ありがとう

誰もいない。
一人。
受付。

頬杖を付いて窓の外を眺める。
目に入るのは穏やかに、それが当たり前のように生活をしている木の葉の街並み。
ここからすべて見渡せる、これが幸せなのか。
眉を寄せるものの、そうだ、幸せだな、ふと微笑んで、それでも少し悲しい顔をした。
様々湧き合わってきたが、己には只今これ一つのみ。申し訳ないが焦点は一つに絞られる。
カカシ先生・・・。
即座にその単語が思い浮かび、幸せな景色とカカシの酷な状況を照らし合わせて、切なく笑ってみた。

少し痩せましたね。

中々会えないあなたに言われた。
任務に赴く前にあなたは気付いた。
「イルカ先生、飯、食ってますか」
ごまかして、笑うしか、ないでしょう。
これでもあなたを心配させないように、忙しい、そんなフリーー!
「はい、食べてますから。カカシ先生こそ!・・・ちゃんと帰ってきて下さい。
俺を、これ以上、痩せさせたくないなら」
そう言うしかないじゃないですか?
カカシが降参と言ったようにして、言葉と共に笑った。
「じゃ。安心して行ってきますか」

本当に?

カカシは必要最低限の事しか言わない。
現況と感情を重ねたらダメです、持ちません!それだけ。
今の自分の胸の内を吐き出したい、そう思うが、
本当に、不安になるくらいに、カカシは伝えてこない。
イルカは思う。
俺の心の中にはあなたが常にいます。
遠くたって、何をしていたって信じて繋がっています。
ではカカシからのコンタクトはどういう意味だろう。

カカシに想いを打ち明けられた時は驚きしかなかった。
同性を意識するなどとは。そんなことは思いもしなかった。
ええと、と笑い、それしか言えなかった。
それでも知っている。
あなたという存在が俺にどれだけ必要多大なものであったのかと。
それを知って、その上での感想と、やりこめられた感ある承諾。
なんで、こんな、他人のいるところで・・・言えるんですか?
どうしてそれだけ俺の気持ち知ってるんですか?と。
それだけ、俺はあなたに価値のあるものなんですか?
自分の価値?・・・そんなこと、思った事もない。

必要な時が今だったから。
抑えきれず泣く俺に、カカシ先生が言った。

俺を必要なんでしょ?

それでも、そう言うカカシ先生に、その時、俺は気持ちを預けられなかった。
どんなシチュエーションだ?
弱みは、見せたくない。

だけど、カカシ先生は、片目で笑ったまま、俺を落ち着かせてくれた。

いただきます。ごちそうさま。

「落ち着きました?」
「悔しいですけど・・・カカシ先生。もう、大丈夫ですから」
そ。何気なく言うカカシ先生の言葉を吸収したくなる。
本日最後通告か。
「じゃ、また・・・」
驚く程の早さで姿を消したカカシに、どうしてそうあっさりなんだろうという意味を込め。
今夜、来なかったら、ぶっ飛ばします!!



一枚だけある、大事なあなたとの写真。
本当は恥かしくて、気まずくて、どんな顔していいか分からなくて。
一緒に撮りましょう、言われ照れながら撮ったものが貴重な一枚になっている。
それを見て、カカシを感じてみた。
が、ここにはいないカカシの事を思い出し、泣きそうな笑顔で写真を見て思う。
「ありがとうございます」
もうそれしかない。

ここに俺はいる。
どこにも行きません。
あなたを探してしまっている。
どれだけ遠くにいたって、あなたを想ってます。
寝る時って、知ってますか?
考えって、暇になると絞られるんです。
あなたの事ばかりになるんです。
目を閉じる、眠りに就こうとする。
すべてあなたのこと。

邪魔をしたくはない。目を閉じ、更に強く閉じ、イルカは思った。
せめてじぶんが想うだけ、余計な負担は与えたくない。

でも、あなたはどうなんですか?
そう言うからには、相当な気持ちを持ってのことですよね?

気持ちでは一緒にいますよ。カカシ先生。
そう、ただ、早くここに帰ってきて下さい。

今日、もちろん。
明日?構いません。
とにかく。
俺の所に。
それだけ。

あ、帰ってきた!

カカシ先生お帰りなさい!!

ありがとう。

end


なな、なんとカカ誕にてすばらしいSSをいただいたばかりだと言うのに、相互記念としての、またしてもすばらしい作品をいただいてしまいました。
はぁ><もう嬉しくてたまりません!!
じんわり心に沁みこむイルカ先生の恋心。読んだ後に余韻が残ってしまいました。。美しいです。
自分以外の書くカカイルはなんでこんなにドキドキするのでしょうか。
白玉さん、本当にありがとうございます!白玉さんの暖かい心が伝わってきました。
みなさんにも、この暖かさが伝わりますように^^

2015/9/22
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