恋と笑って④

合わさった唇から熱い息が漏れる。布が擦れる音が妙に生々しくて、イルカは切なげに眉根を寄せていた。
初めてとか言ってた割にはリードが上手い。それに縋るようにカカシの背に掌をまわして。イルカは目を開け、覆い被さりまた唇を合わせてくるカカシを心細く見上げると、それに気が付いたのか、カカシが目を薄く開け優しく訊いた。
「どうしたの?」
「カカシさん、本当に俺なんかでいいんですか?」
振り切れない思いを口にすると、カカシが首を傾げた。
「何で?」
「だって、やっぱり...俺、男ですし」
「今は身体は女じゃない」
そうだけども。
イルカは少し眉を寄せた。

女の身体じゃなきゃ意味がない。お茶を飲み終わると直ぐに、手慣れた様子で印を組み変化をした。授業でやる時と同じように。
よし、こんなものか。
多少自分らしさが残るが。華奢になった自分の身体を眺めて顔を上げれば。驚いた顔のまま自分を見つめるカカシと目があった。
「...?どうしましたか?」
「あ、そっか。そうだよね」
イルカの問いにカカシもその意図を把握し納得したように軽く頷いた。
「変、ですかね」
「ううん、別に。じゃあ、こっちきて」
ゆるりと手を捕まれて寝室に連れていかれた。


