何気ない二人の会話「始まり」
待機所にいたのは、アスマや紅と顔を合わせたから。
落ち合う約束こそしないが、同じ上忍師として足並み揃えるわけではないが互いに自分の班の話をして。そこから一人建物を出て直ぐ、見かけたのはイルカだった。
いつものようにカカシがポケットに手を入れたまま歩く少し先を、別の道から歩いてきたイルカが先を歩く感じになり。たぶん、向こうはこっちに気が付いていない。だけど、カカシは口を開いた。
「イルカ先生」
名前を呼べば、黒いしっぽがくるりと振り返る。呼んだ相手がカカシと分かった途端、あ、と声を出す。僅かに驚く顔を見せたが、イルカは足を止めるとカカシにぺこりと頭を下げた。
「お疲れ様です」
「どうも」
挨拶をするイルカは少し歯切れが悪い。そう思いながらもカカシも挨拶を返す。何の用だろう、とそんな顔をするイルカに構わず歩み寄り、あのさ、と声をかける。ついさっき、数日前の中忍試験の件で上忍師の仲間からも釘を刺されたばかりだが。別に苦言を口にするつもりもない。
「この前の事なんだけど、」
当たり前だが、イルカはその言葉にも僅かに反応を見せた。
あまり知らないが、この先生の事だ。それなりに向き合うんだろうと思っていたのに。ひどくそわそわした感じで、えっと、を口ごもった。
「俺、ちょっと急いでまして、」
火急な用でも頼まれたのか。そう、とカカシは相づちをする。
「仕事の途中だった?」
素直に聞いたカカシに、イルカは複雑な顔を見せた。そこを言いよどむ必要があるのかが分からない上に、いや、と否定されてますます分からなくなる。だから、
「なに?」
眠そうな目を向けたままそう聞くと、困った顔でイルカは少しだけ唇を噛む。
別に困らせるつもりはなかったが。この人にその気がなけりゃ仕方がない。
こりゃ解放するしかないか。
そう思った時、お腹、と力弱く呟いたイルカの声と同時に。ぐうう、と鳴った音が何なのか。一瞬何か分からなくて、でも目の前のイルカへ顔を向ければ、健康的な肌色を朱に染めて耐えるような顔をしていて、そこでようやくさっきの音が、イルカの腹の音だと気がつく。
「・・・・・・あの、俺、朝飯食べてなくて腹が減ってて、だから、」
決まり悪そうにして説明しようとするイルカを見ていたら、肩の力が抜けた。いや、元々そこまで力は入ってなかったが、反りが合わないからと、そんな気持ちが向こうにあるとばかり勝手に思ってたから。お腹が空いて仕方がないだけとか。
拍子抜けした。何というか、予想外で。
でも、ああ、と納得感からそんな言葉を呟き。ふっ、と笑いがカカシの口から零れる。目元を緩めながらイルカを見ると、その反応にまた恥ずかしそうにしながらも、少し驚いているイルカの顔があって。カカシは笑った。口元に手を当てる。
「じゃあさ、一緒に飯でも食いに行こっか」
その誘いにも驚いた反応を見せたが、イルカは口を結び苦笑いを浮かべながらも、はい、とその口角を上げた。
カカシは素直に頷くイルカと、並んで歩き出す。
「何食べるの?」
聞けば、イルカはカカシに顔を向ける。俺定食屋に行こうと思ってたんですが、と返した。
「あと、ラーメンもいいですよね」
「ラーメンいいね」
カカシの言葉にイルカが笑顔になる。その顔を見たら、気持ちが暖かくなった。なんでか分からない。
それに、今まで他人といて感じた事のなかった和む空気に、こんな風に過去イルカと話した事もなかったのに。不思議だと思うがこんな事もあるんだと思う。
どんなラーメンにしようか話しをながら、二人は商店街の方へ向かうべく道の角を曲がった。
<終>
落ち合う約束こそしないが、同じ上忍師として足並み揃えるわけではないが互いに自分の班の話をして。そこから一人建物を出て直ぐ、見かけたのはイルカだった。
いつものようにカカシがポケットに手を入れたまま歩く少し先を、別の道から歩いてきたイルカが先を歩く感じになり。たぶん、向こうはこっちに気が付いていない。だけど、カカシは口を開いた。
「イルカ先生」
名前を呼べば、黒いしっぽがくるりと振り返る。呼んだ相手がカカシと分かった途端、あ、と声を出す。僅かに驚く顔を見せたが、イルカは足を止めるとカカシにぺこりと頭を下げた。
「お疲れ様です」
「どうも」
挨拶をするイルカは少し歯切れが悪い。そう思いながらもカカシも挨拶を返す。何の用だろう、とそんな顔をするイルカに構わず歩み寄り、あのさ、と声をかける。ついさっき、数日前の中忍試験の件で上忍師の仲間からも釘を刺されたばかりだが。別に苦言を口にするつもりもない。
「この前の事なんだけど、」
当たり前だが、イルカはその言葉にも僅かに反応を見せた。
あまり知らないが、この先生の事だ。それなりに向き合うんだろうと思っていたのに。ひどくそわそわした感じで、えっと、を口ごもった。
「俺、ちょっと急いでまして、」
火急な用でも頼まれたのか。そう、とカカシは相づちをする。
「仕事の途中だった?」
素直に聞いたカカシに、イルカは複雑な顔を見せた。そこを言いよどむ必要があるのかが分からない上に、いや、と否定されてますます分からなくなる。だから、
「なに?」
眠そうな目を向けたままそう聞くと、困った顔でイルカは少しだけ唇を噛む。
別に困らせるつもりはなかったが。この人にその気がなけりゃ仕方がない。
こりゃ解放するしかないか。
そう思った時、お腹、と力弱く呟いたイルカの声と同時に。ぐうう、と鳴った音が何なのか。一瞬何か分からなくて、でも目の前のイルカへ顔を向ければ、健康的な肌色を朱に染めて耐えるような顔をしていて、そこでようやくさっきの音が、イルカの腹の音だと気がつく。
「・・・・・・あの、俺、朝飯食べてなくて腹が減ってて、だから、」
決まり悪そうにして説明しようとするイルカを見ていたら、肩の力が抜けた。いや、元々そこまで力は入ってなかったが、反りが合わないからと、そんな気持ちが向こうにあるとばかり勝手に思ってたから。お腹が空いて仕方がないだけとか。
拍子抜けした。何というか、予想外で。
でも、ああ、と納得感からそんな言葉を呟き。ふっ、と笑いがカカシの口から零れる。目元を緩めながらイルカを見ると、その反応にまた恥ずかしそうにしながらも、少し驚いているイルカの顔があって。カカシは笑った。口元に手を当てる。
「じゃあさ、一緒に飯でも食いに行こっか」
その誘いにも驚いた反応を見せたが、イルカは口を結び苦笑いを浮かべながらも、はい、とその口角を上げた。
カカシは素直に頷くイルカと、並んで歩き出す。
「何食べるの?」
聞けば、イルカはカカシに顔を向ける。俺定食屋に行こうと思ってたんですが、と返した。
「あと、ラーメンもいいですよね」
「ラーメンいいね」
カカシの言葉にイルカが笑顔になる。その顔を見たら、気持ちが暖かくなった。なんでか分からない。
それに、今まで他人といて感じた事のなかった和む空気に、こんな風に過去イルカと話した事もなかったのに。不思議だと思うがこんな事もあるんだと思う。
どんなラーメンにしようか話しをながら、二人は商店街の方へ向かうべく道の角を曲がった。
<終>
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