眼差し
休憩を終え受付に戻るイルカの目に入ったのは、外を歩くナルト達の姿だった。廊下の窓から思わず声をかけそうになるも、その後に続くように歩いてきたカカシに気が付き、何となく止める。
中忍試験の事を気にしていないと言ったらそれは嘘で、これから任務に向かうのであろうカカシやナルト達の姿をイルカは見送る事を選んだ。
銀色の髪やその広い背中を見つめながらふと浮かんだのは、カカシと知り合った当初の頃だった。カカシは言わずと知れた里を誇る忍びだが、ナルトの上忍師となる前は面識はなく、ひどく緊張したのを覚えている。露わな右目は何を考えているのか分からなく、飄々とした態度は忍びらしいと言ったらそれまでだが、不安を覚えたのも確かだった。
それなのに、そんなカカシに特別な思いをなんで抱いてしまったのか。それなりに、恋愛をして結婚をして子供を持つ。そんな未来を描いていた自分が選んだのは、男で、そして相手はあのはたけカカシだ。
先のことは誰にも分からないもんだと、つくづく実感せざるを得ない。
今朝もまた、受付でカカシの対応をしたが、他人行儀な口調に、眠そうな眼差しに見つめられたが、それはいつもの事だった。
好意があると言ってきたのはカカシからだった。
冗談で言っているのかと最初は思った。戸惑いはしたものの、相手が男なのに、年甲斐もなくときめいたのは事実で、つき合い始めた今も、それは変わらない。それなりに理由がないと頷くわけがないのに、告白してきたのはカカシだったのにも関わらず、驚いた顔をして、そして嬉しそうに笑った。
たぶん、自分はそういうギャップに弱いのかもしれない。
カカシは自分の立場の事を考えてくれているからなんだろう、つきあい始めても、カカシは外で顔を合わせても以前と変わらない。外にいるときは、あくまで上忍と中忍の関係だ。確かに、ナルトや教え子にこの関係を知られるのは躊躇すると言ったらその通りで。有り難い事だとは思うが、家では出会った当初では想像も出来ないくらいに、甘い声で名前を呼ぶ。冷たくも見えるあの目で自分をじっと見つめ、そして時折幸せそうに、愛おしそうに目を細める。
自分のどこを好いてくれているのか、敢えて聞くわけにもいかないから、未だに分からないが、覆面の下に隠されている整った顔を女性が知らない訳がないし、名声もあれば尚の事モテないわけがない。受付やアカデミーの女性職員でさえカカシがくれば意識するのが分かる。それに気がつかないわけがないのに、カカシは素知らぬ顔でそれを受け流し、自分を選んだ。
こんな平凡な中忍の自分のどこがいいのか。
その疑問はいつも頭の中にある。
だから、どうせいつかは飽きて、自分の元から離れていってしまうのかもしれないと、そんな事を思えば胸が痛んだ。ただ、カカシの温もりを知ってしまった今、自分はそう簡単に離れられそうにない。
情けねえなあ、とため息を吐き出した時、視線の先にいたカカシがふと足を止め、振り返った。
まさか振り返るとは思わなくて。こっちに気が付いていたんだと、驚き少しだけ目が丸くなったイルカに、青みがかった目が優しく微笑む。普段からそんな事しないのに。瞬間、迂闊過ぎてイルカの頬が朱に染まれば、カカシは可笑しそうに、そして愛おしそうに、その目を再び緩ませた。
中忍試験の事を気にしていないと言ったらそれは嘘で、これから任務に向かうのであろうカカシやナルト達の姿をイルカは見送る事を選んだ。
銀色の髪やその広い背中を見つめながらふと浮かんだのは、カカシと知り合った当初の頃だった。カカシは言わずと知れた里を誇る忍びだが、ナルトの上忍師となる前は面識はなく、ひどく緊張したのを覚えている。露わな右目は何を考えているのか分からなく、飄々とした態度は忍びらしいと言ったらそれまでだが、不安を覚えたのも確かだった。
それなのに、そんなカカシに特別な思いをなんで抱いてしまったのか。それなりに、恋愛をして結婚をして子供を持つ。そんな未来を描いていた自分が選んだのは、男で、そして相手はあのはたけカカシだ。
先のことは誰にも分からないもんだと、つくづく実感せざるを得ない。
今朝もまた、受付でカカシの対応をしたが、他人行儀な口調に、眠そうな眼差しに見つめられたが、それはいつもの事だった。
好意があると言ってきたのはカカシからだった。
冗談で言っているのかと最初は思った。戸惑いはしたものの、相手が男なのに、年甲斐もなくときめいたのは事実で、つき合い始めた今も、それは変わらない。それなりに理由がないと頷くわけがないのに、告白してきたのはカカシだったのにも関わらず、驚いた顔をして、そして嬉しそうに笑った。
たぶん、自分はそういうギャップに弱いのかもしれない。
カカシは自分の立場の事を考えてくれているからなんだろう、つきあい始めても、カカシは外で顔を合わせても以前と変わらない。外にいるときは、あくまで上忍と中忍の関係だ。確かに、ナルトや教え子にこの関係を知られるのは躊躇すると言ったらその通りで。有り難い事だとは思うが、家では出会った当初では想像も出来ないくらいに、甘い声で名前を呼ぶ。冷たくも見えるあの目で自分をじっと見つめ、そして時折幸せそうに、愛おしそうに目を細める。
自分のどこを好いてくれているのか、敢えて聞くわけにもいかないから、未だに分からないが、覆面の下に隠されている整った顔を女性が知らない訳がないし、名声もあれば尚の事モテないわけがない。受付やアカデミーの女性職員でさえカカシがくれば意識するのが分かる。それに気がつかないわけがないのに、カカシは素知らぬ顔でそれを受け流し、自分を選んだ。
こんな平凡な中忍の自分のどこがいいのか。
その疑問はいつも頭の中にある。
だから、どうせいつかは飽きて、自分の元から離れていってしまうのかもしれないと、そんな事を思えば胸が痛んだ。ただ、カカシの温もりを知ってしまった今、自分はそう簡単に離れられそうにない。
情けねえなあ、とため息を吐き出した時、視線の先にいたカカシがふと足を止め、振り返った。
まさか振り返るとは思わなくて。こっちに気が付いていたんだと、驚き少しだけ目が丸くなったイルカに、青みがかった目が優しく微笑む。普段からそんな事しないのに。瞬間、迂闊過ぎてイルカの頬が朱に染まれば、カカシは可笑しそうに、そして愛おしそうに、その目を再び緩ませた。
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