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カカイルワンライ「二十歳」
居酒屋で待ち合わせをしたのは久しぶりだった。
先に来ていたイルカは先にビールを飲んでいて、カカシもビールを店員に頼む。
「今日も無理かと思ってました」
自分の任務が長引いたり、イルカが残業になってしまったり。ようやく落ち着いて顔を合わせたのは確かに久しぶりで。そうだね、と言ってカカシは苦笑いを浮かべた。
「盛り上がってるね」
生ビールのジョッキを傾けながらお座敷席で騒いでいる若い客へ目を向ければ、
「なんか、二十歳になったばかりで酒が楽しいみたいですね」
「へえ」
酒で少し赤くなった顔でイルカが言い、そんなものなのかと、カカシは枝豆から実を取ると口に入れる。
「へえって、カカシさん。もしかして成人待たずに飲んでたんでしょう」
イルカの指摘にカカシは素直に笑顔を見せた。酒には興味はそこまでなかったが、仲間に誘われるままに成人する前に口にしていたのは確かだ。
楽しそうに酒を飲んでいる客へ目を向け、確かに飲んではいたが、楽しい酒を覚えたのは最近だ。あの頃は、ただあの世界が自分の全てで。自分がまさか上忍師になるとも思っていなかったし、何より誰かを好きになるなんて。微塵も思わなかった。
自分の人生は決まっていると思い込んでいたから。
(……分からないもんだねえ)
ジョッキを傾けながらカカシはイルカを見つめる。
「先生は二十歳の時ってあんな感じだったの?」
イルカにしてみたらたかだか数年前の事だが、興味本位から聞けば、少しだけ思い出すような顔をして目の前の刺身を口に入れた。
「どうだったかな。俺あの頃は、確か教員になったばかりだったんですよね」
もぐもぐと口を動かしながら、視線を斜めに漂わせる。
「だけどまだ任務も兼任してて、すっげー忙しくて仕事と任務に追われてたら彼女に振られちゃって」
がっくりしながら友達と酒飲んだ記憶があります。
笑い話に出来るのは昔の話だからだ。
軽く笑いながら、イルカがふとカカシを見つめる。
そこから見せたイルカの表情に、迂闊に素の反応を見せていたことに気がつく。
普段から感情を悟られることはないし、見せるつもりがなかった。イルカに過去恋人がいてもおかしくないのに。
取り敢えず、自分見せた反応に素知らぬふりをすることを決めてジョッキを傾けるカカシに、イルカはしばらく黙っていたが。
「カカシさん、もう勘定しましょう」
まだ一杯しか飲んでない中途半端な時間にそんな事を言うから、驚いた。
自分が話をして振っておきながら嫉妬を露わにした呆れたのかと弱腰になれば、
「俺、シたくなっちゃいました」
恥ずかしそうに、にへらと笑うイルカの笑顔にその真意を知る。
心臓がドキリと鳴った。
「……あなたねえ」
と顔を赤らめながら言うものの、滅多に見せないイルカの誘いに嬉しくないはずがない。
口元を手で隠しながら言おうが、またしてもそれがしっかり顔に出たんだろう。
イルカは白い歯を見せて笑った。
<終>
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