口内炎
あ、と声を出したのは同時だった。
自販機で取り出し口から買った缶コーヒーを取り出したのはイルカで、
「カカシさんも?」
買った缶コーヒーを持ちながら聞くイルカに、カカシは、うん、と答える。ポケットを探り、財布をとりだした。小銭を入れ、同じようにあたたかいと表示されたコーヒーのボタンを押すカカシを見ながら、
「今日寒いですもんねえ」
まだ熱いコーヒーを啜りながら、そう口にしたイルカに、だよねえ、とまたカカシが返した。
自分は普段ポケットに手を入れ猫背で歩くから、その歩き方が寒そうだとはよく言われるが。イルカが寒い、なんて言っているのを聞いた事はほとんどない。
晴れているものの、今日は特に朝から冷え込んでいるのは確かで。雪が降ってないだけいい。
プルトップを開けながら同じ様にコーヒーを啜った時、いて、と口にしたイルカの声に、カカシは目を向けた。
「どーかしたの?」
台詞の通り、イルカは少しだけ痛がっているが、見た目怪我はない。不思議にそう問いかければ、イルカは苦笑いを浮かべた。
「口内炎が出来ちゃいまして」
最近ろくなもの食べてないからですかね、とイルカは情けない笑みで鼻頭を掻く。そーなの?と会話の流れから聞くも、独身男であればありがちな話だ。
ただ、外食がほとんどだったり、兵糧丸の栄養性はともかく、長期任務でろくなものを口にしない事もざらにあるが、自分は口内炎は出来た事がない。
「それって痛いの?」
興味本位に聞けば、イルカは出来てるであろう場所を口の上から指で押さえた。
「まあ、そうですね。ラーメンとか、熱いもの食べると結構しみるんですよ」
だからコーヒー飲んで痛かったのか、と学習するカカシの前で、イルカは口の中をもごもごさせる。舌で触っているのだろう。ちらとイルカの赤い舌が目に入った。
それを眺めながら、ふーん、と相づちを打ち、カカシはイルカに近づく。なんだろうと、そんな顔をしたイルカに構わず、口布を下げると唇を重ねた。
目のまん丸にさせるイルカの口内に、我が物顔で舌を差し入れると、口内を探った。
「んんっ、・・・・・・んんーっ」
舌の先で口内炎を舐めると、その痛みからなのか、この行為そのものに抵抗したいのか、たぶんどっちもだろう、手で固定された顎に、イルカがもがく。
唇を離せば、イルカはぽかんとしていた。が、真っ赤な顔がそこから更に赤みを増していく。
「な・・・・・・、にすんだあんたはっ」
予想していた以上の動揺を見せるイルカに、カカシは、ごめん、と笑った。
「それがどんな風なのかなって、気になったから」
「だからって、舐めなくても、・・・・・・っ」
ふるふる身体を震わすイルカは、耳どころか、首まで赤い。
悪かったなあ、と思うが、自分の興味を止める事が出来なかったのも事実だった。
そして思いの外イルカの唇が柔らかかったのも事実。
自分の満足した気持ちとは裏腹に変な奴に確定されるかと思ったのに。
「もう、やめてください」
赤い顔をしながら、睨まれるもそれだけで。馬鹿野郎とか、変態、とか。それ以上の責める言葉を口にしないイルカに、拍子抜けする。
同時にむくりと沸き上がるのはイルカへの興味だった。
それを察したのかイルカが、何ですか、と怪訝そうな顔向ける。
投げやりだが口調は既に怒ってはいない。
突然あんなことをすれば誰だって怒るだろうくらい自分でも分かっている。ただ、自分がこんな風に興味があるのはイルカにだけだ。
それをイルカに言うべきか悩むも、今じゃないだろうと思う。
だから、誤魔化すべく、
「何でもない」
と、カカシはニコリと微笑んだ。
<終>
自販機で取り出し口から買った缶コーヒーを取り出したのはイルカで、
「カカシさんも?」
買った缶コーヒーを持ちながら聞くイルカに、カカシは、うん、と答える。ポケットを探り、財布をとりだした。小銭を入れ、同じようにあたたかいと表示されたコーヒーのボタンを押すカカシを見ながら、
「今日寒いですもんねえ」
まだ熱いコーヒーを啜りながら、そう口にしたイルカに、だよねえ、とまたカカシが返した。
自分は普段ポケットに手を入れ猫背で歩くから、その歩き方が寒そうだとはよく言われるが。イルカが寒い、なんて言っているのを聞いた事はほとんどない。
晴れているものの、今日は特に朝から冷え込んでいるのは確かで。雪が降ってないだけいい。
プルトップを開けながら同じ様にコーヒーを啜った時、いて、と口にしたイルカの声に、カカシは目を向けた。
「どーかしたの?」
台詞の通り、イルカは少しだけ痛がっているが、見た目怪我はない。不思議にそう問いかければ、イルカは苦笑いを浮かべた。
「口内炎が出来ちゃいまして」
最近ろくなもの食べてないからですかね、とイルカは情けない笑みで鼻頭を掻く。そーなの?と会話の流れから聞くも、独身男であればありがちな話だ。
ただ、外食がほとんどだったり、兵糧丸の栄養性はともかく、長期任務でろくなものを口にしない事もざらにあるが、自分は口内炎は出来た事がない。
「それって痛いの?」
興味本位に聞けば、イルカは出来てるであろう場所を口の上から指で押さえた。
「まあ、そうですね。ラーメンとか、熱いもの食べると結構しみるんですよ」
だからコーヒー飲んで痛かったのか、と学習するカカシの前で、イルカは口の中をもごもごさせる。舌で触っているのだろう。ちらとイルカの赤い舌が目に入った。
それを眺めながら、ふーん、と相づちを打ち、カカシはイルカに近づく。なんだろうと、そんな顔をしたイルカに構わず、口布を下げると唇を重ねた。
目のまん丸にさせるイルカの口内に、我が物顔で舌を差し入れると、口内を探った。
「んんっ、・・・・・・んんーっ」
舌の先で口内炎を舐めると、その痛みからなのか、この行為そのものに抵抗したいのか、たぶんどっちもだろう、手で固定された顎に、イルカがもがく。
唇を離せば、イルカはぽかんとしていた。が、真っ赤な顔がそこから更に赤みを増していく。
「な・・・・・・、にすんだあんたはっ」
予想していた以上の動揺を見せるイルカに、カカシは、ごめん、と笑った。
「それがどんな風なのかなって、気になったから」
「だからって、舐めなくても、・・・・・・っ」
ふるふる身体を震わすイルカは、耳どころか、首まで赤い。
悪かったなあ、と思うが、自分の興味を止める事が出来なかったのも事実だった。
そして思いの外イルカの唇が柔らかかったのも事実。
自分の満足した気持ちとは裏腹に変な奴に確定されるかと思ったのに。
「もう、やめてください」
赤い顔をしながら、睨まれるもそれだけで。馬鹿野郎とか、変態、とか。それ以上の責める言葉を口にしないイルカに、拍子抜けする。
同時にむくりと沸き上がるのはイルカへの興味だった。
それを察したのかイルカが、何ですか、と怪訝そうな顔向ける。
投げやりだが口調は既に怒ってはいない。
突然あんなことをすれば誰だって怒るだろうくらい自分でも分かっている。ただ、自分がこんな風に興味があるのはイルカにだけだ。
それをイルカに言うべきか悩むも、今じゃないだろうと思う。
だから、誤魔化すべく、
「何でもない」
と、カカシはニコリと微笑んだ。
<終>
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