恋と笑って⑪

静まりかえった部屋に聞こえるのは時計の針の音だけ。沈黙を破ったのはカカシの乾いた笑いだった。
「何で...急に、どうしたの?」
食い入るようにイルカを見てカカシが言った。
「何の冗談ですか」
乾いた笑いと共に言われた台詞。イルカの言葉を待たずして出たカカシの台詞にイルカは顔を顰めていた。そう思われても仕方がない、自分は今までのカカシへ曖昧な態度をし続けていたのは事実だ。だが、カカシに直接言われると悔しさに似た苛立ちを感じる。カカシを真っ直ぐに見返した。
「俺は本気です。カカシさんは俺の事、...嫌いですか?」
言えば、ますます目を開き、視線を横に漂わせた。そしてイルカに目を戻す。じっとイルカを見つめるその目には様々な感情で揺れ、
「...嫌いなわけないでしょ」
苦しそうな顔で吐き出された言葉。
胸が熱くなった。
素直にその嬉しさに心が震え、身体が一緒に震えそうになる。情けない表情を見せたくなくて、イルカは俯いた。
「...じゃあ、...くれるんですか?カカシさんを」
言い終わると同時に腕を掴まれていた。
「え、」
顔を上げるとカカシの唇がイルカの唇と合わさる。それだけで、胸が大きく高鳴った。
「....んっ」
何度か深く口付けされ、応えてくれたカカシに胸がまた苦しさを増す。今までにない自分の変化に動揺する。それに必死に耐えるように、目を閉じ受け入れた。
カカシがふっと唇を浮かせる。離れてしまった唇に薄く目を開くと、青く綺麗な目が間近でジッと見つめていた。
「うん。あんたにあげるよ…俺の初めてだって、全部あんたにあげたじゃない」
そう熱い息で囁くと、カカシはイルカを抱き上げた。
「うわっ、ちょっ、ちょっと待って」
軽々持ち上げたイルカを隣の部屋の寝台に乗せる。
「あんたの初めても俺にくれたでしょ?」
「いや、そうだけど、…待ってっ、カカシさん」
覆い被されそうになり、慌てて両手で胸を突っぱねると、カカシは眉を寄せた。
「やだ」
胸が先ほどから激しく打っている。苦しいくらいに。懇願するような目で見てもカカシはやめない。
「まだ、...心の準備が、」
だから、と、恥ずかしさに眉根を寄せるイルカを見て、カカシは苦しそうな顔をした。
「信じらんない。可愛すぎ。なにそれ」
言うなりぐぐぐとカカシが覆い被さる。両手でイルカの頬を包み込むように支え、何度も角度を変え口付けられる。カカシの舌がイルカの口内を愛おしむように蠢いていた。イルカも拙い動きでカカシの舌と絡め合わせる。くちゅくちゅと唾液を絡ませられ、頭の芯がぼーっとなり始める。唇を合わせているだけなのに。胸の鼓動が治まらない。ぴたりとくっついたカカシにはきっと激しい胸の音が聞こえてしまっているだろう。
「もっと、早く。...何で言ってくれなかったの」
イルカの身体を性急にまさぐりながら、カカシが悔しそうに責めた声を出し続ける。
「てっきり..もう、あんたを忘れなきゃいけないって、思ってた」
カカシは自分の上着を脱いで床に捨てる。その後イルカのズボンを下着ごと脱がした。すぐにさらけ出された肌にカカシの指が這った。
「あっ、...だって、...」
「だって、何?ちゃんと言って」
低い声が熱い息と共に耳に吹き込まれる。尖った舌で耳奥を舐められ、背中に甘い痺れが走る。
「男の、あなたに...ぁっ、想うのは...間違ってるって思ってたんです...っ」
だから、どうしてもそれ以上踏み込めなかった。そんなはずがないと、思いこんでいた。
「意地悪だよ。先生...。こんなに焦らして。酷い」
Sだよ。ドS。分かってる?と首筋を甘噛みしながら体中にキスを落としていく。
勃ち上がったイルカの性器をカカシの掌が包み込んだ。既に溢れた先走りで水音が耳に聞こえた。身体が一気に熱くなる。息を詰めるとカカシが不思議そうにのぞき込んだ。
