眼差し

 報告所に入った時、イルカは報告書を受け取る席にはおらず、奥の席で書類の整理をしていた。同じように山になった書類を仕分けしている中忍と談笑しながら、手を動かしている。聞かずとも口の動きを読めば内容は分かるが、それ以上にイルカの表情が物語っていて。カカシは順番を待ちながらそれを眺めた。
 初めてイルカと顔を合わせた時任務帰りのナルトやサクラ、サスケに囲まれながら。ナルト達が語る内容に喜び、笑い、そして残念そうな顔をし、叱る。そして最後に元教え子の成長に嬉しそうな顔を浮かべた。その姿を見ながら、喜怒哀楽がここまで顔に出る相手は初めててで、自分と対極と思うと同時に、忍びとしてどうなんだろうと思ったのは確かだ。
 そう、自分とは合わないと思っていたのに。
 たまたま顔を合わせたのは居酒屋だった。混み合う店内では席を選べなくて。隣に座り話をしたら意外にも話が合った。別に盛り上がったわけじゃないが決してまずい酒ではなく、何度か飲むうちに気がついたら自分がそういう目で見ていた。
 断られるのを覚悟して誘ったら、イルカは驚いたものの、頷いた。すんなり頷いたのに、あっちの経験は初めてだったり、あんなにはっきりと感情を顔に出すのに何を考えてるかわか分からないところがあるが、そこにも惹かれているのは確かで。
 そしてイルカはよく笑う。
 子供たちの前にいる時だけではなく、自分の前でも変わらない。二人休みの日は家でゆっくり過ごしながら、イルカは自分の横でテレビで再放送のドラマなんかで笑ったり泣いたりする。
 ───そして夜も。
 後ろから突き入れていた陰茎を引き抜き、イルカを仰向けにさせた。太腿を脚を広げさせ挿入しようと濡れそぼる陰茎に手を添えながらふと視線を上げた時、隠そうともしない。口には出さずとも物欲しそうな期待を含んだ顔でそれを見ていて。
 ぼんやりと思い出しながら見つめる先で、イルカが笑った。同期と可笑しそうに笑いながら、そしてその黒い目がふとこっちに向く。カカシを映した。
 視線がぶつかった瞬間、何故かあの表情が不意に重なり、カカシは見つめ返しながらゾクリと背中を震わせた。
 
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