真夜中のポルカ①

イルカはその日ほろ酔い気分で夜道を歩いていた。同僚と飲んだ帰りにコンビニに寄り、カップラーメンを買った。男の一人暮らしとは言え、食生活に気をつけて自炊をして節約にも励んでいたが、たまにどうしてもカップラーメンが食べたくなる。しかも新発売に弱く、迷った挙句2つ買い、帰ってからどちらを食べようか考えてウキウキしていた。飲んだ後のラーメンは太る元だし不摂生だが、やめられない。
近道をして帰ろう。
イルカは自宅近くにある公園を横切る為に、柵を乗り越えて芝生を歩く。昼間は子ども達が遊ぶ声が聞こえている公園も、夜は静かに遊具を月が照らしていた。イルカは鼻歌を歌いながら持っているビニール袋を回して歩く。ふと何かが聞こえた気がして立ち止まる。振り返ってみるが虫の声が聞こえていた。再び歩きだし、はやり何かが聞こえる。忍びとしてそこまで耳がいいわけではないが、何かを耳に捉えていた。
(……猫の声…?)
ここの周辺にも野良猫がいるのは知っている。しかも先週はこの公園に子猫が捨てられていた。ペットショップに預けられたと近所の人が話していたのを思い出した。心無い人間のする事に悲しさと憤りを覚えた。捨て猫の声かも知れない。イルカは急に心配になり声が聞こえた方角へ足を向けた。
コナラの木が群生していて、小さな林になっている。秋になるとドングリが落ち子供たちが嬉しそうに拾ったりしているのだが、今はそんな季節でもなく、緑の葉が覆い茂っている。確かに聞こえる。人目がつかない場所だから、やはり子猫が捨てられ鳴いているのだ。
落ち葉もない地面は少し湿っている。ゆっくりと目を凝らすように歩き続け、次第にイルカの目に捉えた光景に目を疑った。
女の人が木にしがみつき喘いでいた。勿論男が背後から突き上げその度に女は声を上げる。
子猫が鳴いていると思ったのは、その女の喘ぎ声だったのだ。
口から声が出そうになり思わず手で押さえた。イルカは無意識にゴクリと喉を鳴らした。
ゆっくりと後ずさり視界から遠ざかったところで背を向け速足で公園から出た。その頃には自然と息が上がっていた。その後はアパートまで走り急いで部屋に入った。イルカは混乱していた。嫌な汗をかいて気持ちが悪い。酔っていたとはいえ迂闊だった。
男女の情事を見たからでもあるが、さっき見た光景がまざまざと頭に蘇りブンブンと頭を振った。
(…やばい、やばいよな。だって、あれって…)
顰めた顔を手で顔を覆う。
(…はたけカカシだ)
見てはならないものを、見た。
その一文が頭を支配する。
見間違いだったらどんなにかいいだろう。イルカだって忍だ。あの距離で相手を見間違えるはずはない。ましてやあの特徴ある容姿。覆面をズラしてはいたが、額当てはそのままだった。
酔いなんてすっかり醒めてしまっている。買ってきたカップラーメンも食べる食欲さえ吹っ飛んでしまった。
カカシは自分に気がついただろうか。酔っていたとはいえ猫だと思い込み気配も消さずに無用意にあの距離まで入り込んでいた。
誰かには見られたと確実に分かっているだろう。問題は相手が誰かと分かっているかどうかだ。あの場所であんな行為に及んでいたのは、人に見られる危険は承知しているはずだと思うが、人に見られて良い気はしないだろう。どうにか自分だと気がついていないと思いたい。
カカシとは受付や教え子の事で何度か会話はしたことがある程度だった。眠たそうな目は何かを考えてはいるだろうが、思考が読めない男。正直イルカは苦手だった。話し方も中忍のイルカに対して敬語で話すが、間延びした喋り方はどこか横柄な感じにも取れる。ただ、時折見せる微笑はイルカにとって好意的なものだった。
だったのに。外であんな行為をする人だったなんて。正直がっかりだ。大体あれは同意の上なんだよな?じゃなかったら犯罪だ。
いや、きっと恋人であるからこそあんな事を。
(あぁぁぁぁ…!もう!)
