ったのに。泣き止むから始末に追えなかったのも事実だが。
「じゃあカカシさんにだけ泣き止んだんですね」
「そ。残念なことに」
認めると先生はさらに感心したように黒い目を丸くした後相槌を打った。
「意外です」
なんて言われて思わず先生へ視線を向けるとその通りそんな顔をしているから、ピンとこなくて軽く首を傾げた。
そうかな、と言えば、そうですよ、と直ぐに返ってくる。
「だってカカシさんが赤ん坊をだっこする姿なんて想像だって出来ないのにしかもあやすのが上手いとか。てっきりそういうのは苦手とばかり」
苦手と言われ、心外だなあ、と言い返して軽く笑った。
「でも上手いわけじゃなくてたまたまだろうね。それに確かに得意ではないけど任務なんだから」
割り切った意見にも先生はまた、意外だなあ、としきりに感心した様子でビールを飲む。
Dランクの任務なんて手伝いばかりで子守だって例外ではない。よくある任務内容だ。
ただ、先生に意外と言われるのはこれが初めてではなかった。
ラーメンが好きな事も天ぷらが苦手だと知った時も。休みの日はゴロゴロしたいと言った時や同じテレビ番組が好きだった時も。
そしてナルト達を合格にした時も。
意外だと言われる度に不思議に思うから自分の印象ってどんなんだろうと思うこともあるが正直それは先生だってそうだ。
アカデミーの教師の鑑のような存在だとばかり思っていたのに、生徒に隠れてタバコを吸っていたりカップラーメンばかり食べる日々を送ったり酒なんか俺より強いし忍びなのに足音を気にする事なく立てる。
感情豊かかと思えば三代目の葬儀には涙さえ見せなかった。
それに女ならまだしも男である自分の告白に頷いたのも意外だ。
昨夜だって。俺の陰茎を根本まで咥え下から揺するようにゆっくり突き上げると先生は気持ちよさそうに甘い喘ぎ声を漏らしやがて鈴口から射精する。その光景は目に焼き付けたいくらいに甘美な姿で、陶酔し後を追うように中で果てる。
男なんて出してしまえば終わりだ。先生が締めつけるから出ちゃった、と残念だと素直に告げたら汗ばんで火照った頬をさらに赤くして不快そうに眉を寄せ、恥ずかしいから言わんでくださいと言う。
いやいやいや違うでしょ。ついさっきまで、俺の上に乗り腰を振り。快楽に夢中になり目の前であんな乱れた姿を晒しておいてそんな台詞に恥ずかしいと反応するとか。それが意外じゃなかったらなんだと言うんだ。
先生ほどじゃないと、意外性は山ほどあるうちの最後のことだけ口にして言ったらビールを飲んでいた先生の表情が不意に険しくなった。明け透けな台詞は先生は苦手だ。グーで殴られるのかもしれないと思った俺に、それを何故か寸前で堪えるようにぐっと口を結び、そしてこっちに視線を向ける。
「……あんま意地悪、言わんでください」
怒り出してもおかしくない顔をしたくせにさっきの表情とは打って変わって、しおらしく頬を赤く染めて恥ずかしそうにこっちを向くから。俺は思わず目を奪われる。
だから、意外なのはそーいうところなんだって。
分かってんのかな、イルカ先生は。
「そこ、汚れてますよ」
何のことだと言われるままに指さされた自分のアンダーシャツへ視線を向けた俺は、ああ、と納得した。
「涎ですよ」
何のことはないと缶ビールを飲みながら返したら先生は、え?とますます不可解な顔をした。確かにその会話だけだったら上忍である自分の服に、しかもベストの下になるアンダーウェアの胸元あたりに涎の跡がついているのは不可解なのかもしれないが。話には続きがあった。
「子守の任務です。ほら里の外れ近くの農家の赤ん坊の」
そこまで言ったところで先生は理解したんだろう。ぽんと自分の手のひらを叩いた。
「ああ、初孫が生まれたって言う米農家の笹中さん」
「そう、そこ」
