カカイルワンライ「式②」
最初会った時は分かりやすい人だと思った。里の中とはいえ大声で笑ったり怒ったり子供相手にしてるからなんだろうが感情が直ぐに顔に出る。この里のしかも忍びらしくないと言えばそうなるが。上忍師になり部下になったナルト達を見ていたら、想像以上に真っ直ぐに育っている理由は直ぐに分かった。
とは言え外や建物の中で会ったしりても会釈や挨拶だけで済ませて背を向けるような人なのに、偶然居酒屋で顔を合わせてせっかくだからと誘ったら頷いた。そこまで会話は弾まなかったけど翌日わざわざ自分を呼び止め、昨夜は楽しかったと礼儀正しく頭を下げて礼を言われ、警戒されているとばかり思っていたから、その笑顔を素直に受け取った。
何回か一緒に飲みに行く機会があり、その会話の中で、恋人と長く続かないのは自分が仕事人間だからなんだとイルカが嘆くから、だったら俺にしたらいいよ、俺も仕事人間だから、と冗談返した後、似たもの同士だったら意味ないかと言おうとしたのに。少しだけ黙った後、じゃあそうします、とイルカが言った。
そこまでイルカを知らないが、コミュニケーションに長けているのは分かっていた。だから、冗談が通じない相手でもない事も知っている。
真顔で返され内心驚いたが、それに承諾したのは自分も悪くないと思ったからだ。
恋は盲目とよく言うが、その通りで。ろくに付き合った相手もいなかったし長く続いたこともなかったが、イルカは別だった。
どんな相手でも別れようがいなくなろうがどうとも思わなかったのに、始まり方が始まり方だったから、あっさりと始まった時のようにあっさり終わってしまうんじゃないかと不安さえ感じる始末で。
分かりやすい人間とばかり思っていたのに、どんな素振りもなかったのに微塵もなかったのに実は自分に惹かれていた事にも驚いたし、すんなりと付き合うとこになったが、同性同士の経験はなかったり。正直驚く事ばかりだ。
かと言えば恋人同士になった後でも受付や報告所では仕事人間だからだろうか、他の人と同じような対応と言えばいいのか、素っ気なささえ感じる。昨夜あんなに肌を重ねたのに、その表情が嘘だったかのように、俺とは付き合ってません、と言わんばかりの顔を見せる。
だから紅に聞かれた時、いつものようにイルカが上手く誤魔化すとばかり思っていた。任務が忙しくてここ数日顔を合わせてなかったから、時間が合う時に会いたくて夕飯に誘っただけだったけど。イルカが明らかに動揺した顔を見せたから、面倒臭くならないように、自分が適当に誤魔化した。
それで良かったはずだったのに。紅も特に勘繰ることもなく事を得たのに、イルカは違った。
たぶん、誤魔化し方が悪かった。
日もすっかり落ちた頃、任務終わりの足で商店街に向かいながら、カカシはため息混じりに銀色の髪を掻く。
紅に向かって誤魔化した後のイルカの表情が忘れられなくて。任務前にも声をかけたが、対応はぎこちなかった。
怒ってるよなあ。
関係は上手くいってるとはいえ、好きだとそこまで口にすることはないから、(夜は別だが)すれ違いはこう言う感じで始まっていくのか。
恋愛の初歩もいいとこだから、イチャパラの内容じゃ全然当てにならないし。
昨日の素っ気なさからすると、夕飯の約束をイルカはすっぽかすのかもしれない。
式は飛ばしたけど案の定返事はないし。
(……参ったね)
いなかったらいなかったで、一人で飯を食って帰ろうと思っていたから。
居酒屋の隅の席にイルカの姿を見た瞬間、安堵が広がる。が、テーブルに座っているイルカの表情は固い。
イルカの席の前まで来て、そこからカカシはゆっくり座る。それでもイルカの表情は変わらなかった。機嫌が悪いのは確実だ。
「……先生?」
怒っているのか、呆れているのか、それとももっと良くない方向に進むのか。
不安が過ぎる中、恐る恐る名前を呼べば、イルカはその目をゆっくりとカカシに向ける。
「あの、」
「……ああいう事は直接言ってください」
ごめんね、と言おうとして。言われたイルカの台詞に、カカシは自分の言いかけた言葉を止めた。
責めるような口調だが、黒く澄んだ真っ直ぐな目に滲むのは、怒りでも呆れでもない。恥じらいだった。夜、肌を重ねている時に見せるような目で。思わずその表情を見入っていた。
昼間、イルカに向けて式を送った。
手紙は基本苦手だ。報告書は慣れっこだが手紙は書いたこともない。
謝るのは簡単だ。ただ、それだけじゃ駄目だと思ったから。
だから、自分が伝えたい言葉を簡潔に書いて、送った。
それを言っているのだと理解した数秒後、カカシの身体の奥がカッと熱くなった。同時に背中がゾクゾクとして言葉にならない衝動に駆られる。 性欲なんてそこまでないと思っていたのに。イルカに関してはしっかりとあると感じていたが、今回のは初めてで。
どうしよう。
連れ去って、今すぐイルカを抱きたい。