頭が煮詰まりそうになり、頭を抱え込む。イルカはシャワーを浴び早々に床についた。寝て忘れよう。それが一番いい。

翌日、睡眠が浅い頭の中で音がする。
なんの音だろう。夢うつつの中考える。
まだ寝ていたい。結局昨日はすぐに寝付けなかった。ゴロリと寝返りをして布団を頭まで被る。再び深い眠気が襲う。
コンコン、とまた耳に聞こえてくる。
今日は仕事も休みだから何かが聞こえようが寝てしまおう。
が、さっきよりも叩くタイミングが早くなり、それが玄関の扉を叩いている音だとわかった。
(………仕方がない)
顔をしかめて重い瞼を開いた。部屋は明るくなっている。
もぞもぞと動き枕元にある目覚し時計を手に取る。
9時を回っていた。
その間にも扉を叩く音は続いている。
「はいはい、待ってくださいね」
呟いて欠伸をしながら頭を掻いてベットから起き上がると、玄関に向かった。
「はい、どなた?」
「カカシです」
「……え」
(あれ、今何て……)
扉の向こうで言われた名前に、咄嗟すぎて頭が回らなかった。
「はたけカカシです」
再び言われた言葉。今度はちゃんとイルカの頭に入った。
(……はたけかかし…?)
一気に眠気が吹き飛ぶ瞬間。寝ぼけていた頭が一気に冷める。と同時に頭が急速に回り出した。
(え!?、嘘、何で?)
昨日の今日でこんなタイミングがあるだろうか。頭を抱えて扉の向こうを見つめる。
「開けていただけますか?」
丁寧な言い方だが、強制的な威圧を感じイルカは怖くなった。今更居留守も出来ない。震える手で慎重に扉を開けた。
カカシは笑顔で立っていた。朝の明るい光がカカシの姿を照らして、昨夜見た闇夜に浮かぶカカシとは別人に見えた。
「…おはようございます」
「おはようございます、イルカ先生」
イルカはおずおずと挨拶をすると、カカシは変わらぬ笑顔のまま丁寧に挨拶を返した。
(…本当にいるよ)
イルカの正面にいるのは間違いなくはたけカカシだ。その現実に心が挫けそうになる。
「あの、…どうしてウチが?」
忍の住所はアカデミーでも非登録で、仲がいい相手しか知らない。ましてやあのカカシがイルカの家を知っている事が不思議でならなかった。
「ああ、アカデミーにいる人を適当に吊るし上げたらスグに教えてくれました」
何気に恐ろしい事を口にされイルカは一気に血の気が下がる。ここで話立ち話で終わる内容だろうか。出来ればカカシを家に入れたくなかったが、
「入れていただけますか?」
言われて内心唸った。
上忍が中忍の家まできてあげないなんて事はまずありえない。観念してイルカは扉を開けた。
「…どうぞ」
それを聞くなりスタスタとカカシは家に上がり込む。
イルカの前を通り過ぎた時、チリチリと鈴が鳴る音が聞こえ、カカシの腰を見やると、小さな鈴が2つ付いていた。
忍である故に音が出る物は身につけないはずであるが、明らか様に腰に付けている為か動くたびに鈴がチリチリと鳴る。その鈴を鳴らしながらカカシはちゃぶ台の横に腰を下ろした。イルカは首を傾げた。やはり異風景に見えてならない。
「イルカ先生、座らないの?」
言われてイルカはカカシの顔に視線を戻した。
「あ、すぐお茶煎れますので」
目の前にあるキッチンへと足を運びヤカンに火をつけた。カカシは座っている為かもう鈴の音はしない。
チラと肩越しにカカシを見ると、バッチリ目が合い好意的な微笑をされて慌てて視線をヤカンに戻した。
お茶を淹れながらカカシの目的に思考を巡らせたが、昨日の出来事しか思い浮かばない。やはり見られてはまずい物だった為釘を刺しにきたのか、或いはここの住所を吐かせた者と同様に締め上げに来たのか。たぶんどっちも正解だろう。岩のように心に重くのしかかるが、仕方がない。不注意で堂々と見た自分に落ち度があるのだ。
「どうぞ」
お茶を淹れカカシの前に湯呑みを置き、カカシの前に腰を下ろした。
「どーも」