「何?真っ赤。どうしたの?」
理性をかろうじで保ったカカシの顔に、また顔に血が上ったのが分かった。
「はず....恥ずかしくて」
カカシは眉根を寄せるとイルカの胸に顔を埋めた。
「カカシさん...?」
「どうしよう...早く挿れたい」
先生の中に入りたい。
「ダメ?」
顔を真っ赤にしながら、イルカはカカシの顔を両手で包み込んだ。自分は今酷い顔をしてるんだろうなと思うが。
「挿れてください....」
恥ずかしさに耐えながらも、そうカカシに呟く。カカシは唇を深く合わせた。キスをしながら、イルカの脚を開かせると、カカシの指がゆっくりと中に入っていく。生き物のように、円を描くように、肉壁を押し広げる。
「あ!...あぁぁ、っ」
ビクビクと身体が跳ねる。イルカは切なげに眉を顰めてカカシにしがみついた。カカシの指が入っている。嬉しくて、カカシの荒い息にさえ興奮する。イルカは頬を火照らせた。
イルカの中を解そうとしているカカシを手伝うように、イルカはゆっくり息を吐き出す。その間にも指は増えて締まった肉が広げられていくのが分かった。恥ずかしいのに感じる。短く息をしながら考えないようにしても、やはり恥ずかしい。カチャとズボンを寛げる音がする。
蠢いていたカカシの指がやがてイルカの中から出て行き、直ぐに指の代わりにカカシの熱があてがわれた。指よりも遙かに太いそれがゆっくりと押し入ってくる。その質量の大きさに慣れる事が出来ない。イルカは切なげに眉を顰めた。
全部埋めると、カカシは熱っぽい息を吐き出した。薄く目を開けると、カカシも眉を寄せていた。
「気持ちいい...っ」
その言葉にイルカの背中がぶるりと震える。
カカシはゆっくりと律動を始めた。揺らされ、中が擦れる度に抑えていても声が上がる。
「あっ....ぁあ!...んっ」
「イルカ...せんせ...」
名前を呼ばれ、イルカはカカシの首に腕を絡めて引き寄せた。薄い唇に、自分の唇を何度も合わせる。その度に感じるカカシの吐息さえ愛おしい。カカシもイルカの口づけに答えるように誘われるままにイルカの唇を貪った。
やがてカカシの動きに激しさが増す。いつもより限界が近い。喘ぎながらそう感じ、同じようにイルカの熱は熱く張りつめ、先端から透明の液がカカシの腹を濡らす。
「.....好き...っ、...好きだ」
荒い呼吸の合間に零れたカカシの言葉に、イルカの下腹部が疼いた。応えたいのに、カカシに激しく追いつめられ、イルカはカカシの腹との間で敢えなく達していた。カカシの背中に手をまわし、強く抱きつき爪を立てる。
カカシも何度か擦り上げた後、短く呻き、イルカの中に熱を断続的に放つ。達したのを中で感じた。
「もう一回…駄目?」
はあはあ息を吐きながら、カカシは強請るように耳元で囁いた。イルカは腕をカカシの首に絡ませる。
「いいですよ」
優しく言えば、カカシがズルリと陰茎を抜き、イルカは思わす身震いした。カカシは履いたままだったズボンと下着を脱ぐと、既に硬さを取り戻しているそれを熱く解かれた場所に押し入れ突き上げられる。イルカはカカシの背中にしがみついた。
それから三回達した後、カカシは倒れこむようにイルカに覆いかぶさった。自分の腕の内に入れ、きつく抱き締める。
いつもより、カカシは荒い息をだしながら、肩で息をしている。じっとりと汗もかいていた。呼吸を整えるように息をする。
カカシがゆっくりとイルカを抱きしめる。首もとに唇を押し当てされ、その柔らかさにまた胸が苦しくなった。何度もちゅ、ちゅと音を立てながら愛撫を繰り返し、やがて、カカシは離れ、イルカの隣に横になった。
「...なんか...一番気持ちよかったかも...」
その言い方があまりにも実感が籠もっていて、イルカは思わず笑いを零す。
