kodou⑤

 口づけを交わしながら脱ごうとする服の擦れる音が部屋に響く。
 ベストを外しアンダーウェアを脱ぐとカカシは床に捨てる。同じように上着を脱ごうとしていたイルカと目が合った。余裕があるようでない、緩く笑みを浮かべるカカシは酷く淫靡で。カカシが腕を伸ばし、イルカの服を取り去ると同じように床に捨てる。
 布団の上に押し倒し噛みつくようなキスをした。両手でカカシの手がイルカの頬を包むようにして、深く口付ける。それに必死についていこうとするが、溢れた思いが沸き立つばかりで。それでもカカシは優しく受け止めるようにイルカの舌に自分の舌を絡めた。
「……好き」
 唇を浮かせて言ったカカシの言葉に、今まで我慢していた感情が溢れ出した。
 イルカの目に涙が浮かぶ。
「好きです……、俺も、カカシさんが好きなんです」
 覗き込むように見つめるカカシに、涙を滲ませながら間近で見つめ返す。
 本当はずっと言いたかった。いつからから。気がついたら簡単に吹っ切れないくらいに好きになっていた。自分からカカシが距離を取っても、心の奥でカカシとこうなりたいと望んでいた。それを初めてカカシに吐露する。じっと青みかがった目が泣きそうになっている自分を映した。
「俺もずっとあなたが好きだった」
 返される言葉に心が震えた。嬉しさにまた目が涙で滲むイルカにカカシは口付けた。
 愛撫を繰り返しながら、カカシはイルカの陰茎へ手を伸ばす。緩く勃ち上がってはいるがまだ柔らかいそれを手のひらに包み上下に扱いた。先走りが零れぬめりが加わる。カカシがその場所を見つめ薄く微笑んだのが見えた。
 自分のそれを見て微笑まれて訝しむように、頬を赤らめたままイルカは僅かに片眉を上げる。
「何ですか」
 聞くとふとカカシの目が上がりイルカを見た。目元を緩める。
「感じてくれてるのが嬉しいの」
 俺の手で。少し寂しそうな、それでいて嬉しそうに。見られているのはあそこで自分なのに。ぎゅう、と胸が苦しくなった。恥ずかしさに視線を下にずらすとカカシの陰茎もまた、下着の上からでも分かるくらいに固く張りつめていて、記憶にあるカカシのそれに期待と嬉しさで心臓が高鳴る。その場所へイルカは手を伸ばした。布越しに熱を持つ陰茎を指の腹で軽く擦ると、カカシの身体がぴくと動いた。イルカは口を閉じ喉を上下させる。
「・・・・・・俺も同じです」
 口を開いてゆっくりとカカシへ視線を戻す。
 カカシは、少しだけ驚いた顔をした後、ふにゃりと眉を下げ微笑んだ。

「もっと尻、上げて」
 カカシの言葉に真っ赤にした顔のままイルカはぎゅっと目を閉じた。慣らしたいからとカカシに言われるままに四つん這いになり尻をカカシに向け身を任せているが、指一本から始まり、そこから執拗にゆっくりと中を広げられ、その圧迫感を苦しさに布団に顔を埋める。そこはローションを塗られべとべとで滑りよくカカシの固くて長い指がぬるぬると中を押し広げた。
「・・・・・・っ、んっ・・・・・・あっ」
 ちょっと前からカカシの指が動く度に背中に甘い痺れのようなものが走り、声が勝手に漏れる。羞恥に耳を塞ぎたくても秘部に意識が集中して上手くコントロールが出来ない。
 そしてこんな格好。
 顔から火が出そうだった。
 女体化していた時は、挿入せずにこんな格好を強いられた事はなかった。
 カカシの指がある箇所をなで上げるように擦る。イルカがの身体がびくびくと跳ねた。思わず布団に埋めていた顔が上がる。
「ひゃ、あっ、・・・・・・え?」
 イルカの反応をカカシが後ろから見ていて知らない訳がない。やだ、と口にしたのに、カカシはその場所をゆっくりと何度もまた擦る。下腹部を煽るような今まで感じた事のない快感に困惑すした。我慢しようと思っても無理だった。増やされた指が中を蠢くようにしてまた同じ箇所を責める。
 涙がイルカの目に滲み、堪らずイルカは首を捻りカカシへ顔を向けた。
「カカシさ、それ駄目・・・・・・っ、おねが、もう、抜いて・・・・・・っ、」
 真っ赤な顔で涙で目を潤ませながら懇願するも、カカシは苦笑いを浮かべた。
「うん、ごめん。分かってる。でももうちょっと待って。後で苦しい思いさせるの嫌だから」
 だから、我慢して?
 涙目になりながら、カカシのその言葉が、自分を思う言葉だと理解する。初めてだと言う事を知っていて、無理強いさせまいとするその気持ちに、カカシの表情にこんな状況なのに胸を打たれた。だらしなく開く口をぎゅっと結びイルカはこくりと頷く。しばらくしたら、ようやくカカシの指がずるりと抜かれた。

 女体化で感じた時より、強烈にカカシを感じた。それは受ける場所の違いか何なのかは分からない。でも、カカシの指によって解かれたそこは多少苦しかったが痛みなくカカシを受け入れる事が出来た。
 逆にカカシが苦しそうに眉根を寄せ、腰を動かす度に荒い息を吐き出す。額には薄っすらと汗が滲んでいた。
 指で感じた敏感な箇所をカカシの陰茎に刺激されそれは指とは全く違った。内部が熱くなる。
「すご・・・・・・」
 カカシがぽつりと熱っぽく呟く。伏せていた目をカカシへ向けると、イルカを見下ろしながら、薄く微笑んだ。
「ね、先生。どうしよう、俺もうイっちゃうかも」
 腰を揺すり上げながら困ったように微笑まれ、それが何故か泣きたくなるくらいに幸せに感じた。初めて感じた幸福感だった。
 イルカは僅かに屈んだカカシに腕を伸ばし手で頬に触れる。
「・・・・・・いいですよ」
 目を細めて微笑むと、カカシが白い頬を赤くさせながら目を見開いた。そして少しだけ困ったように笑い、そこからイルカに覆い被さり眉根を寄せながら律動をゆっくりと早める。
 カカシが中で果てるのを感じた時、背中がぞくりと震えた。同時に満ち足りた気持ちがそこには存在していた。イルカは首にまわした腕に力を入れた。


 薄っすらと太陽の光を感じゆっくりと目を開けるとカカシがこっちを見ていた。
 縦肘をついて、寝ていた自分をいつから見ていたのか。
「カカシさん……?」
まだ眠い目をこすり顔を上げたイルカをカカシが抱き寄せる。
「……夢みたい」
 強引に抱き堕としたカカシとは別人の様で。その本音に逞しいカカシの腕の内でイルカは息を吐き出すように笑った。そっとカカシの広い背中に腕を回す。
「夢じゃないですよ」
 優しく囁くと、抱き締めるカカシの腕に力が入った。うん、とカカシから返ってくる。
 抱き寄せた肌から伝わるは温もりとカカシの高鳴る鼓動。その気持ち良さに再び眠気がイルカを包み眠くなる。
 ずっとこのままでいたいと、イルカはそう願い微笑みながら黒い睫毛をそっと伏せた。


<終>
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