お茶を出したのは自分だが、カカシは普通に覆面を下ろしてお茶をすする。
(見ていいんだよな…)
確か、昨日見たカカシも覆面を下ろしていた。イルカの脳裏に昨日のカカシの表情がまざまざと浮かび上がり、思わず目を固く閉じた。何故だか胸がザワザワとした気分に包まれた。
カカシはなかなか口を開かない。気まずさの為俯いていたが、いい加減堪らずイルカ は口を開きカカシを見た。
「あの…ご用件は?」
「あぁ、実はお願いがありましてね」
「…はい」
「オレね捨てられちゃったんですよ」
「はい…?」
意味が掴めない台詞に聞き返した。
「分からない?いやね、昨日の女、ヤってたの見られてたのが分かっちゃったみたいで。やっぱりー、どうしてくれるのー、ってヒステリー起こしちゃって。もー大変だったんです」
身振り手振りで説明を始める。
「でもまぁ宥めるとかそーいうのオレ苦手なんですよ。キャンキャン言ってるのを聞き流してたら、ベタな流れで一発叩かれそうになりましてね、クセでつい避けたらそれがまーた怒りに触れちゃったみたいで。・・もー会わない!なーんて言って、終わりです」
「……………」
明らかに自分を責めている。
筋違いだが、忍は縦社会。上忍が右向けと言われたら右を向く世界だ。正座をして腿に置いていた拳に力を入れる。取り敢えず謝らなければ。
が、その気持ちを察知したのかカカシは片手で制した。
「や、謝らなくていいですよ。さっき言ったでしょ?お願いがあるって」
上目遣いでカカシを伺った。まさか一緒に謝りに行けとか言うのだろうか。
「…相談、ですか」
「オレを拾ってください」
ニコリとしてイルカに微笑んだ。
(…拾うってなんだ?)
「…あの、少し意味が」
話を端折り過ぎているのか、カカシの言わんとしている事が理解出来ずに説明を求めた。
「だ・か・ら、オレは捨てられたの。捨てネコなんです。イルカセンセー拾って?」
カカシは腰にぶら下げていた鈴を手に取りイルカの目の前で、チリチリと音を聞かせるように揺らした。
(…拾ってって言われても…何を言ってるんだこの人)
顔を顰めて目前に吊るされた鈴を見つめた。しかもにこにこと嬉しそうに。
前々から不思議な人がだとは思っていたが、中忍相手にこんな変な思考で嫌がらせをするのか。
確かに昨日情事を見てしまったのは自分の不徳の致すところだ。責める理由もある。だからと言ってわざわざ朝から家に来てまで言うことか。
冷静にカカシの言葉を受け止め考えると、奇怪な理不尽さに納得できない気持ちが湧き上がった。
「…昨夜の件は本当に申し訳なく思っています」
イルカは頭を下げた。
「ですが、外でなさっていたのはそれ相応のリスクを承知ではないのですか?」
「…うわぁ、がっかり」
カカシは呆れて大袈裟に溜息をついた。
「…え?」
「そんなつまらない返事聞きたくないんだよねぇ…大体さぁ、何処でやろうがオレの勝手でしょーよ。真っ昼間から公衆の面前でヤってるなら兎も角?夜中で、しかも一目憚ってたつもりでしたが?」
「それは、」
「それなのに、アンタはコンビニの袋をガサガサガサガサさせながら、間近まで寄ってきて。忍あるまじき行為でしょーが」
驚いた。
カカシの初めて聞く砕けた喋り方に目を見張った。いかにも不快だと言わんばかりにイルカを見ている。
これがカカシの地なのか。
イルカの顔を見て気が付いたのかカカシが頭を掻いた。
「あぁ、すみません。つい言い方キツクなっちゃいました。…じゃあこうしましょう」
カカシはニコリとして鈴を腰から外し目の前に見せられる。
「これ、オレから取ってください。そしたらイルカ先生の勝ち。取れなかったらオレの勝ちで、…ちゃんと拾ってもらおうかな」
またふりだしに戻されてイルカは困った。拾うの意味が分からない。だけど、あの鈴をとれば解放されるのは分かった。
「イルカ先生は中忍なんだから、簡単だよね?」
