耳心地

 「直ぐ書き終わるので待っててくださいね」
 昼飯を食べ終わって片付けも終わり(食器を洗ったのはイルカだが)、ゆっくり出来るのかと思った矢先にイルカはコタツの上に年賀状を出し始める。そう言われたら良いも悪いもないから。正座をして書き始めるイルカを背中を丸ながら黙って見つめた。
 ほとんどは書き終わっているものの、その束を見たら待ちぼうけなのには違いなく。
「先生まめだね」
 コタツに顎を置きながら言えば、ペンを走らせながらイルカが笑った。
「カカシさんにも書きますか?」
 不満が口調に出ていたんだろう。それを分かって冗談混じりに返される。
「いらないよ」
 休みの日には顔合わせるんだし。
 今度ははっきりと不満を含ませながらも言えば、イルカはカカシへ視線を向け黒い目を細める。
 イルカにしたら軽くいなしているだけなんだろうが。そんな顔を見せられたらもう何も言えない。
 と言うか。
 イルカと付き合い出して。持ち帰る仕事をこうして待っている事が多かったからなのか。待っていたいのに。イルカのペンを走らせる音を聞いていると眠くなると気がついたのは最近だ。
 ああ、本当に眠い。
 首元に顔を埋めてイルカの匂いを嗅ぐと安心する、それとはほど遠いけど。ペンの音だけじゃない。イルカと一緒に過ごす時に聞こえる音は何よりカカシを心安心させる。
 悔しいから、起きたら押し倒そうと心に決めながら。カカシはコタツの天板に頬をつけると重くなった瞼をゆっくり閉じた。
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