「え?なに?イルカ先生は違った?」
きょとんとした訊き方も、また。イルカがくすくすと笑い出すと、さすがにカカシは眉を寄せた。
「何で笑うんですか?」
可愛い。この人は何でこんなに可愛らしいんだろう。今まで一緒にいたカカシとの世界に光りが差したみたいだ。暖かくて眩しくて、でも心地よくって。
イルカは口に手をあてながら、首を振った。
「いいえ、何でもないです。気持ちよかったですよ、俺も」
そう言えば、訝しむ顔を見せたカカシも、微笑んで目を細めた。
「窓、開けていいですか?」
暑さがあるのに締め切っていた部屋は熱気で温度が上がっている気がする。
うん、と応えるのを訊いて、イルカは起き上がり寝台から手の届く窓の鍵を開けからからと少しだけ開けた。途端、入り込む夜風はあの花の香りを部屋に運んでくる。イルカは深く息を吸い込むとカカシの隣にごろんと横になった。カカシの手に抱き寄せられ、イルカもそれに素直に応じる。
花の香りに、何故だろう。葵姫の顔が思い浮かんだ。
「...俺は、最初あなたの役に立てればいいと、それだけ思っていました」
イルカはボソリと話し始める。カカシは黙ってイルカを見た。
「だから...葵姫の話が出た時、カカシさんはもしかしたら、相手を好きになるのかもしれない。それならそれでいい、と思ったんです」
ジッと真剣な眼差しを向けていたカカシの眉がぐっと寄った。
「....そんな事考えていたんですか」
「そしたら、気持ちに整理もついて、上手く言い表せない...この気持ちを無くせるって。なのに馬鹿ですね、俺は。あなたが離れていくって思ったら、怖くなってしまったんです」
無理に笑おうをするイルカを、苦しそうに見つめた。
「馬鹿なのは俺です。嘘でもいいからあんたと関係を結びたくて。それでいいって思ったんです。...でもさ、あの姫に好きな人を連れて来いって言われて。何だろね、自分の気持ちに嘘付けなかったんですよ。あんた以外頭に浮かばなかった」
カカシはそこまで言って、イルカの髪に口を押しつけ深く息を吸い込む。
イルカはその言葉を訊いて瞼を伏せた。
カカシのあの屋敷にいた時の表情が鮮明に思い浮かぶ。女の自分を見て、驚きながら苛立った顔をした理由。カカシらしくない判断は、結局自分の気持ちに気づかせてくれた。それでも、カカシらしくない。
「馬鹿ですよ、カカシさんは」
そう言って、またイルカは笑っていた。
「嘘付くくらいなら馬鹿でいいんです」
髪にキスを落としながらそうカカシが言った。またイルカは笑う。カカシも一緒に笑った。
「いい香りですね」
金木犀の香りにイルカは目を瞑り、カカシに身体を寄せた。ぴったりとくっつく。カカシの身体は暖かい。とくとくと訊こえる心音に、すごく気持ちよくて安心するとイルカは思った。幸せだと思った。
金木犀とカカシなんて連想すら出来ないのに、今は何故かカカシに似ていると思えてならない。
「この匂いはあんたに似てる」
同じ台詞がカカシから聞こえ、イルカは驚きに目を開けた。その声は、少し震えているみたいで。カカシはぎゅうとイルカを抱く腕に力を入れる。
自分に似てると言われて、すごく嬉しい。カカシの感情が移ってしまったのだろうか。イルカも不思議と泣きたくなった。熱くなった目頭を悟られたくなく、顔をカカシの首もとに埋める。
気持ちいい。
抱き合って、金木犀の香りを感じながら、イルカの意識が微睡み始める。ふわふわゆらゆら。こんな安堵感に包まれるのはいつぶりだろう。
恥ずかしさも混じるけど、カカシが言ったように、馬鹿でいい。自分に嘘を付くくらいなら馬鹿でいいのだ。
そう思った時カカシの寝息がイルカの耳に訊こえた。穏やかな寝息に耳を澄ませながら。イルカも目を閉じる。
また窓から風がふわりと入り込み、金木犀の香りが二人を包んだ。
優しく。優しく。