馬鹿にされた言い方にイルカはムッとした。
「やります」
イルカは立ち上がった。


10分後、イルカは汗をかいていた。自宅内で自分が有利であると思っていた。なのに未だカカシに触れることすら出来ていない。
息が上がるイルカを見てカカシはうっすら笑った。
「あれ、イルカ先生もう疲れてるの?体力ないね」
カカシの言い方が恨めしいが、腰につけてある鈴がもっと恨めしい。触れることさえ出来ていない。受付業務やアカデミーで生徒や下忍相手しかしてないからだろうか。
カカシの言う通り体力のなさに痛感していた。チャクラを駆使しようが軽くかわされ、しかも動きすら読めない。浅はかな考えを自嘲せざるをえない。相手は上忍であの写輪眼のカカシなのだ。少しでも可能性があり、取れると思っていたのは大きな間違いだった。
しかもあれほどチリチリ鳴っていた鈴は、このゲームを始めてから1度も音が鳴らなかった。鳴らさずにイルカの手からかわしている。カカシからしたら朝飯前の芸当だろうが、イルカは舌を巻いていた。
「ギブします?」
「誰がっ、」
イルカはやけになっていた。背後に回り込もうとしたが、目の前で姿が消えてイルカ は足を滑らせた。
顔から窓にぶつかりそうになり、カカシに腕を掴まれた。
「だいじょーぶ?危ないなぁ、っと、」
その隙を狙ったが、かわされる。背後に気配を感じて振り返ると、カカシは困った顔をした。
「せんせー、ズルは駄目でしょ?」
「うるさいっ!」
「口悪いね~。……んー、難しすぎたかなぁ。たぶん一生取れないですよ、あんた」
イルカの顔がかあっと赤くなった。図星だった。自分でも分かっている事をサラリと言われているのが悔しくて仕方がない。言葉を荒げ肩で息をするイルカを、涼しい顔で眺めてカカシは考えに耽る顔をした。再びイルカは動いたが、軽くかわされてまた距離をとられる。悔しくて唇を噛んだ。
「これじゃあ勝負つかないねー。…じゃあ新しいルール、オレがイルカ先生の髪結い紐を取ったら、イルカ先生の負け。ね?いいでしょ?」
イルカは身体を震わせた。
それは負けろと言われているのと同じだった。カカシが少し本気を出せば訳なく取れるのは確実だ。
カカシに一歩近づかれイルカは後ずさった。まるで狼に睨まれた羊だ。逃げる事すら出来ない。背を向けたら、取られるだろう。
「そんな怖い顔しないでよ。なんかオレがイジメてるみたいじゃない」
眉尻を下げてカカシが言った。
(イジメてるんじゃないか!!)
イルカは心で叫んでいた。
カカシを睨んだまま後手に下がり、壁に背中がついた。目の前にカカシがいた。余裕そのもので片手はポケットにいれたままだ。手を伸ばせば届くところに鈴があるが、手を動かす事も出来ない。
情けない。どんなに努力して中忍になっても、たかが簡単なゲームでさえ、目の前にいるような鬼才を持つ者に敢え無く負ける事実。
「どうしました?鈴、取らないの?髪結い紐、取っちゃいますよ?」
態とらしく顔が近づき、覗き込まれる。カカシの目を睨んだが、それ以上見る事が出来なくて目を伏せた。ルールが変わった時点でイルカの勝機は削がれ、勝負ではなくなっていた。スルリと髪結い紐が解かれるのが分かった。束ねていた髪が肩にかかる。
イルカの完全な負けだった。
カカシの顔を見たくない。頑なに下を向いていたが、フッと目の前に影が出来たかと思うと銀色の髪が視界に入った。同時に口に伝わる感触が何か分からず顔を上げた。再び当てられているのがカカシの唇だと分かったが何をしているのか分からない。
カカシの離れた唇は音を立ててイルカの唇をを吸い、カカシは自分の額当てを取り、床に落とした。晒された左目にイルカは息を飲んだ。初めて見るカカシの素顔が目前にある。カカシはそんなイルカに気にすることなく、色違いの目がイルカを見ていた。
「イルカ先生目を瞑ってよ。ムードないなぁ」
(ムードって…何だ?)