「じゃあ、なに?」
整った顔と青い目がイルカを覗き込む。
「あの、...電気...」
「見えなきゃ意味なくない?」
「.....そう、...ですが」
分かってる。そんなの分かってるが。カカシに見られている。そう思っただけで恥ずかしさに自分らしさを見失いそうで。その頭で目的を思い出そうとした。あの姫と逢瀬の為。いや、任務と言うべきだろうが。
どうリードすればいいのか。巡らせていると首もとを舐められ甘噛みされ、思わず声が漏れた。
自分から漏れる女の嬌声に息を呑むととカカシがまた覗き込む。
「あ、駄目だった?本ではこんな感じで始まるでしょ?」
心配そうな表情にイルカは頬を緩ませていた。
「いいです。大丈夫」
その言葉にカカシはホッとした顔をするとまたイルカの首もとに顔を埋めた。緊張からなのか少しだけカカシの息が荒い。それはイルカをゾクリとさせた。舌を這わせる仕草を敏感に感じ取り、イルカの身体はびくびくと反応をする。きつく肌を吸われて、くぐもった声を漏らせばカカシは耳へと唇を移動させた。
「キスマーク」
「...え?」
耳元で囁かれる声に身じろぎしながら聞き返すと、カカシが顔を上げた。
「付けちゃった。いいでしょ?」
「....キスマーク」
たぶんさっき鎖骨の上辺りを甘噛みした時付けたのだろう。自分では見えないその箇所を指で触れると、カカシがその指を掴んだ。長く綺麗な指を絡ませる。
「もっとつけてもいい?」
甘えた言い方が何とも言えない。
「はい」
素直に頷いていた。
了承をされたからか、またカカシはそれを再開する。確実に学習するかのように。可愛いなんて思ったらいけないんだろうが、イルカはそっと銀色の頭に手を置き撫でた。その頭が徐々に下がってくる。
柔らかい、普段の自分にはない大きな膨らみのある胸をカカシが触れた。先端を舌で強く吸われた刺激にまたイルカは声を上げた。
女に変化したのは自分だと分かっているのに。優しく胸を揉まれ舌で愛撫される。まるで他人とカカシが性行しているのを間近で見ているような、そんな錯覚を覚える。
イルカは無意識に眉を寄せていた。言葉に出来ない。でも分かりやすく言うなら、変な気持ち。
そう、変だ。女になって、そう関わりを持たなかったあのカカシに抱かれていると言う現実。
それでも拙くとも彼は一生懸命で。それは任務の為で。
あの姫とする為に。だから、自分もそれに応えなくてはならない。
身体が徐々に熱くなる。次第に愛撫が激しさを増し、ぬめったその感触にイルカは堪らずカカシの髪を掴んでいた。
それに返すようにカカシが、胸を愛撫していた手を離しイルカの脇腹に触れた。優しく、そうカカシの触れる手は優しい。女性に彼が触れる時はこんな感じなんだろうか。そう思ったら胸が苦しくなった。
「せんせ....気持ちいい?」
耳に熱い息を吹きかけられる。
「や...っ」
思わず口に出た言葉に違うと自分に言い聞かせる。
「気持ちいいです」
言うと、カカシは目を細めて嬉しそうに微笑んだ。その微笑は余りにも綺麗で。もしかして、変化して心まで女になってしまったのか、と思えてしまうくらいに、目を奪われた。
「良かった。下手だったらちゃんと言ってね。どうして欲しいとか、触って欲しい所とか、ある?」
そう言われて、正直されるのは初めてで、訊かれてもどこをどうとか思いも浮かばない。ただ、カカシの触れられると気持ちよくて。上手く助言してあげたいのに。
固まったイルカを見て、カカシはまた微笑んだ。
「そっか、イルカ先生もされるのは初めてだったんだ。じゃあお互いに手探りだね」
小さく笑いを零して、また愛撫が再開される。カカシの指がカカシの内股に触れ、その奥に滑らせていく。イルカの身体が強ばった。男の身体でない自分の秘部はもう既に熱い。カカシの手が脚をゆっくりと開かせる。柔らかいその場所を触られる。変に胸がどきどきと跳ねた。女の身体をまさぐるのを見ているみたいなのは、やはり拭えない。
「舐めても、いい?」
落ちてきた声に閉じていた目を開けると色違いの双眸が自分を見下ろしていた。ゆる、とその場所を撫でられ、敏感に感じてしまう。濡れている。水っぽい音に自覚させられ、かぁと身体が燃えるように熱くなった。その感じた顔を見つめられ、イルカは思わず顔を背けていた。
「イルカ先生?」
顔を近づけられ、優しくも低い声にイルカは長い睫毛を伏せた。
「いいです...っ、どうぞ!」
言い切ると、カカシは黙ってその場所に顔を埋めた。直ぐにその場所を舌が這う。優しく、確実に壁を押し広げるように。
(なんか...変だ)
男の身体であれば陰茎が反応するが、その感覚が全くない。内が燃えるようなその感覚は、未知の世界で。これが、女の感覚なのか。そう理解した時、少し怖じ気付きそうになった自分がいた。
執拗に舐められ、疼く。必死で声を抑える為に歯を食いしばった。何でだろう。気持ちいいとカカシに教えるべきなのに。出したくない。
やがて、カカシの頭が離れる。
「挿れるね」
そう言うとぐぐぐ、とカカシの高まった熱がその場所にあてがう。舐められた為だろうか、解されたそこはカカシのものをゆっくりと受け入れ、痛みもない。押し広げられる度に直に感じるカカシの熱にイルカの声が小さく漏れた。
根元まで挿れると、カカシは熱っぽく息を吐き出す。何か言うのかと思ったが、カカシは何も言わずに腰を動かし始める。この行為に夢中になっているようにも思える。
そうか、カカシは気持ちいいのか。
揺すられながら、ぼんやり思った。
気持ちいい。いや、身体が勝手に反応してはいるが、気持ちよくない。気持ちよくないのに、反応してしまう。
それは不思議な感覚だった。
ただ、カカシが気持ちよければいい。
カカシの行為に寄って水音が卑猥に響く。揺すり上げられる。その背中に手を回すと、ふとカカシが顔を上げる。律動しながら、荒い息を繰り返しながら、
「ごめんね」
小さくカカシが呟いた。
何を言ったのか分からなかった。
考える間もなく突き上げられ、肉が擦れ合う。その行為に思考が遮られ、喘ぐ。カカシが短く呻き内部が熱くなる。カカシが中で達したのが分かった。




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