(....寝たか)
外の庭で地面に顔を付け座っていたパックンは顔を上げた。少しだけ空いた窓からはカーテンがたなびいているのが見える。
甘ったるい空気。だか何と気持ちがいいのだろう。すがすがしいのは安堵した為だろうか。
なんだかんだと言い合いながら、くっついた二人にほっとしている自分がいるのに気が付く。他人と寝る主を見るのは初めてだ。他人とは寝れないとばかり思いこんでいた。
(でも、こっちが疲れるから良かったわ)
パックンはため息に夜空を見上げる。

あの二人を幸せにして

葵の願いは何とも困った内容だった。
見守りはするが、それだけでは明らかにお互いの気持ちを閉じこめてしまった二人には無理な話だった。
でも。
(これで良かったのだ)
肩の荷が下りるとはこのことだろう。
巻物に戻される前にやることをやらねばな。
パックンは立ち上がると歩き出す。その足取りは軽く、スキップしているように軽快だった。








イルカは起きると伸びをした。カカシは朝方任務があると床を出て、一緒に起き出そうとしたイルカをベットに戻した。そして銀色の鍵を渡された。
「スペア。イルカ先生が持ってて」
頬を赤くさせるイルカに目を細めてキスを落とすと、2、3お願いをし、出て行った。
イルカはシャワーを浴びると服を着込む。アカデミーに向かう前に、自宅によって着替えをしなければならない。ご飯は、適当に済ませればいい。
キッチンの棚を開け、ドックフードを取り出す。皿にドッグフードを入れると、窓を開けた。
「パックン?」
朝日が昇った庭は明るく緑が眩しいくらいに輝いている。声をかけたがパックンの姿は見あたらない。
朝の散歩にでも出かけてしまったのか。しばらく待っても顔をださない為、イルカは土間にその皿を置く。
後は。
言われた通り、冷蔵庫を開ける。陶器の保存容器を取り出すと庭に向かった。
探すと直ぐに見つかった。大きい亀が木陰でじっとしている。イルカはそのむっつりとした亀を見て微笑んだ。
「おいで、のしのし」
名前を呼べば、のし、と前脚を動かしイルカへむき直した。
亀の、のしのしに餌をあげといてください。
そう言ったカカシを思い出してまたイルカはふふと笑いを零した。パックンにのしのし。丸で幼い子供がつけたがる名前。保存容器の蓋を開け鳥のささみを取り出し、のしのしに与える。
こうやって、カカシも名前を呼び毎日餌をあげているのだろうか。
思い浮かべただけで可笑しくて堪らない。
「さてと」
イルカは立ち上がり深呼吸した。遅番とは言え、やることはたくさんある。イルカは気持ちを切り替えるように息を吐き出すと、顔を引き締めた。



午後、昼休みも終わり眠くなる時間。受付は来る人も疎らで窓から入る風がまた気持ちいい。
うとうとしている同僚を軽く言い聞かせながら起こし、イルカはテキパキと仕事をこなす。リズムよく紙をめくりながら判子を押していく。その音だけが部屋に響いていた。
「イルカー」
廊下から入ってきた別の同僚に名前を呼ばれ、手を止め、振り返った。
「五代目がお呼びだ」
「あぁ」
席を代わると指で合図され、イルカは立ち上がった。アカデミーで授業が入っていない日は大体雑用を頼まれる事が多い。イルカはさして気にする事なく執務室へ向かった。