再びカカシの顔が近づいた途端、口内に侵入したものに驚き、イルカは目を開いて思わず顔を背けた。が、顎を掴まれ固定されると、カカシの舌がイルカの口内を荒らしイルカの舌を捕まえた。
「っ、…ふっ、…やめっ、」
息が苦しい。必死に抵抗するが、すごい力で腕を押さえられて壁に身体を押し付けられる。絡み合い濡れた音と自分から漏れる声に、恥ずかしさで身体が熱くなる。
「っふ…んっ」
唾液が喉を通りイルカは目に涙を溜めた。甘く疼く腰が堪らなく力が抜けそうになる。唇が離れ腕が離されると、イルカはふにゃりと床に座り込んでいた。何故こんな事をするのか、突然のカカシの行為に動揺していた。自分の意外な反応にも驚いていた。
「…どう言うつもりですか」
顔を上げてカカシを睨むと、カカシは自分の唇をペロリと舐め上げイルカを見下ろしていた。
「そりゃ、決まってるでしょ?イルカ先生負けたんだもん。オレを拾って飼ってもらいます」
「拾って、…かう?」
また訳のわからない事を言う。イルカはカカシの言葉を繰り返したが、カカシは分かってないと、チッチッチと舌を鳴らして、指を立てて横に振った。
「買うじゃないよ。飼・う・の。要約しましょーか?オレの面倒を見ろって事だよ。分かった?」
しゃがみ込んでカカシは顔を突き合わせた。カカシの言わんとしてる事がようやくイルカは理解した。同時に怯えたような目でカカシを見た。
「何、怖い?でもイルカセンセー負けちゃったんだよ?男に二言はないですよね?」
カカシは呆然としているイルカの頭を撫でた。身体が跳ねて頭を軽く振るとカカシの口角が上がった。
顔が近づき、またキスされるのかと身構えたが、耳元に寄せられ囁かれた。
「オレのしゃぶって?…ね?」
優しい声なのに、言われている事があまりにも卑猥で、涙が目際に溜まった。拒否しては駄目だろうか。勝負に負けたとは言え酷い。カカシの目を見ると、優しく微笑んではいるが左目が赤く光り、許される事がないのだとイルカは思った。
肯定するようにイルカはカカシの前で跪くと、金属音を鳴らせてズボンの前をくつろげた。半ば硬くなっているカカシのモノを取り出し、その大きさに唾を飲む。自分に出来るか不安でカカシを見上げた。カカシはイルカを見つめたまま、人差し指の腹でイルカの唇を撫で、そのまま口に入れ、歯をなぞるように開けさせた。
「ほらイルカ先生、歯が当たらないように咥えて」
促されるままにカカシの股に顔を埋めた。早く終わらせるしかない。目を瞑り咥え込む。上下に動かすと次第に硬さと共に反り返るようにそそり立つ。苦しくて口を離すと、カカシが頭に手を乗せた。
「舐めて」
カカシの声に言われるがまま根元からゆっくり舐め上げ、先の柔らかい部分を唇で吸い上げる。カカシが息を吐き出したのが聞こえた。一生懸命舌を出し舐めて再び咥える。唇にヌメリが加わり滑るように何度もカカシ自身を扱いた。頭にかかる手が不意
に力が入る。聞こえると同時にカカシの手で頭を激しく揺さぶられた。そり立つ大きさで自然と涙が溢れた。歯を立てないように、必死にカカシが動かす腰に合わせる。
「っん、…ふっ、…」
淫らな音が部屋に響き頭が真っ白になりそうになる。
「…っ、イクよ、せんせっ、」
