何気ない二人の会話「先生」
最近のアイツらはどうですか。
なんとなく会話の流れで聞いた自分に、はたと気が付く。そんな事思うのはもちろん中忍試験の事があったからだが、もともと今日あった七班の任務の事を話してきたのはカカシだ。だから別にいいんだよな。そう思いながらカカシを伺い見れば、何のことはない、カカシは注文した焼き魚定食の味噌汁を啜っていて。そうだねえ、と間延びした声が返ってきた。
そこそこ頑張ってますよ、と言う台詞に安堵するのもつかの間、でもまあ、サクラがねえ。そう付け加えられ、イルカは、え?と聞き返していたのは、予想外だったから。
ナルトは言うまでもなく誰よりも手を焼いた生徒の一人で、サスケは何をするにも群を抜いていたが、普段から内に籠もり感情を露わにしない事は心配でしかなかった。
サクラはと言うと。
サスケの様に忍術に関して突起したものはなかったが、それは他の生徒も同じで。成績は常にトップで友達も多く、どちらかと言うと手が掛からない生徒だった。
なのに、なんで?
不思議に思うイルカを前に、カカシは秋刀魚の身を箸で器用に、丁寧に解すと大根おろしと一緒にそれを口に運ぶ。
箸の使い方もそうだが、きれいな食べ方するなあ、と自分自身魚を食べるのが好きでもそこまで上手でないから。そこに感心すれば、なんて言うのかなあ、と続けたカカシの言葉に逸れていた思考が引き戻される。
「チームワークを履き違えてる感じ?」
そこでカカシの視線がイルカへ向けられ、ぼんやりとした顔の自分が青みがかった瞳に映った。瞬きをする。
そうなのか?
すぐに一人で突っ走るナルトや単独行動しがちなサスケに比べたら、協調性は高い。カカシの言葉に自問するが、自分が全ての授業を受け持っていたわけではない。
「多感な時期ってのもあるんだろうけど」
そう口にしてカカシは白飯を口に入れる。
多感な時期、その言葉に思い当たるのはサスケだった。サスケは女子に人気があったが、サクラもまた同じように好意を寄せていた一人で。
思い当たった顔をしたのだろう。イルカを見て、カカシは僅かに目元を緩めた。
「協調性が有りすぎるのは、自分がないのと一緒だから」
ニコリと微笑むカカシの台詞に言葉が出ない。箸が止まってしまったイルカにカカシは続ける。
咄嗟の判断力は俺ら忍びにとったら生死に関わるからねえ。
箸を咥えながら呟くカカシに。
もし今のサクラに問題があるとしたら。僅かだが戦闘能力くらいなものだと思っていたから。
アカデミーに在籍していた時は常に優等生だったサクラに足りなかったものをカカシが既に見つけている事に。イルカは舌を巻く。
「・・・・・・すげえな」
思わず思考が漏れるかのように、呟いてた。
「何が?」
カカシに聞き返され、イルカは慌てて、いえっ、と首を横に振り、そこから食べかけの鉄火丼を掻き込み始める。
そんな上忍師に元生徒を担当してもらえて嬉しくもあり、羨ましくもあり。そして落ち込む。
「でも先生だってすごいと思うよ?」
眉を下げるカカシに、箸を止める。何がですか?と言えば、
「俺は三人で手一杯だから」
カカシにそう言われても簡単に納得できない。
「そんなのは慣れです」
どんぶり片手に不貞腐れた言い方をすると、カカシは、そうかなあ、と呟いた。
「だってアイツらにあんなに懐かれるってすごいと思うよ?」
カカシには適うわけがないと分かっているが。カカシの顔は冗談を言っている風でもなく至って真面目で。
そして、自分の顔を見つけた途端、カカシの元から顔を輝かせてこっちに走り寄ってくる子供達を忘れたわけではない。
「どうやったらあんな風に懐かれるか、今度コツとか教えてよ」
歳が多少近かろうが、カカシは里の誉れだ。それをこんな中忍に何を言い出すのか。それにコツなんてない。
何を馬鹿な事言ってるんですか。そう言おうと思ったが。
ね?とお願いするカカシの表情に当たり前だが邪気はない。誰もが憧れる忍びが自分なんかに教えを乞うとか。変な人だなあ、とイルカは思う。そもそも、カカシはとっくにナルト達に懐かれているのに。
ーーでも。嬉しくないわけがない。
「まあ、考えときます」
そう答えながら空になった丼をテーブルに置くと、カカシは嬉しそうな顔をする。
時計を見れば、昼休みの終わりが近い。
おばちゃん、ご馳走様、と口にすれば、イルカの元気な声が店内に響いた。
<終>
なんとなく会話の流れで聞いた自分に、はたと気が付く。そんな事思うのはもちろん中忍試験の事があったからだが、もともと今日あった七班の任務の事を話してきたのはカカシだ。だから別にいいんだよな。そう思いながらカカシを伺い見れば、何のことはない、カカシは注文した焼き魚定食の味噌汁を啜っていて。そうだねえ、と間延びした声が返ってきた。
そこそこ頑張ってますよ、と言う台詞に安堵するのもつかの間、でもまあ、サクラがねえ。そう付け加えられ、イルカは、え?と聞き返していたのは、予想外だったから。
ナルトは言うまでもなく誰よりも手を焼いた生徒の一人で、サスケは何をするにも群を抜いていたが、普段から内に籠もり感情を露わにしない事は心配でしかなかった。
サクラはと言うと。
サスケの様に忍術に関して突起したものはなかったが、それは他の生徒も同じで。成績は常にトップで友達も多く、どちらかと言うと手が掛からない生徒だった。
なのに、なんで?
