カカイルワンライ「匂わせ」
イルカは報告書の確認をしながら、ふと視線を上げ目に入った人影に内心ため息を吐き出した。
時間帯にもよるが報告を担当する人数が通常は一人、若しくは二人だが込み合ってくればそれに応じて別の作業をしている者も報告所で対応をする。今はそれなりに混雑しているから三人。そこに任務を終えた者が続々と報告所に入ってくる。
そして自分の列に見えたのは銀色の髪の上忍だった。見間違えるはずがない。カカシだ。本人もただ黙って並んでいるだけなのにすぐ目につくのは。自分が意識しているからなんだが。
だって恋人なんだから仕方ない。
改めて認めた事に恥ずかしくなってくるが仕事中だからそこはぐっと堪えて冷静を保つ。機密性が高かったりランクが高い任務は火影に直接報告する事になっているがそれと同じ、責任は重大で。報告所で報告を受け取る者は任務が遂行出来たかどうか問題はなかったか、次の任務の予定を立てる上でも重要になってくる。確認漏れなどあってはならない。列にたくさん並んでいようが早くしろと上忍からの圧を感じようが、混んでいるからといって適当に確認が出来ない。書かれた内容にきちんと目を通し、チェックを入れ、火影の確認が必要がありそうな報告書は別に分類する。
時間差で三人目が報告所の担当に入った事もあり、自分の列より他の列の方が明らかに空いている。なのに、カカシは入って直ぐ他の列には目もくれず、真っ直ぐ自分の列の最後尾に並んだ。
それを視界に入れながら、おかしいなあ、とイルカは首を捻る。だってそういうのをやめて欲しいとカカシにお願いしたのはついこの間の事だ。そもそもつき合う時に、自分の状況や立場を説明した上でしばらくは公にしたくない、ともはっきり言った。カカシは納得したように頷いてくれていたはずだが。
幸いな事にまだ誰かがカカシとの仲に気がついている人はいないけど、こうあからさまな並び方をされては、困る。自分の立場などと口にしたが内心カカシの立場を守りたいのも事実だ。カカシは里一の忍びで、自分も含めてだが憧れいる忍びも少なくはない。きっと本人はそんな事を気にもしないだろうが、自分とつき合うことでカカシの悪いイメージを持たせたくない。
だから。
わかってねえなあ、とイルカは心の中で嘆息した。黙って報告の確認を続けるが、他の列に並んでいる人は少ないが、やはりカカシが動くことはなかった。代わりに他の上忍がそこの空いている列へ並ぶ。
カカシの順番がきて、イルカは確認済みの報告書を脇に置きながら、次の方、と言えばカカシは素直に報告書を差し出す。その顔をイルカはじっと見つめた。こっちとしては不満そうな眼差しを向けたつもりだが、カカシは至って普段通りで。分かっていないのが逆にイライラもするが、混んでいるからそうも言ってられない。イルカはカカシの報告書に目を通した。報告書には中には文字として判別できないようなものもある。読めないと言えば、読めないお前らが悪いと開き直るタチの悪い上忍もいるが、カカシの報告書は読みやすい。任務の全体を把握して的確に纏められた内容は上に立つ事に向いているんだと窺わせる。カカシは戦場でも部隊長を務めていたと聞いたことがあるから、事実そうなんだろうが。
報告書は完璧だが。そうじゃなくて。
イルカは確認し終えると、問題ありません、と判子を押しそして再び顔を上げた。優しそうな笑みを僅かに浮かべるカカシにうっかり心が絆されそうになるが、違うだろ、と自分にツッコむ。
上記の通り、カカシは状況の把握や認識に長けている。だから自分が言った事を理解しているはずなんだが。言おうか言うまいか、悩んでも仕方ない。つき合っている事がバレてないとは言え、言わないときっとまた次回も必ず自分の列に迷うことなく並ぶから。あの、とイルカは口を開いた。
「前も言いましたが、何で空いている列に並ばないんですか?」
笑顔で、自分の苛立ちが含まないように、他の上忍にも言う口調でイルカが聞くと、カカシは少しだけ驚いた顔をした。
いや、今更だろとその表情に言いたくもなるが、問いかけるんじゃなく他の列に並んでくださいって言えば良かったか、と思うイルカの前で、聞かれた事に、ああ、と呟き、そしてカカシは明らかに考えている表情をした。カカシなりに答えを考えている。こっちの意図が分かっていて、そしてこの場でどう答えるべきなのか、そんな感じだから。
ちょっと意地悪な質問だったかと少し後悔した時、カカシは斜め横に漂わせていた視線を、イルカに向ける。
「だって、ご褒美だから」
カカシは眉を下げて微笑んだ。
一瞬、何を言ったのか理解出来なかった。
自分の質問の答えに合っているものなのかすら分からなくて、数秒頭でカカシの台詞を考えた後、理解する。
(・・・・・・ごっ)
衝撃過ぎてその後の言葉は続かない。
それは自分とカカシの会話を耳にしていた周りも同じで。動揺を隠しているがイルカにもそれは十分伝わり、しかし、一番動揺しているのは誰でもない、自分で。
上手いことを言ったとそんな顔をしているカカシの前で、二人の仲を隠し通そうとしたのに。今までにないくらいにイルカの顔が真っ赤に染まった。