カカシの動きが止まり喉の奥に熱い液体が流れ込む。ゆっくり何度かに分けて吐き出されるモノをイルカは必死に飲み込むが、唾液と混ざり唇から溢れ顎から喉を伝う。鼻から息をするとカカシの出した液体の匂いが通り、口に広がる。唇も頬もベトベトしていたが、拭うことを忘れていた。伸びてきたカカシの手が自身を上下させ、出したばかりのソレは直ぐに硬さを取り戻し、イルカは呆然としながらカカシを見た。
「ヤラシイ顔だね、イルカ先生」
「え、…何で」
「だって、オレので口の周りテロテロに汚して、口はまだ欲しがってるじゃない」
「っ、そ、そんな事っ」
カカシが平気な顔で発した内容に、顔が赤くなり着ていたパジャマの袖で口を拭った。
「でも、ま、顎疲れちゃうから」
カカシはイルカの背に回ると後ろからイルカ自身を服の上から触った。
「ひっ、…カ、カシせんせ、やめっ」
驚いて声が上ずり身体を動かすが羽交い締めにされ動く事が出来ないし、何より腰が感じたことのない痺れるような感覚に襲われ抵抗もままならなかった。布の上で指で何度も擦られる度にイルカの気持ちとは裏腹に熱く熱を持ち形を変える。先走りでじんわりと濡れてく感触に堪らず唇を噛んだ。カカシが嬉しそうに囁く。
「ほら、上から触っただけですごい感じてる」
「…っ、ちがっ、」
恥ずかしさもイルカの身体を熱くさせた。不意に耳を噛まれて、身体がビクビクし声が漏れた。
「ぁっ!」
自分の声ではないような声に驚くが、そのまま首筋を舐められ背中がゾクゾクと甘い痺れが走る。
「っ、だっ、だめっ」
「…やーらしー、イルカ先生の声」
再び嬉しそうに呟き、背中に伝わるカカシ自身の硬さに、自分だってと、言いたくてもカカシが触るたびに身体が反応してしまい、それどころではなくなる。素早い動きでパジャマと下着を剥ぎ取られヒンヤリとした空気に肌が触れた。
「ほら見て、イルカ先生」
声にならないイルカはなす術もなく、カカシに凝視されている。イルカの中心はビクビクと震えながらた立ち、先はしっかりと濡れている。イルカは頭がぐちゃぐちゃになり泣きそうになる。
カカシの指がイルカのパジャマの上着のボタンに手がかかるが、ボタンを外す指をボンヤリと眺めた。
スルリと指がパジャマから入り、イルカの突起をすり潰すように動き、身体はビクリと跳ねた。
「あっ!…っ、な、に、」
下半身のイルカのモノがピクピクと動き、透明の液体が溢れ出す。
「わ、これだけでイキそうだね・・」
さらに強く擦られ、カカシが指を動かす度にパジャマからチラチラと硬く赤くなった突起が見え隠れする。下半身の熱も高みが近いのか、触られることなく濡らしながら震えていた。
「あっ、…やっ、カ、カカシせんせっ、」
「イク?…いいよ、ほら」
突起を擦りながら、もう片方の手がイルカ自身に触れ下から強く扱く。
「んっ、ぁっ…!」
それだけでイルカはカカシの手の中に熱をドクドクと吐き出した。
「…すごい、たくさん出たね。イルカ先生、溜まってたの?」
荒い息を吐きながら、カカシに身体を預けるように背をもたれ力が抜けた。真っ白になった頭を必死に元に戻そうと目をつむった。
もう嫌だ。早く服を着たい。
イルカの熱を受け止めたカカシの手はゆるゆると下に動き、奥の穴に触れる。イルカは眉頭を顰めて首を捻りカカシの顔を見ようとした。が、ぐぐぐっと指に力が入り、指が埋まりイルカは目を見開いた。
「っ!ぁっ、やめっ」
そのまま身体を捩るがカカシの中では動けない。腰を上げると指の侵入を更に許してしまう。濡れていた指は難なく奥まで突き立てられた。
「ふっ、…ぅ、…んっ、」