入った時、驚いたのは自分以外に人がいたからじゃない。それはよくある事だからだ。
驚いたのは、そこにいた男がカカシだったからだ。カカシも目を丸くしているのが分かるが、イルカは平静を装って、頭を下げた。カカシも軽く会釈をイルカに返す。
カカシは朝方からの任務からもう帰ってきていたのか。いや、カカシだから早く終わったのか。
そして綱手の姿は見えない。だが今朝の今だ。カカシも微妙に顔を緩ませてはにかむのだから、イルカもつい顔の締まりが緩んでしまう。
「やっと来たか」
綱手が奥の部屋から、姿を表した。
「カカシだけでも良かったんだけどね、どうせなら二人揃ってからにしようと思ってね」
悪かったね。と、腕に抱えていた古く分厚い本を乱雑に机に置き、椅子にどかりと座った。
二人揃って。と言う言葉がひっかかるが。それはカカシもきっと同じだろう。カカシを見れば、既に感情が余り読めない表情に戻っていた。
何だろう、と綱手の続く言葉を待てば、綱手はカカシとイルカを交互に眺めながら腕を組んだ。
「この間の任務で補足はあるのか」
補足と言われ、イルカは眉を少し顰めた。確かに説明足らずだったとは思うが。自分なりに報告書も纏めたし、カカシも同じように提出済みだろう。
ん?と眉をつり上げ綱手に催促され、イルカは首を横に振った。
「いえ、補足する事は何も」
「俺も、同じくです」
カカシも揃えて応える。
「なるほどねぇ」
それを訊くと、綱手は眉根を寄せて、唸ったような息を吐き出す。少し間を取って、綱手は組んでいた腕を解いた。そしてその白く細い腕で机の引き出しを開ける。取り出したそれを、ポンと机の上に置いた。
目を落とせば、大きめの封筒だろうか。金箔を散らしたピンク色の花模様の檀紙が華やかだった。
だが、当たり前だが見覚えがない。
「姫様から届いたんだよ。さっきね」
葵姫。
それを訊いてもやはりよく分からない。
「カカシとイルカ。お前等に、だそうだ。冷やかしにも冗談にも取れない位の金額だよ」
「え、」
綱手は机の中からもう一つ取り出した。それは、その檀紙に付いていたのだろう、金箔の付いた色鮮やかで鶴をあしらってある水引。明らかな、祝儀袋。
「末永く幸せに、だそうだ」
何だそれ、とイルカは固まる。何で、何があったらそうなるんだろうか。いや、あんな感じで帰ったから当たり前なんだろうが。でも一体何で。
パニックになりながら、未だ声を発さないカカシへ、ぎぎ、と首を向ければ、眉間に手を当て、ため息を吐き出していた。多少思い当たる節があると言わんばかりに。
「木の葉は同性婚は認められてないはずなんだけどねぇ」
綱手の台詞にイルカはハっと前を向いた。
「あ、いや!違います!」
イルカが両手を遣って否定するが、顔は真っ赤だ。綱手はそれを眺めながら薄っすら微笑んだ。
「まぁ、いいさ。それより酒酒屋にいい地酒が入ったって連絡あったんだけどね」
にんまり笑うその顔は妖艶さが見え隠れし、何か怖い。
「え?いや、しかし、」
素直に困惑するイルカの横で、カカシが盛大にため息をついた。
「いいでしょ。分かりましたよ。今夜は奢ります」
「え?そうなんですか?」
カカシに問いかけるイルカは実に清純でわかりやすい。綱手は鼻で小さく笑い、赤い唇に微笑みを浮かべた。
「シズネ、今日は早く上がるよ」
と言って、自分と温度差を持つ2人を眺め、豪快に笑った。


執務室の机の上で、蝶々結びの水引がきらきらと輝く。
淡い恋心より心を込めて。
2人の始まったばかりの恋路を見守るように。
でも。
俺とイルカ先生の始まりを知ったら、驚くんだろうねえ。
でも、恋と笑ってよ。
カカシはその水引に視線を落としながら、純真無垢であり、勝気で気高い姫様を思い出し、小さく微笑んだ。


<終>


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