そんな事をしたら今度こそ怒るに決まってる。
でも。
(まあいいか)
湧き上がる感情に身を任せるように、カカシはイルカに手を伸ばした。
NEXT→
とは言え外や建物の中で会ったしりても会釈や挨拶だけで済ませて背を向けるような人なのに、偶然居酒屋で顔を合わせてせっかくだからと誘ったら頷いた。そこまで会話は弾まなかったけど翌日わざわざ自分を呼び止め、昨夜は楽しかったと礼儀正しく頭を下げて礼を言われ、警戒されているとばかり思っていたから、その笑顔を素直に受け取った。
何回か一緒に飲みに行く機会があり、その会話の中で、恋人と長く続かないのは自分が仕事人間だからなんだとイルカが嘆くから、だったら俺にしたらいいよ、俺も仕事人間だから、と冗談返した後、似たもの同士だったら意味ないかと言おうとしたのに。少しだけ黙った後、じゃあそうします、とイルカが言った。
そこまでイルカを知らないが、コミュニケーションに長けているのは分かっていた。だから、冗談が通じない相手でもない事も知っている。
真顔で返され内心驚いたが、それに承諾したのは自分も悪くないと思ったからだ。
恋は盲目とよく言うが、その通りで。ろくに付き合った相手もいなかったし長く続いたこともなかったが、イルカは別だった。
どんな相手でも別れようがいなくなろうがどうとも思わなかったのに、始まり方が始まり方だったから、あっさりと始まった時のようにあっさり終わってしまうんじゃないかと不安さえ感じる始末で。
分かりやすい人間とばかり思っていたのに、どんな素振りもなかったのに微塵もなかったのに実は自分に惹かれていた事にも驚いたし、すんなりと付き合うとこになったが、同性同士の経験はなかったり。正直驚く事ばかりだ。
かと言えば恋人同士になった後でも受付や報告所では仕事人間だからだろうか、他の人と同じような対応と言えばいいのか、素っ気なささえ感じる。昨夜あんなに肌を重ねたのに、その表情が嘘だったかのように、俺とは付き合ってません、と言わんばかりの顔を見せる。
だから紅に聞かれた時、いつものようにイルカが上手く誤魔化すとばかり思っていた。任務が忙しくてここ数日顔を合わせてなかったから、時間が合う時に会いたくて夕飯に誘っただけだったけど。イルカが明らかに動揺した顔を見せたから、面倒臭くならないように、自分が適当に誤魔化した。
それで良かったはずだったのに。紅も特に勘繰ることもなく事を得たのに、イルカは違った。
たぶん、誤魔化し方が悪かった。
日もすっかり落ちた頃、任務終わりの足で商店街に向かいながら、カカシはため息混じりに銀色の髪を掻く。
紅に向かって誤魔化した後のイルカの表情が忘れられなくて。任務前にも声をかけたが、対応はぎこちなかった。
怒ってるよなあ。
関係は上手くいってるとはいえ、好きだとそこまで口にすることはないから、(夜は別だが)すれ違いはこう言う感じで始まっていくのか。
恋愛の初歩もいいとこだから、イチャパラの内容じゃ全然当てにならないし。
昨日の素っ気なさからすると、夕飯の約束をイルカはすっぽかすのかもしれない。
式は飛ばしたけど案の定返事はないし。
(……参ったね)
いなかったらいなかったで、一人で飯を食って帰ろうと思っていたから。
居酒屋の隅の席にイルカの姿を見た瞬間、安堵が広がる。が、テーブルに座っているイルカの表情は固い。
イルカの席の前まで来て、そこからカカシはゆっくり座る。それでもイルカの表情は変わらなかった。機嫌が悪いのは確実だ。
「……先生?」
怒っているのか、呆れているのか、それとももっと良くない方向に進むのか。
不安が過ぎる中、恐る恐る名前を呼べば、イルカはその目をゆっくりとカカシに向ける。
「あの、」
「……ああいう事は直接言ってください」
ごめんね、と言おうとして。言われたイルカの台詞に、カカシは自分の言いかけた言葉を止めた。
責めるような口調だが、黒く澄んだ真っ直ぐな目に滲むのは、怒りでも呆れでもない。恥じらいだった。夜、肌を重ねている時に見せるような目で。思わずその表情を見入っていた。
昼間、イルカに向けて式を送った。
手紙は基本苦手だ。報告書は慣れっこだが手紙は書いたこともない。
謝るのは簡単だ。ただ、それだけじゃ駄目だと思ったから。
だから、自分が伝えたい言葉を簡潔に書いて、送った。
それを言っているのだと理解した数秒後、カカシの身体の奥がカッと熱くなった。同時に背中がゾクゾクとして言葉にならない衝動に駆られる。 性欲なんてそこまでないと思っていたのに。イルカに関してはしっかりとあると感じていたが、今回のは初めてで。
どうしよう。
連れ去って、今すぐイルカを抱きたい。
そんな事をしたら今度こそ怒るに決まってる。
でも。
(まあいいか)
湧き上がる感情に身を任せるように、カカシはイルカに手を伸ばした。
NEXT→
スポンサードリンク