カカイルワンライ「下心」

 よろしくお願いします。
 任務予定表を手渡したイルカの視線はカカシから逸らされすぐに近くに座っているアスマに向けられる。
 予定表を受け取り、読んでいる途中だった小冊子を開きながら、カカシはイルカを目で追った。
 おかしいなと思ったのは先週くらいから。気のせいだと思っていたけど、ついさっき見せたイルカの表情はいつもと同じように見えるけど、やはり妙に余所余所しい。
 自分が上忍でも挨拶はもちろん、顔を見かけると声をかけてきてくれる。そこまで共通点はないけど話しやすいから自分の中でも珍しい、中忍の知り合いが出来たと思っていたのに。
 そこまで気にしないようにしていたけど、気に留めてしまっているからなのか。だって今見る限りアスマを含め他のヤツには普通で。自分がなにか原因を作ってしまっているのかもしれないが、昔から仲間にも言われるが、自覚はない。そもそも相手が気分を害そうと気にもしていなかった。
 取りあえず考えて見るも思い当たる事はない。だって先週だって一緒に夕飯を食べて。その時もいつものように和やかな時間を過ごした。そう思っていたのは自分だけだっのか。
 気にしなくていいと分かっているのに。でも、自分には余所余所しい態度なのに、他の奴らには普通に笑顔を見せるのは、なんか、面白くない。
 そう思いながら、開いた小冊子へ目を落とす。
 待機所にいる上忍に任務予定表を渡し終えたイルカが頭を下げ部屋を出る。扉が閉まる音を聞いた後、カカシは小冊子を閉じると立ち上がった。
 
「先生」
 声をかけると、イルカが振り返る。カカシを見た。
「どうかしましたか」
 イルカは笑顔を浮かべるが。気まずそうな表情を作らないようにしている。それは自分に取ったら一目飄然で。どうしたもんかねえ、とカカシは内心ため息を吐き出しながら、イルカを見つめた。
「寝不足なの?」
 ついさっき、聞こえていたアスマと会話していた内容を口にすれば、イルカは少しだけ驚いた顔をした後、苦笑いを浮かべた。ええ、まあ、と頷く。
「テストを作るのに手間取っちゃって」
 疲れてるから寝つきが悪いのかもしれないです。
 アスマにも言った、同じ理由を口にする。確かに、少し疲れているように見えるイルカは、実際そうなんだろうが。やっぱり何か誤魔化しているようにも見える。でも、そんな事で苛立つのは何でなのか。
 その苛立ちを誤魔化したくて、そっか、と呟きながら、カカシはポケットから手を出し、髪を無造作に掻く。
「じゃあ一緒に寝てあげよっか」
 意地悪く言ったのは態とだ。イルカなら、その手の揶揄は苦手で、きっと困った顔をするだろう。
 そう思っていたのに。
 え、と呟き、少しだけ目を丸くした後、イルカの頬が赤く染まった。
 カカシは目を見開く。
(・・・・・・わ)
 そんな反応するなんて。予想外で。
 そーいう事なのかと合点するも頭が追いつかない。
 目を見張る。
 耳まで赤くなったイルカを見つめながら、何気なく発した言葉がじわじわと下心に変わっていくのをカカシは感じていた。
 
 
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