カカイルワンライ「カカシさんの誕生日」
失敗したなあ。
そう思ったのはイルカと初めて顔を合わせた時。
「イルカ先生って女なんだ」
そう自分の口から出てしまっていたのは、ナルトからさんざん聞かされていた話からは女なんて微塵も思ってなくて。どちらかと言えば熱血教師なんだと思い込んでいたからだ。熱血教師と言えば男だろう、普通。
そもそもナルトもサスケも、そしてサクラまで女らしさを感じさせるような話題を提供してくれなかったのが悪い。
そう責任逃れの言い訳が浮かぶが、思わず口に出してしまった言葉を今更引っ込める事なんてできる訳もなかった。
イルカはカカシの目の前で一瞬驚いたものの、不快な表情を出すわけでもなく、ニコリと微笑む。よろしくお願いします、と丁寧な挨拶を口にした。
だからてっきり悪気は無かったとは言え自分の失言を無かったものにしてくれるんだ、ナルトから聞いていた通りさっぱりして理解のある人だと思ったのに、それは違った。
受付や報告所で顔を合わせれば笑顔を浮かべるが、目が笑っていない。他の上忍仲間にはにこやかな笑顔を向けるのに自分にはそれを向けてくれない。
あんな一言を根に持つとか。噂によらず結構執念深いタイプだったなんて。見かけによらないなあ、とカカシは木の枝の上から、生徒と笑いながら歩いているイルカを見つめる。化粧っ気もない顔に浮かべる笑顔は生徒と同じ、無邪気そのものだ。
だが、あの笑顔は未だ自分には向けられない。
あーあ。
小冊子を開きながらイルカを目で追っていれば、イルカがふと顔を上げる。黒い目がカカシを映した。
こっちの存在に気がついたらイルカに、ニコリと微笑むめば。イルカは気難しそうな顔をする。気難しいというかムッとするというか。その顔も悪くないなあ、と思うカカシに、取り敢えずと言わんばかりにペコっとイルカは頭を軽く下げると直ぐに視線は外される。
どんな女でもこっちが微笑めば大体のことは上手くいくのに。
イルカの後ろ姿を見つめながら、つれないねえ、とカカシはため息混じりに呟いた。
翌日、カカシは任務の済ませた足で商店街に向かう。
夕飯は適当にどこかで食べようか。惣菜もいいけど脂っこいものが多いし味も濃い。惣菜屋を横目に通り過ぎ、飲食店が立ち並ぶ方へ目を向けた時、商店街の隅にある出店にイルカを見つけた。簡易的に置かれた椅子に座っている。
隣の椅子に置かれいる買い物袋はイルカのだろう。袋からはネギや大根が顔をのぞかせている。今日ははやけに商店街が混んでいるから、きっと何か安かったりして色々買い込み、そしと休憩でもしているのか。
イルカ先生の作る料理は綺麗じゃないけど早くて美味いんだってば。
褒めているのか貶してるのかまあ前者だろうナルトの言葉をふと思い出す。
そーいう事ばっかり言うから男の手料理を振る舞ってるんだと思うじゃない、普通。
誰に言うわけでもない、今更ながら言い訳を頭に浮かべながら、横を通り過ぎれば、
「カカシ先生」
名前を呼ばれ、カカシは足を止めた。振り向けば椅子から立ち上がったイルカが、こっちを見ている。
こっちには気がついていない、そう思っていたし、気がついたとしても声なんかかけてこないとばかり思っていた。
内心驚くカカシに、イルカは歩み寄る。
「たこ焼き、食べますか」
たこ焼きを目の前に差し出され、カカシは瞬きした。
イルカから挨拶や仕事以外で話しかけられることはそうない。
それで、なんでたこ焼き?
見つめる先のたこ焼きの上では、出来立てなのだろう、鰹節がゆらゆら踊っている。
腹が減っているのは確かだが。物欲しそうな顔をしたつもりもないが、そんな顔に見えたのか。
「……えっと、なんで、たこ、」
「誕生日だってナルトから聞いたんです」
戸惑うカカシにイルカが被せるように言う。
誕生日。
確かに言われてみれば今日は誕生日だ。
でも。
過去に色んな形で祝ってくれる女はたくさんいたが。
たこ焼きを差し出されたのは初めてで。
いや、たこ焼きって。
そう思うのに。
イルカが持つたこ焼きは美味しそうで。
それに、なんか。
もしかしたら、……すごく嬉しいかもしれない。
て言うか、もう怒ってない?