内部をうごめく指が内膜を擦りあげ、苦しいより感じた事のない刺激に支配されていた。
逃げ出したいのに身体が勝手にビクビク動き、不安定になる。
「こっち向いて力抜いて」
ぐるりとカカシと向き合うようにされ堪らずカカシにしがみつき肩で息をした。
「はっ、…ゆびっ、やっ…」
「…指、増やすよ?」
肯定も否定もない。二本に増えたかと思うと、生き物の様に蠢き、ゆっくりと何度も出し入れされ、その度に刺激され腰が自然と動く。
「はっ、ぁん…ぁっ」
水音が淫らにぐちゅぐちゅと大きくなり、イルカも声が抑えれない。
「もう、いいよね…」
カカシが耳元で熱っぽく囁き、そり立つカカシ自身を指が抜かれた後にあてがう。指よりも熱く太いソレをゆっくりと咥え込むのを全身で感じて、カカシに必死にしがみついた。
「ぁ!、っやぁ、…む、りですっ」
「そう?もう殆ど入ってるよ、ほら」
「ぁ、…んっ!」
下からグイと突き上げあれ、カカシを根元まで咥え込んだ。腿が痙攣しそうなほど震え、腹部の圧迫感を少しでも逃したくてゆっくりと呼吸を繰り返した。隣にはベットがあるのに、何故そこでやらないのだろう。カカシにしがみつきながら、目前にあるベットをボンヤリと眺めた。ゆっくりとだが、カカシに下から何度も突き上げられ、あられもない声を上げてしまう。
「はっ、ぁ…っ」
痛みが麻痺したのか、内部を擦られる度に言いようのない快感の波が押し寄せ、気がつけばイルカも自然と腰を振っていた。アンダーウェアを着たカカシの背中は汗をかいているのかじっとりと熱い。カカシの肌に触れたいと無意識に考えながらイルカは目を瞑った。このカカシの格好、ベストは脱いでいるが昨夜見たのと同じだ。あの女の人と同じく、自分がカカシに突き上げられ声を上げている。
(なんで…こんな事になったんだろう…)
カカシの手がイルカの突起に触れ、抓りあげられ腰が疼く。内部を締め付けてイルカは頭を振った。
「ぁぁ、んっ…」
「っ、…すご…」
締め付けられる快感に酔いしれるようにカカシは呟き、イルカの腰を両手で持つ。更に激しく打ち付けられイルカは全身を強張らせ、再び自身から白い液体を吐き出し、カカシの服を汚す。内部を何度もキュゥっと締め付けた。
「…せんせ、オレもイクよ…」
激しい抜き差しが始まる。イルカも合わせて腰を動かした。グッとイルカの最奥まで突き上げ、カカシも息を吐きながら内部に熱を吐き出した。出される度に動くカカシ自身に、イルカは小さく喘いで唇を噛み受け止めた。カカシはずるりと抜き、イルカはうつ伏せに畳に倒れこむ。お互いの息だけが部屋に響いていた。
グッタリとするイルカをベットに寝かせ、カカシは自分の上着を脱ぐ。ベットに伏せながら、ボンヤリとカカシを眺めていた。
何故服を脱ぐんだ。理由は考えなくても分かるが、信じたくない気持ちで一杯になる。逃げ出したいのに、身体は重く動かない。脱ぎ終わるとカカシはイルカに覆いかぶさる様に背中を抱きしめ、首元をキツく吸い赤い痕を残す。
「…っ、も、やだ…」
心とは裏腹にカカシが触るたびに身体がピクリと跳ねる。悔しくてシーツを握りしめた。なのに、直接触れるカカシの肌が心地いいなんて、思いたくない。その反応にカカシは笑いをこぼす。
イルカは絶望を抱いて眉をひそめ目を閉じた。




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