相槌を打つ俺に納得してビールを飲んでいた先生は缶ビールを不意に口から離す。
「でもそれってナルト達の仕事でしょう」
先生の台詞に俺は肩を軽く竦める。
「そりゃもちろん最初はアイツらにやらせたよ。でもさ、全然泣き止まなくて。仕方なしに俺が抱っこしたのよ」
はあ、と聞き入っているように頷く先生に俺はため息混じりに続けた。
「野犬や野猫相手だったらいくらでも挑戦させるけど人間の赤ん坊相手じゃあねえ」
顔を真っ赤にして全力で泣き続けている赤子を任務だからと部下だけに任せて見て見ぬふりは流石に出来なかった。
自分でも無理だろうと思ったのに。泣き止むから始末に追えなかったのも事実だが。
「じゃあカカシさんにだけ泣き止んだんですね」
「そ。残念なことに」
認めると先生はさらに感心したように黒い目を丸くした後相槌を打った。
「意外です」
なんて言われて思わず先生へ視線を向けるとその通りそんな顔をしているから、ピンとこなくて軽く首を傾げた。
そうかな、と言えば、そうですよ、と直ぐに返ってくる。
「だってカカシさんが赤ん坊をだっこする姿なんて想像だって出来ないのにしかもあやすのが上手いとか。てっきりそういうのは苦手とばかり」
苦手と言われ、心外だなあ、と言い返して軽く笑った。
「でも上手いわけじゃなくてたまたまだろうね。それに確かに得意ではないけど任務なんだから」
割り切った意見にも先生はまた、意外だなあ、としきりに感心した様子でビールを飲む。
Dランクの任務なんて手伝いばかりで子守だって例外ではない。よくある任務内容だ。
ただ、先生に意外と言われるのはこれが初めてではなかった。
ラーメンが好きな事も天ぷらが苦手だと知った時も。休みの日はゴロゴロしたいと言った時や同じテレビ番組が好きだった時も。
そしてナルト達を合格にした時も。
意外だと言われる度に不思議に思うから自分の印象ってどんなんだろうと思うこともあるが正直それは先生だってそうだ。
アカデミーの教師の鑑のような存在だとばかり思っていたのに、生徒に隠れてタバコを吸っていたりカップラーメンばかり食べる日々を送ったり酒なんか俺より強いし忍びなのに足音を気にする事なく立てる。
感情豊かかと思えば三代目の葬儀には涙さえ見せなかった。
それに女ならまだしも男である自分の告白に頷いたのも意外だ。
昨夜だって。俺の陰茎を根本まで咥え下から揺するようにゆっくり突き上げると先生は気持ちよさそうに甘い喘ぎ声を漏らしやがて鈴口から射精する。その光景は目に焼き付けたいくらいに甘美な姿で、陶酔し後を追うように中で果てる。
男なんて出してしまえば終わりだ。先生が締めつけるから出ちゃった、と残念だと素直に告げたら汗ばんで火照った頬をさらに赤くして不快そうに眉を寄せ、恥ずかしいから言わんでくださいと言う。
いやいやいや違うでしょ。ついさっきまで、俺の上に乗り腰を振り。快楽に夢中になり目の前であんな乱れた姿を晒しておいてそんな台詞に恥ずかしいと反応するとか。それが意外じゃなかったらなんだと言うんだ。
先生ほどじゃないと、意外性は山ほどあるうちの最後のことだけ口にして言ったらビールを飲んでいた先生の表情が不意に険しくなった。明け透けな台詞は先生は苦手だ。グーで殴られるのかもしれないと思った俺に、それを何故か寸前で堪えるようにぐっと口を結び、そしてこっちに視線を向ける。
「……あんま意地悪、言わんでください」
怒り出してもおかしくない顔をしたくせにさっきの表情とは打って変わって、しおらしく頬を赤く染めて恥ずかしそうにこっちを向くから。俺は思わず目を奪われる。
だから、意外なのはそーいうところなんだって。
分かってんのかな、イルカ先生は。
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