時間帯にもよるが報告を担当する人数が通常は一人、若しくは二人だが込み合ってくればそれに応じて別の作業をしている者も報告所で対応をする。今はそれなりに混雑しているから三人。そこに任務を終えた者が続々と報告所に入ってくる。
そして自分の列に見えたのは銀色の髪の上忍だった。見間違えるはずがない。カカシだ。本人もただ黙って並んでいるだけなのにすぐ目につくのは。自分が意識しているからなんだが。
だって恋人なんだから仕方ない。
改めて認めた事に恥ずかしくなってくるが仕事中だからそこはぐっと堪えて冷静を保つ。機密性が高かったりランクが高い任務は火影に直接報告する事になっているがそれと同じ、責任は重大で。報告所で報告を受け取る者は任務が遂行出来たかどうか問題はなかったか、次の任務の予定を立てる上でも重要になってくる。確認漏れなどあってはならない。列にたくさん並んでいようが早くしろと上忍からの圧を感じようが、混んでいるからといって適当に確認が出来ない。書かれた内容にきちんと目を通し、チェックを入れ、火影の確認が必要がありそうな報告書は別に分類する。
時間差で三人目が報告所の担当に入った事もあり、自分の列より他の列の方が明らかに空いている。なのに、カカシは入って直ぐ他の列には目もくれず、真っ直ぐ自分の列の最後尾に並んだ。
それを視界に入れながら、おかしいなあ、とイルカは首を捻る。だってそういうのをやめて欲しいとカカシにお願いしたのはついこの間の事だ。そもそもつき合う時に、自分の状況や立場を説明した上でしばらくは公にしたくない、ともはっきり言った。カカシは納得したように頷いてくれていたはずだが。
幸いな事にまだ誰かがカカシとの仲に気がついている人はいないけど、こうあからさまな並び方をされては、困る。自分の立場などと口にしたが内心カカシの立場を守りたいのも事実だ。カカシは里一の忍びで、自分も含めてだが憧れいる忍びも少なくはない。きっと本人はそんな事を気にもしないだろうが、自分とつき合うことでカカシの悪いイメージを持たせたくない。
だから。
わかってねえなあ、とイルカは心の中で嘆息した。黙って報告の確認を続けるが、他の列に並んでいる人は少ないが、やはりカカシが動くことはなかった。代わりに他の上忍がそこの空いている列へ並ぶ。
カカシの順番がきて、イルカは確認済みの報告書を脇に置きながら、次の方、と言えばカカシは素直に報告書を差し出す。その顔をイルカはじっと見つめた。こっちとしては不満そうな眼差しを向けたつもりだが、カカシは至って普段通りで。分かっていないのが逆にイライラもするが、混んでいるからそうも言ってられない。イルカはカカシの報告書に目を通した。報告書には中には文字として判別できないようなものもある。読めないと言えば、読めないお前らが悪いと開き直るタチの悪い上忍もいるが、カカシの報告書は読みやすい。任務の全体を把握して的確に纏められた内容は上に立つ事に向いているんだと窺わせる。カカシは戦場でも部隊長を務めていたと聞いたことがあるから、事実そうなんだろうが。
報告書は完璧だが。そうじゃなくて。
イルカは確認し終えると、問題ありません、と判子を押しそして再び顔を上げた。優しそうな笑みを僅かに浮かべるカカシにうっかり心が絆されそうになるが、違うだろ、と自分にツッコむ。
上記の通り、カカシは状況の把握や認識に長けている。だから自分が言った事を理解しているはずなんだが。言おうか言うまいか、悩んでも仕方ない。つき合っている事がバレてないとは言え、言わないときっとまた次回も必ず自分の列に迷うことなく並ぶから。あの、とイルカは口を開いた。
「前も言いましたが、何で空いている列に並ばないんですか?」
笑顔で、自分の苛立ちが含まないように、他の上忍にも言う口調でイルカが聞くと、カカシは少しだけ驚いた顔をした。
いや、今更だろとその表情に言いたくもなるが、問いかけるんじゃなく他の列に並んでくださいって言えば良かったか、と思うイルカの前で、聞かれた事に、ああ、と呟き、そしてカカシは明らかに考えている表情をした。カカシなりに答えを考えている。こっちの意図が分かっていて、そしてこの場でどう答えるべきなのか、そんな感じだから。
ちょっと意地悪な質問だったかと少し後悔した時、カカシは斜め横に漂わせていた視線を、イルカに向ける。
「だって、ご褒美だから」
カカシは眉を下げて微笑んだ。
一瞬、何を言ったのか理解出来なかった。
自分の質問の答えに合っているものなのかすら分からなくて、数秒頭でカカシの台詞を考えた後、理解する。
(・・・・・・ごっ)
衝撃過ぎてその後の言葉は続かない。
それは自分とカカシの会話を耳にしていた周りも同じで。動揺を隠しているがイルカにもそれは十分伝わり、しかし、一番動揺しているのは誰でもない、自分で。
上手いことを言ったとそんな顔をしているカカシの前で、二人の仲を隠し通そうとしたのに。今までにないくらいにイルカの顔が真っ赤に染まった。
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