いきなりすぎてカカシの思考がぐるぐる回る。
「食べないならいいです、私が食べます」
直ぐに答える事なく、たこ焼きをただ見つめているだけのカカシに痺れを切らしたのか。差し出しだたこ焼きをイルカがさっさと戻そうとするから、カカシは慌てた。
「食べますよ、食べるに決まってるでしょ?」
思わず差し出されたのにも関わらずたこ焼きのパックを奪い取れば、イルカは満足そうに頬を緩ませる。笑顔を浮かべた。
(……わ、)
初めて自分に見せたイルカの笑顔に、カカシの心臓がドキンと鳴る。
あり得ないと思うのに。目を奪われているのは確かで。
それを証拠と言わんばかりに、心臓が忙しなくドキドキと動き出す。
それに気がついていないだろう、その笑顔を前に目を見張るカカシの前でイルカは、半分こですよ、と子供のような無邪気な笑顔をカカシに見せた。
そう思ったのはイルカと初めて顔を合わせた時。
「イルカ先生って女なんだ」
そう自分の口から出てしまっていたのは、ナルトからさんざん聞かされていた話からは女なんて微塵も思ってなくて。どちらかと言えば熱血教師なんだと思い込んでいたからだ。熱血教師と言えば男だろう、普通。
そもそもナルトもサスケも、そしてサクラまで女らしさを感じさせるような話題を提供してくれなかったのが悪い。
そう責任逃れの言い訳が浮かぶが、思わず口に出してしまった言葉を今更引っ込める事なんてできる訳もなかった。
イルカはカカシの目の前で一瞬驚いたものの、不快な表情を出すわけでもなく、ニコリと微笑む。よろしくお願いします、と丁寧な挨拶を口にした。
だからてっきり悪気は無かったとは言え自分の失言を無かったものにしてくれるんだ、ナルトから聞いていた通りさっぱりして理解のある人だと思ったのに、それは違った。
受付や報告所で顔を合わせれば笑顔を浮かべるが、目が笑っていない。他の上忍仲間にはにこやかな笑顔を向けるのに自分にはそれを向けてくれない。
あんな一言を根に持つとか。噂によらず結構執念深いタイプだったなんて。見かけによらないなあ、とカカシは木の枝の上から、生徒と笑いながら歩いているイルカを見つめる。化粧っ気もない顔に浮かべる笑顔は生徒と同じ、無邪気そのものだ。
だが、あの笑顔は未だ自分には向けられない。
あーあ。
小冊子を開きながらイルカを目で追っていれば、イルカがふと顔を上げる。黒い目がカカシを映した。
こっちの存在に気がついたらイルカに、ニコリと微笑むめば。イルカは気難しそうな顔をする。気難しいというかムッとするというか。その顔も悪くないなあ、と思うカカシに、取り敢えずと言わんばかりにペコっとイルカは頭を軽く下げると直ぐに視線は外される。
どんな女でもこっちが微笑めば大体のことは上手くいくのに。
イルカの後ろ姿を見つめながら、つれないねえ、とカカシはため息混じりに呟いた。
翌日、カカシは任務の済ませた足で商店街に向かう。
夕飯は適当にどこかで食べようか。惣菜もいいけど脂っこいものが多いし味も濃い。惣菜屋を横目に通り過ぎ、飲食店が立ち並ぶ方へ目を向けた時、商店街の隅にある出店にイルカを見つけた。簡易的に置かれた椅子に座っている。
隣の椅子に置かれいる買い物袋はイルカのだろう。袋からはネギや大根が顔をのぞかせている。今日ははやけに商店街が混んでいるから、きっと何か安かったりして色々買い込み、そしと休憩でもしているのか。
イルカ先生の作る料理は綺麗じゃないけど早くて美味いんだってば。
褒めているのか貶してるのかまあ前者だろうナルトの言葉をふと思い出す。
そーいう事ばっかり言うから男の手料理を振る舞ってるんだと思うじゃない、普通。
誰に言うわけでもない、今更ながら言い訳を頭に浮かべながら、横を通り過ぎれば、
「カカシ先生」
名前を呼ばれ、カカシは足を止めた。振り向けば椅子から立ち上がったイルカが、こっちを見ている。
こっちには気がついていない、そう思っていたし、気がついたとしても声なんかかけてこないとばかり思っていた。
内心驚くカカシに、イルカは歩み寄る。
「たこ焼き、食べますか」
たこ焼きを目の前に差し出され、カカシは瞬きした。
イルカから挨拶や仕事以外で話しかけられることはそうない。
それで、なんでたこ焼き?
見つめる先のたこ焼きの上では、出来立てなのだろう、鰹節がゆらゆら踊っている。
腹が減っているのは確かだが。物欲しそうな顔をしたつもりもないが、そんな顔に見えたのか。
「……えっと、なんで、たこ、」
「誕生日だってナルトから聞いたんです」
戸惑うカカシにイルカが被せるように言う。
誕生日。
確かに言われてみれば今日は誕生日だ。
でも。
過去に色んな形で祝ってくれる女はたくさんいたが。
たこ焼きを差し出されたのは初めてで。
いや、たこ焼きって。
そう思うのに。
イルカが持つたこ焼きは美味しそうで。
それに、なんか。
もしかしたら、……すごく嬉しいかもしれない。
て言うか、もう怒ってない?
いきなりすぎてカカシの思考がぐるぐる回る。
「食べないならいいです、私が食べます」
直ぐに答える事なく、たこ焼きをただ見つめているだけのカカシに痺れを切らしたのか。差し出しだたこ焼きをイルカがさっさと戻そうとするから、カカシは慌てた。
「食べますよ、食べるに決まってるでしょ?」
思わず差し出されたのにも関わらずたこ焼きのパックを奪い取れば、イルカは満足そうに頬を緩ませる。笑顔を浮かべた。
(……わ、)
初めて自分に見せたイルカの笑顔に、カカシの心臓がドキンと鳴る。
あり得ないと思うのに。目を奪われているのは確かで。
それを証拠と言わんばかりに、心臓が忙しなくドキドキと動き出す。
それに気がついていないだろう、その笑顔を前に目を見張るカカシの前でイルカは、半分こですよ、と子供のような無邪気な笑顔をカカシに見せた。
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