不思議に思うイルカを前に、カカシは秋刀魚の身を箸で器用に、丁寧に解すと大根おろしと一緒にそれを口に運ぶ。
箸の使い方もそうだが、きれいな食べ方するなあ、と自分自身魚を食べるのが好きでもそこまで上手でないから。そこに感心すれば、なんて言うのかなあ、と続けたカカシの言葉に逸れていた思考が引き戻される。
「チームワークを履き違えてる感じ?」
そこでカカシの視線がイルカへ向けられ、ぼんやりとした顔の自分が青みがかった瞳に映った。瞬きをする。
そうなのか?
すぐに一人で突っ走るナルトや単独行動しがちなサスケに比べたら、協調性は高い。カカシの言葉に自問するが、自分が全ての授業を受け持っていたわけではない。
「多感な時期ってのもあるんだろうけど」
そう口にしてカカシは白飯を口に入れる。
多感な時期、その言葉に思い当たるのはサスケだった。サスケは女子に人気があったが、サクラもまた同じように好意を寄せていた一人で。
思い当たった顔をしたのだろう。イルカを見て、カカシは僅かに目元を緩めた。
「協調性が有りすぎるのは、自分がないのと一緒だから」
ニコリと微笑むカカシの台詞に言葉が出ない。箸が止まってしまったイルカにカカシは続ける。
咄嗟の判断力は俺ら忍びにとったら生死に関わるからねえ。
箸を咥えながら呟くカカシに。
もし今のサクラに問題があるとしたら。僅かだが戦闘能力くらいなものだと思っていたから。
アカデミーに在籍していた時は常に優等生だったサクラに足りなかったものをカカシが既に見つけている事に。イルカは舌を巻く。
「・・・・・・すげえな」
思わず思考が漏れるかのように、呟いてた。
「何が?」
カカシに聞き返され、イルカは慌てて、いえっ、と首を横に振り、そこから食べかけの鉄火丼を掻き込み始める。
そんな上忍師に元生徒を担当してもらえて嬉しくもあり、羨ましくもあり。そして落ち込む。
「でも先生だってすごいと思うよ?」
眉を下げるカカシに、箸を止める。何がですか?と言えば、
「俺は三人で手一杯だから」
カカシにそう言われても簡単に納得できない。
「そんなのは慣れです」
どんぶり片手に不貞腐れた言い方をすると、カカシは、そうかなあ、と呟いた。
「だってアイツらにあんなに懐かれるってすごいと思うよ?」
カカシには適うわけがないと分かっているが。カカシの顔は冗談を言っている風でもなく至って真面目で。
そして、自分の顔を見つけた途端、カカシの元から顔を輝かせてこっちに走り寄ってくる子供達を忘れたわけではない。
「どうやったらあんな風に懐かれるか、今度コツとか教えてよ」
歳が多少近かろうが、カカシは里の誉れだ。それをこんな中忍に何を言い出すのか。それにコツなんてない。
何を馬鹿な事言ってるんですか。そう言おうと思ったが。
ね?とお願いするカカシの表情に当たり前だが邪気はない。誰もが憧れる忍びが自分なんかに教えを乞うとか。変な人だなあ、とイルカは思う。そもそも、カカシはとっくにナルト達に懐かれているのに。
ーーでも。嬉しくないわけがない。
「まあ、考えときます」
そう答えながら空になった丼をテーブルに置くと、カカシは嬉しそうな顔をする。
時計を見れば、昼休みの終わりが近い。
おばちゃん、ご馳走様、と口にすれば、イルカの元気な声が店内に響いた。
<終>
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